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村上滅亡

1553年 4月 信濃国 西教寺 武田信之


 私は今、長尾との交渉のため葛尾城下の西教寺に来ていた。元々は、駒井殿と甘利殿で交渉に当たるはずが父上の一声で私も参加する事になった。

「策を講じたならば、それを実践してみよ。失敗は、許されんぞ」

 はぁ怖い怖いでも失敗したら泥沼の戦が始まってしまう。

 そんな事を考えていたら長尾方の武将がやってきた。流石、後年戦国最強に名乗りを上げる長尾家臣団、場慣れをしている老獪な武将と体を相当鍛えているのであろう若武者が入って来た。村上家は、入ることを懇願していたが許されなかったので隣室で結果を待っていた。。(まるでミュンヘン会議のチェコのようだな。)


 長尾方 宇佐美駿河守定満 斎藤下野守朝信


 武田方 駒井高白斎政武 甘利左衛門尉昌忠 西保三郎信之

 

 直ぐに話し合いは、始まった。私の出る幕はないのだが非常に重苦しい空気が部屋を流れていた。前までだったら直ぐにでも後にしたかったが父上の威圧を受けてから耐性がついたようで冷や汗一つかかなかった。その姿をみた長尾の武将は驚いたようで「ところで高白斎殿あの若武者は、どなたのご子息でございますか?」 急にこっちに話題を振って来たので少し驚いたが高白斎殿の方を向くと小さく頷いていた。

「武田大膳太夫が三男西保三郎信之でございます」

 意外な人物だったのだろう。敵地に当主の息子が武装もせずのこのことやってきているのだ。狼狽えるのは当然であった。

「駿河守殿、此度の停戦を考えたのは三郎殿なのですよ。」

 下野守は、冗談を言うなと馬鹿にした様子だったが駿河守は興味を抱いていた。

「三郎殿、一つこの爺にご教授していただきたいのです。なぜ村上をお残しになろうとしたのです?」

「簡単です、強き者同士が争えば勝ったとしてもこちらは少なくない損害を受けることになります。戦の基本として弱いところを突くのが常道でありましょう。なのに態々強きところを攻めるようなことは、私にはできませんゆえ。」

 長尾方の二人は、回答を聞き悩み込んでしまった。その時、裏の襖が開き平三郎が入ってきて耳打ちをしてきた。『三郎様、村上に怪しい動きあり』俺は驚いて少しのけぞってしまった。

直ぐに隣室に行くと誰もいなかった。

「図られた。駿河守殿何かご存じで?」

 長尾方も初耳だったようで懸命に否定すると共に次の指示を出した。

 敵対してはいないが何かあった時のため、お互い兵を率いてきた。しかし、それも少数時間稼ぎにもならなかったが、それぞれ本隊がいた。和睦が破談となったら各々村上を切り取るつもりだった。

武田方は、武田晴信以下5000名 上田原に布陣

長尾方は、長尾景虎以下4500名 八幡原に布陣

 報告を受けた武田方は、馬場民部を派遣し長尾方は、鬼小島こと小島弥太郎を派遣した。最初は、勢いに乗っていた村上軍も両隊の必死の戦闘で城内へ引き上げていったが帰る城はもうなかった。

後に降伏してきた村上旧臣が言うには、武田と長尾を争わして後に引けないようにする魂胆だったそうだ。意外と安直であった。


 葛尾城内 村上左近衛少将義清

 

「はっは、あれを見よ武田と長尾が争うぞ。一度刃が交われば武田に勝機は、万に一つもない。勝った勝った。今夜は宴かのぉ。なぁ政国」

 今までだったら直ぐに返答が帰ってきたであろうが、この時ばかりは帰って来たのは

「義清殿、あなたは何処まで行っても愚直ですなぁ。そうでしょう屋代殿」

 振り返ると憎き仇が立っていた。

「己ぇ真田、なぜお主が此処におる。儂自らお主の首を落としてやろう。そこに直れ。」

しかし刀を抜こうとした刹那屋根裏から降りてきた草の者どもに縛られてしまった。


その後憎き晴信と景虎殿の前に連れてかれた。

「義清お主には、失望した。お前のために危うく大切な領民を殺す所だった。それに比べ大膳太夫殿は、噂と違い眉目秀麗であり意気投合してしまった。百聞は一見に如かずとはよくいいますのぉ。是非我が”跡取り”にお主の娘を嫁がせていただきたい。 」


その後、一族諸共千曲川の河原で処断された。


 村上左近衛少将義清 享年52歳

 子息たちも後に処断された。ここに大名村上氏及び信濃村上氏は族滅と相成ったのであった。


 お読みいただきありがとうございました!

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