井伊直親
1553年 4月 信濃国 花岡城 武田信之
領内の現状がまとまった。来月には田植えが始まるとなって皆忙しく動いていた。田植えが終わってからじゃなければ改革を実行できないだったら下準備を行おう。思い立ったら即実行、平三郎を遠江に新たに父から付けられた工藤兄弟のうち弟の祐長を連れ松源寺に向かうことになった。
1553年5月 信濃国 伊那郡 松源寺 井伊直親
桜ももう散り領民みな田植えを行っていた。そんなことを考えていると和尚に呼ばれた。
部屋に入ると子供が一人と中年とまでは行かないが威厳がある武将が和尚と話していた。
「和尚様、こちらの方々は?」単純な疑問だった。
「こちらの方々は、武田大膳太夫様が三男三郎様と工藤源左衛門大尉殿だ。」
未だに疑問を持ちながらも和尚に続きを促した。
「実はな、お主の事を召し抱えたいとの事なのだが。どうだ、興味はあるか?」
非常に悩む、私はこれでも遠江の国人領主の跡継ぎなのだが父が太守様(今川義元)に粛清されてから和尚様の伝手を頼り此処松源寺に逃げて来ていた。
「お申し出ありがたき事なれど私には井伊家の跡継ぎとして戻らねばならぬのです。」
ふと懐から2つ書状を取り出し差し出してきていた。「これらは?」
「井伊家当主井伊信濃守殿と貴殿の許嫁様からにございます。」
書状を開き内容を読むにつれ書状の字が読めなくなってしまった。
読み終わるのに時間がかかってしまったが内容は分かった。
書状の内容
井伊信濃守から
・次郎法師を還俗させる。
・直親自身は太守様から許されそうに無いということ。
・お主を慕って居る女子がそちらに向かって居る事。
・松下殿の家臣であった藤吉郎なる者もともに向かわせている。
次郎法師から
・あなたの事を思っていましたが、もうその思いは心の奥にしまいまする。あなた様は、武田の軍門で名を轟かせる事を井伊谷から願っております。
私の心は、もう決まった。
「井伊直満が嫡男、井伊亀之丞直親これより身命を賭してお仕え申し上げまする。」
満足そうに頷いた新たな主人をしっかりと支えねばな。
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