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カオティックロード~混沌とした道を往くものたちの物語~  作者: 影野龍太郎


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第49話 連鎖する危機

 ハッ……!


 繰り出された拳をリューヤは軽く息を吐き身をよじって躱す。


 雷神の名を持つ男は僅かに驚いた表情を浮かべるものの、すぐに回し蹴りへと移行する。


 リューヤは左の肘でそれをガードすると右拳を雷神に叩き込む! ドゴォ!! っとまるで地震のように地面が揺れ、土埃が舞う。


 衝撃に吹き飛ばされるトールだったが、空中で身を翻し華麗に着地する。そして不敵な笑みを浮かべて見せた。


「ほう、やるじゃねぇか、挨拶代わりの一撃とはいえこうもあっさりと防がれるとは思わなかったぜ」


 トールがそんな風に言うとリューヤもまた不敵な笑みを浮かべる。


「お前こそ、やるな」


 それだけ言うと今度はリューヤから仕掛ける。無駄のない動きで繰り出された正拳突きをトールは紙一重で躱しそのまま裏拳を繰り出す、しかしリューヤはそれすら見切っていたかのようにバックステップで回避する。


 気にせず間合いを詰めさらなる攻撃を繰り出してくるトールだったがリューヤも負けじとそれを捌く。


(速い……! それに重さもある。まさに雷のごとし、雷神の名前は伊達じゃないってことか!)


 リューヤは内心で相手の強さに敬意を評しつつ、同時に油断せず冷静に相手の隙を窺う。


「どうしたどうした、オレはまだ全然本気じゃないぜ?」


 拳を繰り出しながら挑発気味に言ってくるトール。しかし、その言葉が強がりやハッタリの類でないことはリューヤにも分かっていた。


 ガンッ! ひと際強い一撃を受け、リューヤのガードが崩れる! それを好機とみてさらに一歩踏み込んで来るトール。


 ドゴッ!


「うぐっ……」


 うめき声を上げながら腹を抑え後ろに下がったのは、しかしトールの方であった。


「てめぇ、わざと……」


「単純だが効果はあったろう?」


 言って突き出した足を下ろすリューヤ。


「はっは、面白れぇ。てめぇ相手に手を抜いて戦おうなんて考えたオレがバカだったぜ、こっからは本気でいく!」


 そう叫ぶトールに身構えるリューヤだったが、何故かトールはそのまま後ろに飛ぶと大きく間合いをとってきた。


 その行動にリューヤは眉を顰める、だが次の瞬間彼の表情が変わった。


 ズシンッ! 地震かと思わせるような振動がリューヤの足元を襲い、同時に周囲にバチバチと雷光が走る。


「受けてみるか? それとも避けるか? どっちも無理だ! 雷光の一撃は全てを穿つ!!」


 言うが早いがトールが一気に距離を詰める!


(確かに凄まじい一撃、しかし対応は可能!)


 咄嗟に判断しリューヤが手を動かした瞬間。


『助けてぇぇぇ!!』


 彼の頭の中にピリアの声が響いた。


 それはおそらくピリアが無意識に使ったテレパシー能力。


 おそらくよほどの窮地に立たされているのだろう、別に誰に対して発したわけでもないだろうその必死の叫び声は、ピリアとの繋がりを持つリューヤたちの元へと確かに届く。


(ピリア……!)


 その声なき声に気を取られてしまった一瞬の隙、それを見逃してくれるほどトールは甘くはなかった。


 ガアアアアアン!


 次の瞬間、周囲に雷光が奔り激しい衝撃と音が走っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「サンダーダンス!」


 シルヴィが叫びかざした手から放たれた雷がまるで踊るかのように周囲の空間に振り撒かれた。


 次の瞬間、彼女を襲おうとしていたバイオモンスターたちはその体ごと感電し爆散する。


「よしっ!」


 声を上げシルヴィはグッと拳を握る。


「上手くいったわ。特訓した甲斐があったってもんね」


 バイオモンスターはシルヴィの得意とする炎系や氷結系の術に対してはかなりの耐性を持っていた、このままでは足手まといになりかねない、そこで考えたのが新たな術のジャンルの開拓である。


 シルヴィは昔から雷術とはいまいち相性が良くなかったのだが、今回の一件で彼女は弱点克服のために努力することを決めた。


 そして数日間の特訓の結果、実戦投入に耐えうるレベルまで技量を向上させることに成功したのである。


「電気系には弱いかもって読みも当たってたし。あたしってやっぱ天才なんじゃないかしら? なんてね、ふふん♪」


 しかし、喜んだのもつかの間、再び部屋の扉が開くとそこからまた無数のバイオモンスターが姿を現す。


「ええいっ、キリがない!」


 舌打ちしながら毒づくシルヴィだったが泣き言は言っていられないとばかりに腕を振り上げる。


「エアバスター!」


 発生したのは猛烈な突風である。これでバイオモンスターたちを吹き飛ばし一つにまとめてしまったところで、一網打尽に出来るような大技を叩きこもうという作戦だ。


 シルヴィの考えた通りバイオモンスターたちは一塊となり宙に浮くと壁に叩きつけられた。怪物たちはすぐに立ち上がろうとするも時すでに遅しという奴である。


「今度のはさっきのより範囲を絞る分威力も強烈よ? サンダー――」


 得意げに言って術を放つべく意識を集中したまさにその瞬間、


『助けてぇぇぇ!!』


 シルヴィの脳内に声が響いた。


「え? ピリア……!?」


 確かに聞き覚えのある仲間の悲鳴にも似たSOSの言葉。しかもリューヤやピリアたちと知り合ってからまだ日が浅いシルヴィにとってはテレパシーの受信というのはこれが初体験だったのである。必然的に意識はそちらに向き、放とうとしていた術の集中は途切れ魔力が霧散し――


 ドシュッ!


 シルヴィが自身の失態に気が付いたのは、バイオモンスターの鋭い爪が彼女の腹部を刺し貫いたその瞬間であった。

お読みいただきありがとうございました。

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