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第三話 メイド交代

可愛いメイドさんが来ましたよ

無事に三話連続投稿が叶いました。どうぞ読んでください!

「ばあやはお役御免です。お暇を頂きに参りました」





どうやらばあやはついに俺を見放したらしい。少し、いや結構痩せたばあやはそれだけ言うと若いメイドを呼び寄せる。若いメイドは背筋をピシりと伸ばした姿で優雅にやってくる。顔立ちは凛としており、顔立ちは整った紅い髪をしたうら若きメイドだった。まだ若さが目立つが、それでも前世の日本にはいないような落ち着いた美人だ。ぶっちゃけ結構可愛い。そんなメイドが俺の前に立つとばあやが説明を始める。






「この者は私の孫にございます。先日18歳の成人を迎えましたので、私の代わりに坊ちゃまの面倒を見ることとなりました。ではクリスティーナ、ご挨拶なさい」

「はい・・・・・・お初にお目にかかります、クリスティーナ・ローデンシアと申します。以後坊ちゃまのお目付け役を賜ります。どうぞよろしくお願いいたします。」






クリスティーナと名乗るメイドは、髪とよく似た綺麗な紅い瞳を輝かせて華麗にお辞儀する。俺は今日と言う日を忘れないだろうと思った。こんな美人のメイドが俺のお世話をするという。これは立派なステータスだ。俺は新たな個性を得たと心の中で狂喜乱舞した。紹介を終えるとさっさと出ていくばあやを尻目に、クリスティーナは早速俺の身の回りを掃除し始める。俺はすぐにクリスティーナに質問する。





「クリスティーナはどこの生まれだ?」

「王国の西にあります、リンデンという村です」

「リンデンでは何をしていたのだ?」

「リンデンではメイドとなるべく、学校に通っていました」





クリスティーナは淡々と掃除をしながらきちんと俺の質問に応えてくれた。俺はこの異世界をまだよく知らない。知っているのはこの館とその庭くらいのものだ。なぜかこの館の外には出してくれないのだ。だから、俺は人から話を聞いて想像を膨らませ、知識として蓄積するしかないのだ。しかし、クリスティーナは俺の質問を全て答えてくれた。





「クリスティーナは何が好物だ?」

「リンデンの特産でライスを潰し、ソースを付けて炙る『キヌタンポ』と料理が好物です」

「キヌタンポ!!?」

「どうかしましたか?」





俺は思わず日本を思い出した。名前と言い、料理の特徴と言いまさに日本の北国を代表する料理とそっくりではないか。俺はまさにクリスティーナに食らいつかんばかりに疑問をぶつける。





「それが食べてみたい!」

「え・・・・・・キヌタンポをですか?」

「ああそうだ。手に入らないのか?」

「いえ、そういうわけでは・・・・・・」





クリスティーナは途端に目を丸くし、可愛い顔を困らせている。ぶっちゃけ可愛い。しかし、異世界にいてもなお脳裏を過る日本食の懐かしい味は垂涎物だ。ぜひとも食しておきたい。俺は出来るだけかわいい顔をして頼んでみる。そうそう、鏡で確認したのだが、俺の顔は前世でもまあまあ可愛い子どもの顔をしていたのだ。これならおねだり攻撃をしても叩かれることはなかろう。






「クリスティーナ・・・・・・俺の最初のお願いだ。聞いてくれないか?」






幼い子どものきらきら顔に負けたクリスティーナは渋々夕飯にキヌタンポを提供した。5歳児のお願いを聞くとはなんと甘やかしてくれるメイドだろう。俺は心底感謝しながらキヌタンポにありつく。それを不思議そうな、気の毒そうな顔をしながら見つめるクリスティーナの可愛さと言ったらなかった。思わず俺はクリスティーナにキヌタンポを差し向ける。





「クリスティーナも食べないか?好物だろう?」

「いいえ、私は坊ちゃまと食事をお供させていただくわけには参りませんので」






そう断るクリスティーナに俺はうざいおやじ作戦を発動する。






「好物を食べないとは・・・・・・俺のキヌタンポが食えないのか?」

「そういうわけでは・・・・・・」





少しうざそうな顔をするクリスティーナも可愛いものだ。しかし、それでも食べようとしないクリスティーナだったので、俺はさらに追加の作戦に出る。俺は脚を捻って療養中であるため、包帯が巻かれている。俺はニヤリと薄気味の悪い笑みを浮かべる。





「あああ!脚が!折れた脚が痛い!クリスティーナが食べてくれないと収まらなそうな痛みだ!」

「そんな嘘を仰られても私は食べま・・・・・・」

「うごごごがががggggg!!!!」

「・・・・・・分かりました」




渾身の演技で口の端から泡を出す名演技でようやくクリスティーナの方が落ちる。我ながら子供とは役得であるとしみじみ思った。恥ずかしそう?はたまたおっかなびっくりキヌタンポを齧るクリスティーナをまじまじと見つめる。リスのように小さく齧る可愛いクリスティーナを見つめていると、少し懐かしかったのか、おいしかったのか頬が上がった気がした。






「おいしいか?」

「はい・・・・・・っ!いえ!」

「おいしくないのか?」

「ああ、そう言うことでは・・・・・・その、大変懐かしい味でした」





俺は満足して顔を赤らめる可愛いクリスティーナに満足する。そして、俺は再びキヌタンポを齧る。日本のきりたんぽとは少し味が違うが、触感と米の風味を存分に味わうことができた。俺はそもそも久しぶりこんなに笑って食事をしたのだ。美味しい食事になるのも頷ける。だから俺はクリスティーナに礼を述べる。





「クリスティーナ、ありがとう」

「いえ、私なぞを食事に招いていただき恐縮です」

「いやな、俺は生まれてこの方誰かと飯を共にしたことがない。遊び相手すらいなのだ。まあ、遊び相手に関しては俺が悪いのだが・・・・・・」





俺はそもそも親の顔を覚えていない。生まれてからずっとこの館に閉じこもらせられ、一度も両親の顔を拝んだことがない。養子にしてもひどい扱いだ。だが、メイドはいて身の回りの世話はしてくれるし、まだ読めないが本も豊富にある。それにいくら館を破壊しても修理するだけの金はあるのだ。資金面は恵まれているのだろうが、俺は寂しかったのだ。クリスティーナが来て初日にこんなに初々しく人間味のある生活ができたのはまさに僥倖だった。だからこそ、俺はクリスティーナ礼を言わずにいられなかった。






「まあだからな、今日はありがとう。クリスティーナ」






しっかりと頭を下げて感謝を伝える。いくら個性を求めてもこういった感謝は忘れてはいけない。偉くなろうが悪くなろうがこれだけはしなくては。そう感じていると、いやにクリスティーナの影を感じない。先ほどまで立っていたクリスティーナの気配が消え辺りを見渡すと、地面に片膝をついて頭を垂れるクリスティーナの姿があった。俺は驚いていると、クリスティーナが恭しく述べる。






「不敬な行為に対し、感謝のお気持ちを賜れるとは思いませんでした。坊ちゃま、いえ、あなたからの感謝と言う栄誉を得た祝福すべき日を励みにいたします」





仰々しい物言いに少し驚きながらも、俺と言う存在に栄誉を感じてくれる幸福感を俺は気恥ずかしくも嬉しく思った。久しく俺を真っすぐ見てくれた気がして俺は頬を緩める。クリスティーナがゆっくりと立ち上がり、俺は言葉を口にしようとしたとき、俺の言葉を遮ってクリスティーナが冷ややかに見降ろす。





「ですので、あなた様を敬い続けられるようしっかりと教育して参ります」

「・・・へ?」






先ほどまでとは違う声音に俺が凍り付く中、クリスティーナはキヌタンポを持つ俺の手をぴしゃりと叩く。真逆の態度の豹変ぶりに目を丸くする俺をよそにクリスティーナは気味の悪い笑みを携える。





「く、クリスティーナ?」

「坊ちゃま、これからはそれ相応の立ち振る舞いをして頂きます。まずは食事の仕方からです」





ナイフとフォークをまるで武器を扱うように持ち上げると、まるでこれから俺を刺し殺すかとでもいう雰囲気で俺に持たせようとする。まさか、クリスティーナがこんなに恐ろしさを秘めた女性だったとは思わず、俺はこの世界で初めての悲鳴を上げた。





「ひぎゃあああああああ!!!!」





明日もなるべく投稿数を維持しようと考えています。

頑張るのでお楽しみに!

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