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第七話 アルフレッドの医者探し

今回は弟のために動きます

初めての街にも行きます

頑張っちゃいます

みっちりと叱られた後はようやく弟の遊び時間だ。弟は気をよくしたのか、俺の所にすぐ来てくれた。なんて憂い奴なのだろう。だが、そんなことに時間を費やしている暇はない。暇はないのだ。すぐにでもアルフレッドの吃音を治してやらねば。そう思っていた時期が俺にもありました。弟と兄弟として遊ぶのが楽し過ぎていつの間にか夜になっていました。すみません。これが一日だけだと思うじゃん?残念、一月まるまるただ遊んで過ごしてしまいました。だって弟、超いいんだもん。その日も俺は昼前まで顔面を兄弟愛に崩壊させて過ごしきるところで、ようやく理性を取り戻せた。危ない危ない、もう少しで浦島太郎になるところだった。俺はアルフレッドの吃音を治す決心をしたのだ。





「アルフレッド」

「なに?兄様」






これだよこれ、兄様だよ。身悶えちゃうよね。いやー兄弟っていいな。おっとまた理性が飛ぶところだった。弟と兄弟愛を育むことにより、弟は俺に対し少しずつ話せるようになってきていた。しかし、メイドや執事に対しては全然で、案外クリスに対して一番喋ることができないという謎現象さえ起きているのだ。当のクリスはそのことに密かに心を病んでるらしいのだが、このままではいけない。俺はもっと弟と話したいのだ。そうと決まれば、俺のやることは医者を探すことだ。早速ミザリーに許可を取り、クリスと俺の同伴という条件で外の街に出かけることが許可された。






「よし、アルフレッドの吃音を治すぞ!」

「坊ちゃま、何か良い策はあるのですか?」






よくぞ聞いてくれましたクリス、やはり元祖可愛い。吃音を治す方法の一つは言語聴覚士に診せることだ。俺のような素人とは違った視点でアルフレッドの吃音を治す方法を思いついてくれるはずだ。俺はそんな希望を胸に、初の街に繰り出ることにしたのだった。


街に着くと、そこはまるで中世のような趣の街並みに、古めかしい昭和チックな車と馬車が混在するなんとも異世界的な街並みだった。それにしても異様な街だ。中世のような建造物が多くありながら、その大半は電気が通っており、車もとてつもなく錆びてて古めかしいが、昭和のような角張った車がゆっくりと走っているのだ。そして、衛生観念はギリギリあるのか、馬車の糞は極力ないようにしてあるようだが、若干通りがかる人が鼻を押さえているところを見るに、やはり臭いものは臭いようだ。そんな感じで俺の興味は一気にこの街に引き込まれかけたが、アルフレッドの俺の裾を掴む感覚で理性を留まらせる。俺はアルフレッドを安心させるべく、お兄さんをする。






「アルフレッド、今からお前を治してくれるお医者さんを見つけるからな」

「うん」






可愛い返事に頷き、俺はさっそく街の住人に医者の所在を聞いてみることにした。まず第一街人は野菜を馬車で運搬するおじさんだ。結構臭い。まあ、馬車だからね仕方ないね。動物は悪くない。







「すみません、少しよろしいですか?」

「ん?坊ちゃんどうしたね?道にでも迷ったかい?」

「この辺で言語聴覚士のような医者はいらっしゃるでしょうか?」

「げ、げん、なんだって?」






おじさんは言語聴覚士の存在を知らないらしい。そもそもこれまでに医者にはかかったことがないらしい。恐るべき自然治癒派だ。俺は改めて第二街人を探す。今度はちょっとインテリそうな眼鏡をかけたおじさんだ。眼鏡を掛けているなら医者の居場所くらい知っているだろう。そう考えて話しかけてみる。






「すみません、ここらに医者はいませんか?」

「なんだね、僕は今忙しいんだ。あとにしてくれ」






子どもの僕を強引に押しのけて先を急ごうとするインテリ非人道さんに俺はちっともキレていなかった。ただちょっとくらい話を聞いてくれてもいいなと思った。うん、それだけだ。なので、その人に別れの挨拶をすることにした。足を掛けてやったのだ。案の定、インテリ非人道さんはすっころび、俺を睨んできた。俺はそんな睨みに屈さず、さも大変であるかのように看病を買って出た。






「おおっといけない! 怪我をされているではありませんか! これは大変だ! 医者に行かなければ!」

「ふざけるなクソガキ!なんてことしてくれ・・・・・・」






俺はそんな気が短い人じゃないんだ。異世界に来ても古き良き日本人の土下座スピリッツは忘れてないさ。ただ、ちょ~っとこのインテリ非人道おバカさんには付ける薬がありそうだなって、そう思っただけですよいやだなー。まあ、そういうわけで俺はインテリ非人道おバカさんに怪我の状態を説明して差し上げた。もちろん訴えられないように暴力も暴言もなしですとも。暴力反対っ!






「いや~この怪我はまずいですねえ」

「擦り傷ができちまったよ! 訴えさせてもらうからな!」

「ははは、いいですけど裁判する頃にあなたは生きているでしょうかね~」

「なんだと?」





俺は現代日本の医学知識を脅しも込めて大げさに披露してみせた。もちろん心優しい俺は他人を気遣って教えるよ?だってばい菌入ったらまずいもん。






「いやあね、最近ここらでは破傷風が流行ってましてね」

「は、はしょうふう?」

「はい、傷口にそのばい菌が入ると傷が腐ってやがては死んじゃうんですよ」

「う、うそこけ!」






おやあ?人の話を信じないって言うのは良くないですね。これでも間違ったことは言ってないんだけどな。だから、俺はもう少しばい菌の恐ろしさを教えてあげた。






「あれ知らないんですか? さっきここで馬が糞を落としましたけど、やつらの糞ってのは時としてかなりやばいのが入ってるんですよ」

「な、なんだってんだよ」

「大腸菌って言って、そいつが体内に入ると地獄の腹痛を患うことになり・・・死にます」

「さっきから聞いてれば嘘ばかり! そんなことどの本にも書いてなかったぞ!」






おっとインテリ非人道おバカさんはインテリ非人道おバカグレートに昇格ですな。本の知識だけに頼っていては新しい発見は生まれないのだよ。疑って自分で確かめて見なきゃね。俺ってば優しいなあ。







「ばい菌は時間が経てば侵入していきます。あなたが医者に行かないのは自由ですが、どうなっても知りませんよ?」

「う、うう・・・・・・」

「なんで糞ってみんな避けるんでしょうね?」

「そんなの汚いからに決まってるじゃないか」

「ほう?」






俺は今満面の笑みだろう。いいや、もちろんインテリ非人道おバカグレートさんを心の底から心配していますとも。でも、人の思い込みって怖いねえ。人は知らないってことに対して過剰な恐怖心を見せる生き物なんだ。ちょっと分からないことを怖そうに仕立てるだけでこの有様さ。いわば歴史はスタジオで作られるってやつだね。

子どもの自分が大人を怖がらせられるんだもの。あ、ちなみに俺は怖がらせてはいないよ。心配しているだけだから。そこんとこ分かってよね。






「汚いってことは、そこに汚いばい菌がいてもおかしくないですよね」

「え・・・・・・」

「人って本能では分かってるんですね。糞はやばいって」

「わ、わ、わかった! 医者を教えるよ!」

「あざます!」





こうして俺はようやく医者の場所を聞き出すことができた。ついでに言うと、軽い擦り傷なんて水で洗えば大抵大丈夫だ。あとは身体を清潔にしておけばね。だが、あのインテリ非人道おバカグレートさんはうちクリスが手当てしてくれた。あの野郎、クリスが可愛く甲斐甲斐しく手当てしてくれたことに鼻の下伸ばしやがって。クリスに手当てされるのは俺の特権だと言うのに。あとで痔にでもなってしまえ。そんな悪態を心の中で呟いていると、目的の医者の所までついた。着いたのだが、これは何とも言えない、あれが出てきてしまった。






「坊ちゃま、ここは・・・・・・」

「ああ・・・・・・眼科だな」






あのクソインテリ非人道おバカグレートスケベめ!眼鏡屋紹介されてどうやって吃音を治すじゃ!憤慨のあまり今すぐ石を投げてやろうと思ったが、可愛いクリスに止められたのでやめてあげた。しかし、同じ医者ならば言語聴覚士の情報を知っているのではいか、という微かな希望の下で店に入ってみることにする。店内に入ると、お馴染みのCがあった。これは異世界でも共通なのだと感心していると、少しやつれた医者がやってきた。






「何の御用で?」






そうぶっきらぼうに言い放つと、俺はアルフレッドの経緯を話した。するとその眼科医は頭をポリポリと掻くと、ため息を吐いて無理だと言った。俺は言語聴覚士の所在を教えてもらうだけでいいと懇願したが、なんと驚くべきことを言ったのだ。なんとも気だるげな眼科医はこういった。






「どこにどの店があるか、まったく把握できん」

「へ?」

「出ては消えていく店なぞ一々覚えてられるか」






これは大変困ったことになった。医者がどこにいるか分からないのでは治療すらできないではないか。外には不安そうな顔をしたアルフレッドがいた。兄として困っている弟をなんとかしたいという気持ちは山々だがどうしたものか。俺は心底現代日本の某サイトの地図マップが恋しくなった。その時、俺に電撃が駆け抜けた。そして、俺は不敵に笑い出すのを堪えることができなかった。






「フハハハハハハハハ!!!」

「にっ、にいさま?」

「分からないだと? 知らないだと? ふあははははは!!」

「坊ちゃま?」






アルフレッドは俺をとても心配そうに、クリスはまた何かやらかすのかと頭を抱えてとても俺好みな反応を見せてくれた。二人とも最高だ。そしてなにより、俺と現代世界の技術は最高だ!





俺が考えたのは、マップがないなら作ればいいと、至極簡単なものだ。不敵な笑みに気圧されたのか、アルフレッドは普段懐かないクリスの影に隠れてしまっている。クリスは案外ご満悦のようだが、それ以上に俺の突飛な発想を受けとめる心の準備を使用としているようだ。馬鹿めっ!速度は火力だ!






「できないってのは噓つきの言葉なんだよ・・・・・・ふはは」

「で、坊ちゃまはいかがされるのですか」

「地図を作る。店とその店の情報を乗せた地図をな!」






俺の素晴らしい発想にひれ伏したのか、クリスはまさに青天の霹靂とでも言いたげに天を見上げる。俺は満足げにクリスの意識が戻るのを待つ。すると、ようやく帰ってきたクリスがさっそく俺を褒め称えてくれる。





「で、医者はどうされるのです?」

「・・・・・・」






俺は天才なんだ。そんなこと忘れていたわけがない。まさかね、弟の吃音を治す方法を探るために最良の方法を探していたところさごめんなさい。よし、素直に間違いは認めよう。俺は過ちを認められる男だ。だが、医者の所在が分からないのであれば治しようがないのも事実だ。俺は決して間違えていたわけではない。そうとも探しながら最高の医者を見つけるつもりだったそうさ当り前よ!






「まずはアルフレッドに合う医者を見つけることが最重要だ。だが、それには情報を精査する必要がある。分かるな?」

「ええ、とりあえず今日はその日ではないことだけは分かりました」

「理解が早くて助かるよ」






俺は心の中で泣いた。男たるもの泣かないのが流儀だ。だが、信頼と言うか相手を知り尽くした間柄と言うのは時に厄介だ。こうして俺はクリスに泣かされそうになっている。だが、こんなことでは諦めない。絶対にアルフレッドの吃音を治してくれる医者を見つけてやるのだ。そう決意した俺は、一度作戦を練り直すべく館に帰ることにした。





今日はあと一話ほど投下予定です

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