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落ち着く場所

蓮奈れな、歩きづらいからそろそろ離れて」


「無理。私は舞翔まいと君から離れたら絶賛死ぬ呪いにかかってるから」


 なんて俺に得しかない呪いなのか。


 メイド喫茶を後にした俺達はとりあえず落ち着ける場所を探しながらぶらついている。


 メイド服姿の蓮奈は俺に隠れるようにぴったりくっついていてとても歩きづらい。


「文化祭中って空き教室とか無いのかね」


「無いんじゃないの? しおり見た感じでも、なんか色んな部活とかが使ってるみたいだし」


 レンが教室に目を向けながら言うが、その全てが何かしらに使われている。


 普段は空き教室として使われているところは、何かの部活が使っているか物置きにされているので勝手に入ることができない。


「ほんとに色んなのあるよな」


「うちの学校にこんなに部活があったことに驚き。しかもアニメの世界だけだと思ってた同好会まであるとか」


 しおりを見る限りでも、手芸部が自作の編み物などを販売していたり、写真部が写真の展示や撮影会をしてたりするらしい。


 そして同好会を見ると、オカルト研究会が宝探し系のお化け屋敷をやっていたり、コンピューター同好会が自作のゲームのお披露目会をやってたりするようだ。


「君達はもう少し学校に興味を持たない? そのしおりだってうちが持ってなかったら誰も持ってきてないってどゆことよ」


 よりが呆れた様子で言う。


 俺が見ている文化祭のしおりは依のもので、俺達はみんなしおりを持ってきていない。


 理由は単純で、蓮奈のクラスにしか行く予定がなかったから持ってくる必要がなかったからだ。


「正直俺はみんなが居ればなんでもいいかなってとこはある」


「でしょうね。特に行きたい場所なんて無いだろうし」


「うん。しおり見てもわざわざ行きたいところが無い」


 部活の多さと同好会があることには驚いたけど、だからってわざわざ行きたいと思える場所が無い。


「ぶっちゃけると人が居すぎて辛い」


「オレも」


「私もー」


「正直に言うと僕も」


「私は服のせいで余計に……」


「インドア派が……」


 依が頭を押さえながらため息をつく。


 こればっかりは仕方ない。


 似た者同士が集まっているのだから。


「逆に依は平気なの?」


「うちは陽の者も演じてるからね」


「よくやるよね。尊敬するよ」


「馬鹿にしてる?」


 依がジト目を向けてきた。


「してないよ。でもさ、めんどくさいとかならないの?」


「そりゃなるよ。でも、うちみたいなのはそうでもしないと生きていけないから」


「まあ依がそれでいいならいいけど。溜め込む前に俺達で発散しろよ?」


「そういうことをサラッと言えるお兄様が大好きだぞ」


 依が笑顔で俺の頬を人差し指でぐりぐりしてくる。


 痛いからやめて欲しい。


「可愛い依ちゃんに惚れたか?」


「なんで惚れなきゃいけない?」


「可愛いのは認めるんだな?」


「依は可愛いだろ」


「ほんとお兄様だよね。これ以上はれんれんからの視線が痛いから自重しまーす」


 依がそう言って後ろに下がる。


 その依にレンが静かに近寄っているのが見えたけど、そこはレンと依に任せることにした。


「ほんとにそろそろ落ち着ける場所見つけないとだな」


「私が着替えれば解決なのではないでしょうか?」


「それは無いかな」


 落ち着けない理由として挙げられる一番の理由は蓮奈が視線を集めることだ。


 ただでさえ可愛い蓮奈がメイド服を着ていて、しかもポニーテール。


 見ない方がおかしい。


 だから蓮奈が制服に着替えれば多少の視線は無くなるのだろうけど、それだと俺も見れなくなるから却下だ。


「それに蓮奈が制服になったところで可愛いのに変わりないんだから意味ないだろ」


「ふんだ、私だって可愛い慣れしたんだからね!」


「そう言いながら嬉しそうにしてるお姉ちゃんなのでした」


「お姉ちゃんをいじめる悪いお口はこれかー」


 蓮奈がやっと俺の背中から離れて紫音しおんを襲いに(紫音の頬をうにうにしている)行った。


「舞翔くん舞翔くん」


 水萌みなもが俺の制服の袖を引っ張って俺を呼ぶ。


「なに?」


「多分このまま校舎の中で落ち着ける場所探しても無いよね?」


「そうだろうな」


「じゃあいつものところでいいんじゃない? さすがにあそこまで誰かが居るとは思わないし」


 確かに俺達の溜まり場である体育館裏なら文化祭の出し物はないとは思う。


 だけど体育館はライブなんかをやっているみたいだから騒がしくはあるたろうけど。


「いや、逆に少し騒がしいからこそ誰も居ないのか?」


「誰か居るかもなの?」


「普通は文化祭を回るんだろうけど、周りが騒がしいからこそ、静かなところで二人っきりになるってのも文化祭デートの定番じゃない?」


 実際はどうなのか知らないけど、そういうのをアニメか何かで見たような気がする。


 そういうのでよく使われるのが体育館裏や屋上、屋上に入れなかったらその手前の踊り場だ。


「舞翔くん的には恋火れんかちゃんと二人っきりになりたかったりするの?」


「騒がしいところだと二人っきりになるのもなって感じ? 静かなところなら二人でボーッとしてたい」


 別にレンと一緒ならどこでも楽しいんだろうけど、お互い人混みが嫌いなので人が多くて騒がしいところに行ってもいい思い出にならなそうだ。


 それなら人が居ない静かなところで雲でも眺めながら話していたい。


 だけどそれは……


「なんかおじいちゃんとおばあちゃんみたい」


「それは俺も思った。まあ静かなのもいいんだけど、水萌達が来て騒がしくなるのは嫌いじゃない」


「実際舞翔くんって恋火ちゃんと二人っきりだとどんなことしてるの?」


 水萌が気にしてそうしてるのかはわからないけど、週に一回水萌の部屋に居る時に一時間ぐらいの短い時間だけど、二人だけの時間がある。


「別に何かしてるわけでもないよ。俺がレンをからかったり、レンが俺をからかったり? まあ最終的には楽しかったことの報告会になってるかな」


「なるほど。つまりイチャイチャしてると」


 水萌が顎に手を当てながら「ふむふむ」とそれっぽいことをしている。


 多分形だけで何かがわかってるわけではないと思う。


「逆に水萌は何してんの?」


「私? 私はお昼寝」


「だから帰って来る時眠そうなのね。水萌の部屋なんだからベッドで寝ればいいのに」


「それだと恋火ちゃんが素直にならないから。お姉ちゃんなりの優しさなのですよ」


 水萌がドヤ顔で言う。


 そういえば水萌とレンのどちらが姉が論争は解決したのだろうか。


 まあこういうのはわからない方が後々楽だから俺は知らないままでいくことにする。


「まあ一時間だけってところに水萌らしさは感じるけど。それよりも着いた」


「結局足が吸い寄せられるんだよ。それじゃあ舞翔くんが私のことをさりげなく馬鹿にしたことと、ラブレターについてお話しよ」


 水萌が笑顔で俺の腕に抱きついてきた。


 傍から見たら可愛い女の子に抱きつかれてるというご褒美なんだけど、水萌からの圧がやばい。


 まあ元から逃げるつもりはなかったので別にいいけど。


 俺はとりあえず誤魔化す為に水萌の頭を撫でることから始めることにした。

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