勇者パーティー【二人目】(前編)
次回は4月14日になります
ドアを開ける。木で出来た小さい扉を。
ギイと音を立てて俺たちは中に入る。第一印象は酒臭い。
まぁイスカのパーティーにも「酒豪」がいたから我慢はできるけどね。てか本当にこんな所で見つかるのか?
「コロン」
「ぽよ、何?」
「本当に仲間なんて見つかるのか? 酒カスとか来ても困るんだけど」
「ぽよ、そういう事。任せて、別にここにいる人間から探す訳じゃない。目的は店主」
コロンが指を指す。そこには誰とも喋らない寡黙な店主がいた。どういう事だ? だが俺の疑問は放っておいてコロンは続ける。
「ぽよ、ご主人様。さっき店主から渡されたお金みせて」
「ん? あぁはい」
「ぽよ。うん。金貨一枚貰うね」
コロンは一枚の金貨を握り締めて、酒場の中心に経つ店主の所に歩く。その時席に座っている酔っ払いを見るが、誰もこちらを見ていたい。酒に夢中のようだ。頬が赤くなっている。
「いらっしゃい…ガキか。ジュースはねぇぞ?」
「ぽよ、いらない。でもこれ――」
店主との会話で、机の上にコロンは二本の指で金貨を一枚滑らせる。店主はコロンを見て、彼女は頷いた。
「どうやら、この国での生き方をわかっているらしい。この金なら【三つ】だな」
「ぽよ…少なくない?」
「無茶言うな。こちらも不景気でな」
なんのこっちゃ分からない会話を聞いていると、コロンがこちらに近づいてくる。店主はフッと鼻で笑った。
「ぽよ、ご主人様。店主はずっとこの酒場にいる。お金は渡したから今から三つなんでも質問していい」
「なるほど、その【三つ】なのか――もしかして俺に質問しろと?」
「ぽよ、あとは好きにして」
…えぇ? 質問か。正直三つじゃ足りない。だが三つと言われたのなら仕方ない。それで行くしかない。
一・最近の情勢
二・最近強いやつを見たか?
三・なんか適当に
――これで行こう。さて簡単に行くもんだろうか?
「こんにちは」
「おう」
店主に向かって歩く。よく見ると歴戦の猛者だなこの人。まず酒場に不似合いな筋肉、そして傷、目の眼帯。
【いいか? アロン。『会話』とは、血の出ない戦争だ。お互いがお互いから情報を得ようとする。気を抜くな、お前が考えている策など、通用しないぞ】
…分かってるよ。イスカ、それでも俺は自分の自身の力で戦いたい。じゃないと守られてるのと一緒じゃないか。
「――兄ちゃん。最初の交渉をあんな小さな子に任せるのは、ちょっとどうかと思うぞ?」
「でしょうね。ただ約束を守ってくれるんですよね?」
「あぁそうだとも、三つだ。慎重に選べよ」
――こいつ、、あぁそう。道理で鼻が痛くなると思った。アルコールかと思ったんだけどな。
まぁいい、 それは後でやるとしてとりあえず話を聞こう。
「この国の情勢は?」
「――まぁ無難だな。まず聞くが、魔王直属の4柱のうちのひとつが【討伐された】ことは知っているか?」
そりゃあ勿論。だって殺したの――
「イスカが殺したやつですよね?」
「そうだ。そしてこの国はその驚異に晒されていたが、討伐されて比較的平和になったって感じかな」
「…最近強いやつを見ました?」
「……」
もういいや、こいつ黙ったし。それが答えだろ。探しかないか、それにしても平和ねぇ…
「――もういいです」
「ん? まだ質問はもう一個残っているぞ?」
「聞きたいことは全て聞きました。ありがとうございました」
そして俺達は酒場から出た。
後ろの店主は最後まで俺たちを見送って――
「ぽよ、ご主人様。聞きたいことは聞けた?」
「まぁぼちぼちだな。どうやら自分で探すしかないらしい。店主の反応から強い奴がいることは分かっているからな」
「ぽよ、店主は何か悪いことをやっているの?」
「ん? 違うぞ。あいつ【魔族】だぞ?」
「ぽよ、、え?」
まじか、この国の人間は魔族と人間の区別もつかんのか。魔力を見れば一瞬でわかるだろうに。
だがまぁ、俺も見分けがつかない時に、お姉さんに変身した魔物に近づいて殺されかけたっけな。これは経験の差ってやつなのかね。
「ぽよ、そういえばご主人様、ひとつ聞きたい」
「何?」
「店主との会話少し聞こえた。魔王の4柱の一人ってどんなやつだったの?」
「あぁ【プリゴニウム】ね。魔王四柱の『北』を冠する魔族。まぁそうは言ってもよく分からなかったんだよな」
――
「ははは! 出たな勇者イスカよ! この俺プルゴニウムがお前の首を切るものだ! 大人しく!」
「――あぁ悪い。二日酔いなんだ。大人しく自己紹介を頼む。うぇ…オロロロ!」
「ははは! まさか世界最強の勇者がこのザマとは! やはり魔王様の側近はこの俺」
「――うるせぇ」
「は?」
「――うるせぇって言ってんだろうが!!!」
「ギャァァァァ!!!」
って感じで真っ二つになりましたとさ。正直めちゃくちゃ呆気なかった。
――これをコロンに伝えると…
「ぽよ、ご主人様、イスカって脳筋?」
「さぁね。ただ正真正銘あの人は勇者だよ。誰かが魔王幹部を見つけても、目の前に泣いている女の子がいればそちらを助けに行ってしまう、お人好しなんだよ」
さてと、そろそろ宿を借りよう。今日は長くなる。…イスカ、本当にお金…あるんだよね?
――長い夜が訪れる。月が隠れ魔族の時間が訪れる。だがそれもすぐに終わるだろう。
――
「おい、あの勇者共の宿はわかったか?」
「えぇ、ですが本当に襲撃を?」
夜の道を歩く酒場の店主とコウモリがいる。
見た限り、店主の方が主人だが敬語を使うのは店主の方だった。
「貴方様の手を煩わせる程なのですか? あの勇者アロンは、私は今日会話をしましたが、特段危険視するべきでは無いと判断しましたが」
「馬鹿め、素人が。貴様が魔族の事などとっくにバレておるわ。やつは危険だ。戦場で見た事は無いがな」
「分かりました。襲撃の準備をいたします。今しばらくお待ち下さい」
「うむ」
コウモリが消える。店主はほっと息を撫でて背中から翼をはやす。頭から角が生え戦闘準備が完了する。
「さてと、行く」
「――あぁ? てめぇやっぱり魔族だったか?」
店主は振り向く。男がいる。そして目を見開いた。その男を知っていたからだ。
「貴様は! あの時、我が軍政を殺した――」
「あぁー、うっさい」
いつの間にか男が後ろにいる。胸元を見ると傷がある。そこから大量に血が出てそのまま倒れる。そして体が灰になり消えてしまう。
「斬! ってか? 魔族ハンターも楽じゃねぇ」
シリト――アグナルム。魔族ハンター。
俺が求めた勇者パーティー二人目に相応しい男がそこにいた。
読んでいただき本当にありがとうございます!
星を増やしてくれるとありがたいです。
面白かったと思ったらブックマーク!
感想やレビューもお待ちしております!
星ももちろん大歓迎!
具体的には広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にね。
そうすると勇者のやる気が上がります。