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照れさせよう大会3

「さてと、彼氏の浮気現場を散々見せられた大本命(笑)の番だな」


「自虐がすごい」


 蓮奈れな水萌みなもに精神を削られた俺はレンに抱きついて精神統一をしていた。


 そしてなんとか回復した俺は部屋の隅で体育座りをしてボーッとみんなを眺めている。


「なんかサキが死んでるんだけど」


「あれじゃない? 嬉しさが限界点を突破して逆にゼロに戻ったみたいな」


「いや、削りに削られて何も考えたくなくなってるだろ」


 レンと蓮奈が何か話してるけど、俺の耳には入ってこない。


 それよりもいつの間にか隣に座っている水萌が怖い。


舞翔まいとくんは嫌だった?」


 俺は首を振って答える。


 蓮奈と水萌が俺にしたのはただの耳打ちだ。


 俺が勝手に恥ずかしくなって、どうしたらいいのかわからなくなってるだけだ。


「じゃあ第二回も楽しみにしててね」


「蓮奈さん、あそこに悪魔がいる」


「私もさすがにあれは言えないよ。あの桐崎きりさき君が戸惑ってるよ」


 本当に嫌だったわけじゃない。


 想像以上に回復に時間がかかるだけだ。


「オレが抱きしめるだけじゃ一人になれるぐらいにしか回復しなかったからな」


「こういう時はしおくん?」


「どうかな。紫音しおんってSっ気あるから楽しみそう」


「確かにしおくんって桐崎君相手だとSだよね。私にもしてくれればいいのに」


 蓮奈の性癖はともかくとして、紫音は今両親に今日とこれからの話をしてるのだから邪魔はしたくない。


 それにこれは俺の問題だ。


「……水萌、手、いい?」


「喜んで!」


 とりあえずぬくもりを感じてないと俺は駄目だと最近知ったので、水萌の手を求めると水萌が俺の手を優しく両手で包み込んでくれた。


 やっぱりこっちの方が落ち着く。


「水萌ちゃん喜んでるけど、桐崎君をああした元凶って水萌ちゃんだよね?」


「言ってやらないであげて、蓮奈さんも人のこと言えないから」


「何も言い返せない。ちなみに彼女としてあれはいいの?」


「別にいい。オレはもう無駄な嫉妬はしないと決めた。それに落ち込むサキを見てる方が優先されるから」


「うわ、この子もこの子でSだ」


 水萌のおかげでだんだん回復してきた。


 蓮奈とレンの会話は聞こえてきたけど内容まではよくわからなかった。


 多分大事なことは話してないから別にいいけど。


「そういえば私と水萌ちゃんは制限時間はオーバーしたけど桐崎君を照れさせることは成功したじゃん?」


「うん」


恋火れんかちゃんは彼女として成功できなかったらどうする?」


「サキを照れさせるのはできる。だけどそれは最終手段だからできれば使いたくないんだよな」


「もしかして『私の体を好きにして……』みたいな?」


「半分合ってるかな」


「やば、ベッドが真っ赤にならないようにティッシュ用意しとかないと」


 蓮奈はそう言って枕元に置いてあったティッシュを取りに行く。


 俺はこれからレンに何をされるのか。


「水萌、ありがと」


「もういいの?」


「うん。後はレンから貰う」


 俺はそう言って水萌の手を離しレンに駆け寄る。


 そして最後のチャージを済ませる。


「既に尊い……」


「サキってさ、風邪引いたり限界超えると幼児退行するんだよな。風邪の時ほどじゃないけど、甘えたになって可愛い」


 レンが俺の頭を優しく撫でてくれた。


 おかげですぐに元気になってきた。


「幼児退行とかギャップ萌えすぎんか? それだけで白米いける」


「蓮奈はちゃんとご飯食べて」


「小さい桐崎君に言われてると思うと尊すぎて尊死とうとしする……」


 蓮奈が意味のわからないことを言い出してベッドに倒れる。


「とりあえず消化試合始めるか」


「レンも俺のこといじめるの?」


「オレは二人と違ってサキをいじめたりしないよ」


「ほんと?」


「もちろん。ただ、浮気には制裁が必要だよな?」


 レンが笑顔でそう言うが、目が笑っていない。


 気がつけば俺はレンに押し倒されていた。


「レン、怖い……」


「大丈夫、何も怖いことなんてないよ。すぐに終わるから」


 レンがそう言って俺の頬を優しく撫でる。


「これは倒れてる場合じゃないな。水萌ちゃんには刺激が強いからお姉さんのお膝来なさい」


「え、普通に嫌だよ」


「くっ、一人で見るには刺激が強いから仲間を求めたのに……」


「外野うるさい」


 レンが蓮奈と水萌に意識を向けた瞬間に抜け出そうとしたけどレンがそれを許してくれなかった。


「逃がさないから」


「な、何する気……?」


「罰を与えるだけだよ。オレのことが好きなサキにとってはご褒美かもしれないけど」


「それってご褒美って思わなければレンを好きじゃないってことになるの?」


「そういう発想ができるぐらいには余裕あるんだな。もう少し余裕無くさせないと」


 レンはそう言うと俺の苦手な顔をする。


 簡単に言うと悪い顔をする。


「さっき見えにくかったから確信はないけどさ、蓮奈さんに耳たぶ食べられてたよな?」


「……」


「無言は肯定ってことだな。なんかさ、オレ以外の女にサキを食べられるのって癪なんだよな。だからって上書きしたらオレと蓮奈さんが関節キスすることになるじゃん? オレはサキと違ってサキ以外に間接でもキスはしたくないんだよ。だから妥協点として反対側貰う」


 レンはそう言って蓮奈が甘噛みした方とは逆の耳たぶをはむはむする。


 なんか噛まれるよりも……


「ごちそうさま」


 レンはそう言って舌なめずりをする。


 なんか、あれだ……


「……」


「耳真っ赤。さて次は間接キスの罰を与えないとな」


 既に俺は顔に出るぐらい照れているのだから終わりでいいのではないだろうか。


 そう思ってジャッジの二人に目を向けると、蓮奈は大量のティッシュで鼻を押さえながら俺達をガン見していて、水萌は両手で顔を隠して指の隙間から俺達を見ている。


 つまり止める気はないようだ。


「罰追加だな。オレだけに集中しなかった罰も与えないと」


「れ、レン……」


「なに?」


「優しくして……」


「オレの理性を壊しにきてんだろ」


 レンはそう言って俺の顔の横に両手をつく。


「最終手段は使いたくなかったんだけど、サキが悪いんだからな」


「な、何するの……?」


「されてからのお楽しみ」


 レンはそう言って俺の顔に顔を近づけてくる。


 そしてレンが目を閉じる。


 俺も耐えられなくなったので目をギュッと瞑る。


 そうして永遠にも感じる時間の果て、唇に何かが触れた。


 俺の唇の()()()()に。


 何かと思い目を開けると、レンの顔が文字通り目と鼻の先にあり、レンと俺の顔の間にレンの人差し指が入っている。


「期待した?」


「レン嫌い! 好きだけど!」


「それ前に水萌が言ってたやつだろ」


 確かに聞き覚えがある。


 だけどそう思ったのだから仕方ない。


 このどこにもぶつけられない気持ちはどうしたらいいのか。


「仕方ないからご褒美」


「え?」


 レンはそう言って人差し指の反対側、レンの唇がついた方を俺の唇につける。


「間接キスの罰」


「……」


「ちゃんとサキの方は貰うから安心しろって」


 レンはそう言って人差し指にキスをする。


 なんかもう、顔を見られたくない。


「誰がどう見てもオレの勝ちでいいよな?」


「うん、いいよ。いいんだけどさ……」


「うん、恋火ちゃんの勝ちなんだけどね……」


 ティッシュで顔の半分が埋まっている蓮奈と、ほっぺたを赤くして目をキョロキョロさせている水萌が煮え切らない言い方をする。


「何か言いたいことあるの?」


「いやね、二人は恋人だからいいんだけどさ、いいんだけどさ……」


「恋火ちゃんがえっちな子すぎる」


「な……」


 蓮奈が濁していたことを水萌がストレートを伝える。


 ずっと思っていたことがある。


 水萌は三大欲求のうち『睡眠欲』と『食欲』が人より強い。


 だけど三大欲求にはもう一つあって、水萌はそれも強い可能性があると懸念していたけど、水萌にそういう欲求を感じなかった。


 だけど今日やっとわかった。


 どうやら三大欲求は双子でちゃんと別れたようだ。


「恋火ちゃんは性欲モンスター」


「ち、違うっての! オレはただサキに罰を……」


「楽しかったでしょ?」


「確か初めてのキスもゲームセンターなんだよね? 見られるのが好きなの?」


「ひと思いに殺してくれ……」


 レンがそう言って部屋の隅に向かって行く。


 それから紫音が遊びに来るまで微妙な時間が過ぎていったのだった。

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