転生したらエロゲの世界だったケン
エロゲやった事ないので分からないんですけど、高校を舞台にしたエロゲとかNGなのかな、と書いてから思ったので、転生する前の世界も異世界で、学園エロゲが許されている世界、って事で(オ
「大丈夫? 変わろうか?」
「え? あ、千葉くん。大丈夫よ、こう見えて力はあるんだから」
高校の廊下を荷物を抱えて歩く朝比奈さんは委員長だ。
いつも先生に頼まれてプリントや資料などを運んでいる。
「じゃあ、資料室まで付き合うよ」
「良いのに」
階段を上り資料室の前まで適当な話をしながら歩く。
わざと声は大きめで。
「それ抱えてたら、ドアを開けにくいでしょ?」
わざとらしくドアをノックして見せる。三回。
「あ、言われてみれば」
ちょっと恥ずかしそうに笑う朝比奈さん。
可愛い。
「えっと、鍵…」
朝比奈さんが抱えてる荷物と一緒に持っていた鍵を渡そうと身をよじった。
すると、資料室の中からガタガタと音がする。
「あれ? 誰か居るのかしら…」
「ん? ああ、ほんとうだ。なんか音がするな」
ちょっと声は大きめだ。
こちらからドアは開けない。
「あっと、ごめんよ」
「…」
勝手にドアが開いて中から、男女が出てきて、そそくさと走り去った。
廊下は走ったらダメだぞ。
「あれ? 鍵はどうしたのかな。閉め忘れ?」
「ははは、なんだろね」
俺は千葉ケン。
エロゲのやりすぎでテクノブレイクして気がついたら高校生になっていた。
ここはおそらくそのエロゲの世界だ。
さっき資料室から逃げて行った2人はヒロインの1人と主人公たちの中の1人だ。
そう、主人公は複数人いる。
そして、ヒロインもなぜかそっくりな子が何人かいて、結構な人数がいる。
そして、困ったことに学校に何箇所かヤリ場があって、常に誰かしら交尾している。
初めはびっくりしたし、慣れたらこれはこれで面白いなと思っていた。
学校で派手にセックスしているのに、誰も気がつかないのか、黙っているのか問題にならないのだ。
ゲームの強制力とか言うやつ? などとのんびり考えていた。
だが、ある日不用意にヤリ場に近づいていく女子生徒を見かけて焦った。
それが朝比奈さんだった。
朝比奈さんはおっとりした感じの可愛い女の子で、いつも荷物を運んでいる。
放課後の音楽室、休憩時間の体育倉庫、保健室、屋上、なぜか男子トイレに入ろうとしていたこともあった。
もしかして、朝比奈さんは3P要員とかで、主人公とヒロインがやっているところに入ってしまう運命なのかも知れないと思いつつ、今のところ全て阻止している、と思う。
「まあ、俺が知らないところで既にって可能性もなくは無いんだよな…」
「何がですか?」
「うわっ、朝比奈さん?!」
廊下で独り言を言っていたら朝比奈さんに聞かれてしまった。
それと、もう1人?
「あんたがストーカー?」
「は? なんだよいきなり」
「や、弥生ちゃん、さすがに失礼だよ」
朝比奈さんと一緒に気の強そうなポニーテールの女子が居た。
スカートが膝まであるもっさりした感じの朝比奈さんと同じ制服か? ってなるくらい短いスカートを履いている。エロゲ世界なので普通にパンツ見える様な格好の子が闊歩していて股間に悪い。
上着も乳袋かってくらい身体にフィットしている。
「あーさんが行く先々で待ち構えてるらしいじゃ無いの」
「な、いや…、あれ?」
「え?」
言われて気がついたが完全にストーカーだ。
「えっと、あの、ごめん」
「え? な、なんで謝るんですか?」
「自覚なかったけど、完全にやらかしてるわ、オレ」
「ほらみなさい」
弥生ちゃんと呼ばれた女子が朝比奈さんを庇う様に立つ。
「あ、あの」
「ごめん、朝比奈さん、今度から気をつけるよ」
じゃあと手をひらひらさせながら自分の教室へと帰ることにした。
「まって」
「あんなやつ放っときなさいよ」
そんな声が後ろから聞こえた。
朝比奈さんをつけ回すのは流石に自分でも気持ち悪いので自粛する事にしたが、朝比奈さんがヒロインたちがやってるところを目撃するのはかわいそうな気がするし、ましてや朝比奈さんが他の男とセックスしてると思うのはかなり辛い。
「だからって、ナイト気取りでオレが守る、とか言うのもかなり痛いやつだよな。朝比奈さんに恋人が居るかどうかも知らんくせに…」
「何あんた、いつも独り言いってんの?」
「うおっ」
朝比奈さんの友達の弥生とか言う女子だった。
「あー、いや、なんだ。そだ、ちょっと聞きたいんだけど良いかな」
「何よ、あーさんの事は教えないわよ?」
「いや、君はこの学校で、アレな事をしてる奴が居るのは知ってる?」
「なに、アレって」
訝しむ目を向けられる。まあ当然だが。
「えーっと、なんだ、不純異性交遊的なやつ?」
「な、なに、今度は私にセクハラ?」
「いや、見たことも聞いたこともないなら良いんだけど、どうも朝比奈さんはそう言うことをしてる連中の居るところに突撃しやすい星のもとに生まれた子みたいなんだよね」
「な、何それ」
「準備室とか保険医の居ない保健室とか、体育倉庫とか、な」
「え…」
どう言うことだろう。単に知らないだけなのか、なんらかの不思議な力で俺以外には見えないのか。
「あまり朝比奈さんにそう言うの、見せたく無いからさ、人気のないところに入る時はノックして余裕持って入る様に言っておいて」
「え、ああ、うん…」
「じゃ、よろしく…」
「あ、いけね」
「えっと、何がいけないんですか?」
「つい無意識で朝比奈さんが居そうなところに来ちゃってさ」
「あの、それって、そのう…」
朝比奈さんだけじゃなく、弥生も一緒なのでハッキリ聞けない様だ。
聞かれてもちょっと恥ずかしくて困るので今はありがたい。
「あーさん、悪いけど、先に学食行っててくれる?」
「え、ああ、うん。じゃ、これお願いして良い?」
「うん」
朝比奈さんが持ってた荷物を受け取る弥生。
「あんたがここで待ち構えてたって事は、そうなの?」
「ああ、見てみるか?」
「私には見せるのかよ」
「見たいんだろ?」
「…」
弥生がそっと音楽室を覗く。
みるみる耳まで真っ赤になったので襟首を引っ張って離す。
適当なことを声大きめで話し出すと、音楽室の中からガタガタ音がして、今度はわざとらしくピアノの音色がした。
「そろそろ大丈夫そうだ。入ろう」
「え、ああ、うん」
「どう言うことか、説明してもらえますか!!」
学食の隅で、ケンと弥生が並んで座らされ、その向かいに朝比奈さんが座っている。
そう、朝比奈さんみたいなタイプは怒らせると怖いのだ。
「私から千葉くんを引き離しておいて、2人でこそこそしているって言う事は、つまりそう言う事なの?」
今度はちょっと寂しそうに問いかける朝比奈さん。
これは多少脈ありと思って良いのだろうかと期待するケンだが、そんな場合では無い。
「い、いや、そう言うんじゃ無いのよ? ほんとうよ?」
弥生が完全に気圧されてる。
実はアレから弥生に頼まれてヤリ場の場所とイベント発生のタイミングなどを教えて回ったのだ。
一応、朝比奈さんが突撃しない様に、と言う建前だが、とんだエロ女だ。
こう言う時はストレートに答えるべきだろう。
「俺たちは朝比奈さんが不用心に危ないところに突撃しない様に遠くから生暖かい目で見守る会を作ったんだ」
「なんですかそれは?!」
裏目に出ました。
「いや、ほんと、オレとこいつがどうとかじゃなくて、朝比奈さんが中心なんだ」
「それで私は仲間外れなんですか?」
「ごめんて。直接は話しにくい事とかあるんだよ。な」
「う、うんうん。そうだよ。うん」
「………」
ジト目で睨んでる。怖く無いしむしろ可愛いが。
「むしろ可愛いが」
「な、なに?!」
「ごめん、口が滑りました。しばらく無自覚でストーカーっぽい事をしてたからちょっと朝比奈さんに直接会いづらい気分だっただけなんだ」
「その件はもう良いです。別にストーカーされてたとか思ってないので」
「そっか、ありがとう。どさくさでこんな事を言うのは反則かも知れなけど、オレと付き合ってくれないかな。そしたら弥生さんにストーカー呼ばわりされずに朝比奈さんと一緒に居られるんだけど」
「え、あの、私で良ければ…」
照れて真っ赤になる朝比奈さんが可愛い。
弥生が納得いかないって顔をしているが、この際無視させてもらおう。
とりあえず、オレの戦いはまだ始まったばかりなのだ。
続かない。