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第十話 王族辞めます

今回は少し短めです

それから一年はあっという間だった。一応俺は王族になるため、そのための作法やマナー講座が、ダンスなど様々な訓練を行わなくてはならない。可憐で可愛いクリスとマンツーマン指導なのは嬉しいが、思い出してほしい。クリスは教育に関しては俺と同じかそれ以上に厳しいのだ。うん、嘘をつきました。断トツに厳しです。だが、それ以外の算数計算や科学的知識、読解力は前世の感覚でやれば合格点以上を楽に叩きだせる。これでも一応国立大学を出させてもらってるんでね。この時ばかりはクリスも俺を認めざるを得なかったようだ。





「坊ちゃまは出来ることとできないことの差が激し過ぎます」






誉めてくれたんだよね、これ?まあいいのだ。さらに言えば、社会と経済についてはこれまでに学んだ知識があれば並みの貴族以上の知識があるのも分かった。クリスに言わせれば、その商才があれば王族を辞めても生きていけるそうだ。俺はその言葉に飛びついた。






「じゃあ俺、王族辞める」





俺は今の言葉を世に出してしまったことを心から後悔した。凍てつく視線を可視化できる人間がいるとしたらそれはクリスだろう。俺は貫かれて死にそうになった。まあ嘘々、そんなこと思うわけないよね。話を戻すと、王族や貴族は領地を経営しなければならないため、帝王学なるものを学ばなければならないらしい。しかし、これはクリスの方からストップがかかった。俺としては名前からしてカッコいいその学問を学んでやらないでもない、というか学んでみたいと思ったのだが、なぜかクリスが嫌がった。





「これ以上人をたぶらかすような才能を身に着けてどうするつもりですか・・・・・・」

「なんだって~?」

「何でもありません」






クリスがなにか囁いた気がするがまあ俺への称賛だろうきっと。そう思うことにしよう。そう、ポジティブ大事。そして、学問をする時間が浮いたためその穴あき時間を俺は、インテリ君改めボルドー君と株式の情報についてやり取りするようになっていた。どうやら規模があまりにもでかくなりすぎているようだ。俺の資金はいつの間にか地方財産に匹敵するほど巨額になっていた。これではボルドー君の銀行たる俺もパンクですよ。そんでもってボルドー君は足しげくこの館に通っているが、お目当てが俺以外にもあるようだ。鼻の下を伸ばすのを辞めてもらいたい。俺はもっとボルドー君に勉強して痔になってもらう為、情報誌と株式の拡大を命じた。






「マクシミリアン殿! 私は生まれてこの方この街からは出たことが・・・・・・」

「農家や商人ですら出ているのに、インテリの君が出ないのはおかしいよね?」

「わ、私はできませんよ!」




はい嘘確定です。俺は昔も言ったけど元は日本人よ?俺が一番言いたかった言葉ランキング上位が「できません」。これが言える環境を整えるのも大事だけ、それ以上に俺は前世では言ったことがないんですよこれが。だから、ボルドー君には頑張ってもらいましょうそうしよう。






「できないってのは、嘘つきの言葉なんですよ」

「ひえっ!」

「給料アップを提示しよう」

「やらせていただきます」





俺とボルドー君はこれからもいい付き合いができそうだ。領地は広いが、他の領主が治める地域にも情報は拡大している。人・物・金ではなく、目に見えない情報は規制の仕様がなく、俺は情報産業を一手に担う裏の支配者となりつつあった。う~ん、トレビア~ン。裏のボスって響きがいい。俺は新たな個性を手に入れた気がしてとても満足だ。そうこうしているうちにまた冬の季節が巡ってきた。去年はクリスと楽しいデート・・・うん、やっぱ恥ずかしいから贈り物記念日とでもしておこう。そんな楽しい年だったが、10歳の誕生会はついに俺の王族お披露目会である。内容はあまりよく知らないが、まあ大丈夫だろう。問題はクリスが風邪をひいたことだった。俺の可愛いクリスが寝込んでいる姿はあまりに忍びなく、俺は他のメイドの助けを借りつつ看病をしてやることにした。





「具合はどうだ、クリス」

「はい、とても良いです」

「嘘が下手だね。辛そうだぞ」





クリスは倒れる直前まで俺の世話をしていたが、まったくそんな素振りを見せなかったというか、俺が不注意だったのだ。俺はなんとしても誕生会までにはクリスに治ってほしかった。だから俺は必死に看病した。夜中に部屋を抜け出してはクリスの部屋に忍び込み、額のタオルを替えてやったりした。俺がタオルを水に浸して絞るとき、クリスがふと起きてしまった。





「坊ちゃま?」

「起こしてしまったか?すまない、今タオルを替えてやるからな」





俺の絞る動作を見てクリスは飛び起きる。俺は突然の動きに反応が遅れてしまった。クリスは俺の左手を掴んで凝視する。俺は完全にやらかしたと思った。俺は以前、アルフレッドの医者を探すために外科医のマックス・バリューの下を訪れたが、その時に言い当てられたように俺の左手は握力がかなり弱い。それを遂に、というかこんな時にクリスに見つかってしまったのは痛恨の極みだった。クリスは風邪で辛いはずなのに、すごい勢いで俺に迫る。その気迫と言ったら思わず逃げ出したくなるほどだった。





「坊ちゃま、もしかして・・・・・・左手が動かないのですか?!」

「そんなわけあるか。ちゃんと絞って見せたじゃないか」





俺は必死にかつ至って冷静に対応を試みる。内心、心臓が破裂しそうな勢いで収縮を繰り返すがそれを悟られるわけにはいかなかった。だが、さすがに長年連れ添ったクリスだ。俺の嘘にすぐに気づいてしまった。






「もしかして、あの時ですか?」






俺はクリスの考える同じ光景を見ているだろう。初めて外出して山へ繰り出したあの日のことだ。俺は躓いたクリスを助けるために、無理な姿勢で左手を行使してしまった。その時の怪我が未だに引きずっているのだ。だが、これを認めてしまえばクリスを悲しませることになる。もとあといえば俺が強引に山に誘ったのが悪いのだから、クリスが謝る必要もないと考え隠してきた。しかし、クリスは気づいてしまう。俺の否定にも。





「あの時? いや、俺は無茶ばかりして来たからね。たぶんその時だろう」

「どうして仰って下さらなかったのですか!?」





クリスは俺のか細い左手をまじまじと見つめる。俺はそんなクリスからそっと左手を放し、クリスに休むように促す。






「ほら、まだ病人なんだから寝てなきゃ」

「寝ている場合ではありません!ああどうしたら・・・・・・」





あたふたしているクリスを普段は可愛いと思えるのだろうが、今の俺にはそんな余裕はなかった。俺は一刻も早く離れるべきだと思ったのだ。俺は急いでクリスを部屋に残し逃げ帰ってしまった。






「坊ちゃま!」





俺はクリスを傷つけたくない。本当の親より親らしいことをしてもらい、こんな俺に愛を注ぎ、こんな俺といてくれたかけがえのない人なのだ。この左手のせいでクリスを傷つけてしまうくらいなら、いっそのこと切り落としてしまいたいくらいだ。左手がなければクリスも悲しまずに済むだろう。だが、他の人に隠せている以上気に病む必要はない。俺はそうこびり付いた考えを振り切った。





今日は短めなのであと一話投稿します

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