ひとごい~人に”恋”して付き合うか、人に”乞い”て付き合うか~
――弱い自分が嫌いだった。
――ずっと強がりな自分を描き続けた。
でも、それは昔の話だ。
精神的に弱い自分がほとほと嫌で。
すぐに誰かに助けを求めたり。
自分は悪くないと誰かに責任を押し付けたり。
でも、それはもう本当に昔の話だ。
誰かに頼る事もなく”出来る自分”を演技し続けた。
バカな談笑、気兼ねない話題。
集団や仲間から省かれないように。
それなりの努力はしたつもりだ。
まぁ今となっては、中身のない事だろうが。
高二の夏。
スポーツだけに明け暮れていた、汗臭い頃。
とある下級生の女子に告白された。
とても嬉しかった。
結果、了承。
はれてその女の子と付き合う事になった。
欠片だらけの知識やかき集めた情報を元に。
毎日が楽しくて、笑って。
俗にいう青春。
本当に青臭いガキだったと思う。
男だから。
先輩だから。
そんな言葉が、背筋を伸ばす。
だから、めいいっぱい彼女の前では背伸びをした。
”出来る彼氏”になり切った。
彼女が好きになってくれたのはこんな”弱い自分”なのに。
それが無性に嫌で、目を背けたくて。
”憧れる理想の彼氏”という虚像に追いすがった。
×××× ×××× ××××
精根尽き果てたのか。
高三の夏。
部活も引退し、彼女とは取りとめて喧嘩なく過ごしていた。
いや、今度は恋愛ではなく。
受験という問題の波にのまれて、流れていただけだった。
放課後、適当に受験勉強をし。
彼女の部活終わりに、めがけて教本を閉じる。
一緒に帰るが、電車で3駅分くらいの短い時間。
それが当たり前になっていた。
背伸びの鈍痛に慣れたけれど。
どこか自分だけ1人相撲をしているかのような虚無感。
無刺激の日常。
――そんな時、去年に卒業した大学生の先輩から連絡がきた。
合コンの人数補填の理由で誘われた。
初めての居酒酒の席。
そこでちょっと大人の世界を知った。
解散後。
泥酔した先輩。
揚々と男女で消えていく他の参加者。
残ったのは自分と、先輩。
そして、先輩と同じ大学の女性。
だが女性は先輩を介抱する事もなく。
自分を夜の繁華街へ誘ってきた。
場に酔ったのか、興味本位だったのか。
生唾を飲み、自分と女性はホテルへと消えた。
今にして思えば、裏切りだったのだろう。
だが、これだけはいえる。
自分はきっと、背伸びに疲れていたのだと。
”出来る自分”を繕うのに疲弊し。
”弱い自分”を認めてくれる人を探していたのかもしれない。
運が良いのか。
大学生の女性は”弱い自分”を包み込んでくれた。
理解はきっと、してくれていない。
でも”本当の自分”と対してくれた。
刺激が欲しかっただけなのか。
変化もない日常に、自分に。
飽き飽きしていただけなのだろうか。
でも結果として”弱い自分”を晒しだす事ができた。
自分の中の、心の欠損が埋まったように。
憧れだけでは、その欠損は埋まらなかったように。
案外、あっけなく自分の弱さを認める事ができた。
大学生の女性。
いや、今の彼女のおかげだろう。
確かに、身体から始まる恋愛もある。
でも、それはお互いに弱い点を補い合っているだけなのだろう。
孤独が寂しい。
だから寄り添う。
快楽を求めたい。
だから絡み合う。
自分にとって、少なくても今の自分にとって。
必要なのは、背伸びでも演技でも強がりでもない。
憧れを求める事でもない。
ただただ、自分を認めてくれる人が一緒にいてくれれば。
それでよかったのだ。
それが、自分の恋愛だと気づいて本当によかったと思っている。