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答え合わせ?

「お兄様に質問があるんだけど」


「何か?」


「うちはなぜに抱きしめられてる?」


 後処理を全て母さん達が引き受けてくれたので、真中まなか先輩へ教室の前でうるさくしたことに対して謝罪をしてから体育館裏に戻って来た。


 ちなみに真中先輩は「むしろ人寄せになったから結果オーライでしょ」と、俺達が思い詰めないように優しい言葉をかけてくれた。


 そして色々と話すことがあるからと俺達は体育館裏にやって来て、流れるように俺がよりを俺の足の間に座らせながら抱きしめた。


「ああいうタイプの人と話すの疲れるんだもん。だから癒しを求めて?」


「だったらいつもみたく水萌みなも氏とかれんれんだっていいじゃんか」


「ついでに依が逃げないように?」


「……別に逃げないし」


 依が少し拗ねたように言う。


 俺もさすがに逃げるとは思ってない。


 ただの大義名分だ。


「なんとなく依な気分だっただけだよ。嫌なら離すけど」


「ふんだ、うちを疑った罰として抱きしめてなさい」


 依がそう言って俺が離そうとしてた腕を逆に抱きしめる。


「じゃあ私もお話疲れたから舞翔まいとくんにギューするー」


 なんとなく来るとは思ってたけど、水萌が俺に背後から抱きついてきた。


「なんかいつもの光景って感じだね」


「彼女の前で他の女を抱きしめて、彼女の妹に抱きしめられてるのがいつもの光景なのはおかしいと思うけどな」


「妹は恋火れんかちゃんだけどね」


「そうか、自分を姉だって言うなら妹の為に身を削れ」


「これは頑張ったご褒美だから姉とか妹とか関係ないのです」


 水萌がドヤ顔をそう言うと、レンに睨まれた。


 まるで「お前がいつも屁理屈ばかり言うからだ」とでも言いたそうな顔だ。


 俺のせいにされても困るのだけど。


「水萌、レンが嫉妬してるから離れて」


「やーだ」


「離してくれたら前に欲しがってた写真あげるから」


「ほんと!?」


 水萌がものすごいスピードで俺から離れる。


 写真と言うのは、俺の小さい頃の写真のことだ。


 前に水萌が欲しがったけど、何かに使えるかと思ってあげないでいた。


 それがまさかこんなところで役に立つとは思わなかった。


「あんなのの何がいいのか」


「舞翔くんだって私と恋火ちゃんの小さい頃の写真欲しがってるじゃん」


「それとこれとは話が別なんだよな」


「もう……。はい、私と舞翔くんの小さい頃の写真ならどっちが欲しいですか。私のひとー」


 水萌がそう言うと、俺と依だけが手を挙げた。


「もう答えは出てるけど、舞翔くんのが欲しいひとー」


 見事の俺以外の全員が手を挙げた。


「依が両方に手を挙げてるのはやると思ってたからいいとして、俺の小さい頃なんて見ても面白くないだろ」


「面白い面白くないじゃないくて、オタクが何に使うわけでもないのにフィギュアを買うのと同じなんだよ。気づいたらポチってたみたいな?」


「俺はお前らの推しなのかっての」


『うん』


 全員同時に頷かれた。


 もう考えるのをやめることにした。


「もういいですよ。それよりも約束の時間まで結構あるけど、これからどうする?」


「結局それって何時なの?」


「多分三時半」


「超ギリじゃん」


 蓮奈れなの言う通りで、文化祭は三時半で終わりになって片付けが始まる。


 だから文化祭が終わってから何かしらの勝負をしようということなんだと思う。


「ほんとに三時半なの?」


 依が不思議そうな顔を俺に向けてくる。


「というと?」


「うちが読み取った場所って、オカルト研究会がやってるお化け屋敷なんだよね」


 それは確かにおかしい。


 集合が三時半だとしたら、オカルト研究会だってお化け屋敷の片付けを始める時間だ。


「ただの待ち合わせ場所として使われた?」


「それならわかるけど、どうなんだろうね」


「それも気になるけどさ、二人はなんでその答えになったの?」


 紫音しおんが可愛らしく首を傾げながら聞いてくる。


「これだけ言ってるけど、まだ合ってるかはわからないからね? それでもいいなら説明しよう」


「『虹の先』ってのは『虹の先端』って考えるんだよ。そうなると『虹のふもと』になるじゃん? 虹のふもとには宝があるって言うでしょ? それと──」


「うちの説明を取るなー」


 依が回りくどい説明をしそうだったから俺が代わりに説明をしていたら依が暴れだした。


「ていうかお兄様はわからないって言ってたじゃん!」


「だってオカルト研究会の出し物って宝探し系のお化け屋敷なんだろ? 『宝探し』と『お化け屋敷』って聞けばさすがにわかる」


『虹のふもとには宝がある』を知っていれば、残ったワードもなんとなく察しがつく。


「『桜の足元』は『桜の木の下』って言い直すんだろ?」


 桜の木の下には死体が埋まっているというのは結構有名な話だ。


「うちがかっこよくキメるとこでしょーがー」


 依が駄々をこねるように俺に体重をかけてくる。


 なんか見てて微笑ましくなってきた。


「つまり、『宝』と『死体』に関するオカルト研究会の出し物になるってわけだな」


「……」


「依が拗ねた」


 反応が面白くて説明を全部奪ったら依が無言で俺の胸に頭を打ち付けてくる。


 これだけでやった価値がある。


「時間の方は依が説明していいから」


「そっちはわかんないよ!」


「そっちのが簡単だろ。『虹の先』は『二時の先』で三時。『桜の足元』は無理やりだけど、『桜』を数字に変えて三と九とゼロにして、時計に当てはめると足元は六になるから三時半かなって」


 答えがわからない以上は勝手にこうだと思うことしかできない。


 そもそもこれは答えが一つかと言われたらそうでもない。


 同じ考え方で『桜の足元』を『桜』という文字の足元として、『ら』を数字にした時の『ゼロ』が答えになる可能性だってある。


 それにそもそもが『ら』を『ゼロ』とするのも俺が勝手にそうしてるだけだし、こればっかりは真中先輩に聞かないとわからない。


「まあヒントを書かなかった先輩が悪いってことで」


「それは同意。まあそれはそうと、お兄様がせっかく話しやすい雰囲気にしてくれたからそろそろ話すね」


「何を?」


「そういうの大丈夫。うちも覚悟決めてるから」


 依が俺の手をギュッと握りながら言う。


 今から何か大切な話が始まるようだ。


 そしてそれを俺は知ってるみたいだけど、ほんとになんのことかわからない。


 だけど依が深呼吸をしているのを見ると、本当に覚悟を決めて重たい話を始めようとしてるのがわかる。


 さすがに「なんの話?」なんて軽く聞ける雰囲気ではないので、俺はレン達に視線で聞くことにしたが、全員顔を見合わせてわからない様子だ。


 唯一紫音だけが「なんとなくなら……」みたいな顔をしているが、自信は無さそうだ。


 こうなったらなんとなくで話を合わせるしかない。


 そうして依が話し始めるのを固唾を呑んで待つ。


「えっと、まずはごめんなさい。うちの母親が迷惑をかけて」


 依が話し始めて全員が思う「あ、その話ね」と。


 そしてみんな肩の力を抜いて軽い気持ちで話を聞くのだった。

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