~第八話~
「今日は最初に小テストを返すぞ。出席番号順に取りに来い。今回はみんな点数が高かったぞ。」
歴史なら少しはできるのだが、地理は全くもってできない。
僕は出席番号が二番なので、心を落ち着かせる余裕もない。
たまに、不安な時間が短くて羨ましいなどという人もいるのだが、出席番号が早くても、得することはない。例えば、音楽の歌のテストでは、必ず出席番号順なのだ。
それを考えると、結局は中間あたりが一番いいのかもしれない。勝手に結論づけながら、先生からプリントをもらって席に着く。
今回のテストは二十点満点なので、五点くらいあればいいなと思っている。特に良い点を期待しているわけでもないが、少し緊張して手が震えてくる。この瞬間は、何回経験しても慣れることはない。
ゆっくりと解答用紙を裏返した。解答用紙の右上には、赤ペンで大きく一点と書かれてあった。
あまりにも低くて、全身の力が抜けてしまいそうになった。しかも正解した一問は記号問題で、勘で書いたものがあっていただけだった。
つまり、実質ゼロ点と言えるだろう。
僕は模範解答と、解答用紙を死に物狂いで交互に確認していた。そのせいで、後ろからの接近に気が付けなかった。
それはあまりにも一瞬の出来事だった。
パサッ
気づいたときには、僕の右手には紙がなかった。
その瞬間、またいじめられることを悟った。解答用紙を取る男なんて、青山くらいしかいないだろう。
「おい、皆聞いてくれ!こいつの小テストの点数が一点だぞ。本当に馬鹿だよな。」
騒がしい笑い声が教室中に響き渡った。
そんな僕らを静かにさせるため、先生は大きな声で怒鳴り散らかした。
地理の先生はこの学校で一番怖いと言われているだけあり、すごい迫力で、僕まで怒られている気分になった。
青山たちも、先生の勢いに圧倒されて、自分の席へと戻り始めた。でも、青山が素直に席に戻るようないい子ではないことを、僕はよく知っている。
「お前のせいでクラスの平均点が下がるんだよ。少しは反省して、次のテストに備えておきな稲村君。ついでに、顔面偏差値もね。」
僕の耳元でそう囁いて、にやにやと不気味な笑みを見せながら、去っていった。
実は青山は頭がよく、県でトップレベルの学力を持っている。あいつみたいな性格が悪いやつが、なぜ僕よりも勉強ができるのだろうか。不思議でたまらない。
青山は顔面偏差値について言っていたが、僕は知っている。確かに顔は良いのだが、アイツの額には大きな痣があることを…。
それは、放課後に屋上でいじめられている時だった。大きな風が吹いて、大きな痣が見えた。その瞬間、青山は少し動揺していた。
本当はいじめられやすいのは青山なのだ。でも、青山はリーダーであるためいじめられることはない。これが、クラスでの立ち位置の違いなのだと思い知らされた。
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