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5. 伝説の武器は装備できない

「んじゃ、ちょっくら初心者ダンジョンとやらを見てくるから」

「お待ちください」


 話が終わったので外に出て初心者ダンジョンへ向かおうとしたけれども、メグがストップをかけてきた。


「まさか丸腰で向かうつもりではございませんよね。それとも格闘に自信がおありでしょうか。そのようには見えないのですが。もちろん何を得意と考えるかはメイの自由です。ええ、たとえこの先ボコボコにやられて泣いて帰ったとしても、それはメイ自身が選んだことでございますから」

「……またケンカ売ってるよね?」

「いいえ、そのような意図は決してございません」


 恐らくこの先ずっとこのような煽り合いが続くのだろう。姉の教えに従い、後で何かしら仕返しをしてやろうと思いつつも、話を進めるために今は耐えることにした。


「仮に武器をご所望でしたら、あちらの扉の先に武器庫がございますので、お好きな武器をお持ちください」


 メグへの仕返しの内容を考えながらも、武器庫という響きに興味をそそられたメイは軽い足取りで示された扉の先に向かった。


「うわーこれは壮観な光景だ」


 日本最大級の展示会が開かれる会場のような広大なスペースに、多種多様な武器がずらりと整列している。見えないくらい遠くまで広がっており、全部見るだけでも一日が潰れそうな量だ。


「ふわーすっごいなぁ。お、会場図があるじゃん。ほうほう、ジャンルごとに並んでるんだ。剣、槍、斧、弓……王道なのは数が多いか。忍者武器も鉄板だよね。ピアノ線なんてのもある。強キャラ用の武器だけど操れる人いるのかな。ネタ武器も多いなぁ。フライパンとかけん玉とか、元ネタ知らない人が見たらどう思うんだろう」


 このままでは会場図を見ているだけで時間が吹き飛んでしまいそうなことに気付き、とりあえず軽く見て回ることに決めた。


「やっぱりまずは剣だよね。って言っても凄まじい量があるからどこから見れば良いか……」


 入り口近くに置いてある短剣だけでも、見渡しきれないレベルの数が展示されている。ひとまず、初心者が使えそうな両刃の剣がある場所を探してみる。


「お、鉄の剣だって。重っ!」


 鉄の剣とタグに書かれた剣を試しに手に取ってみたけれども、メイの腕には重すぎて自在に操れるとは到底思えなかった。


「私自身が特に強くなったり武器を装備できるようになるわけじゃないのね」


 となると短剣くらいしか持てないかなぁ、などと残念がっているメイの目にその文字は飛び込んできた。


「エクスカリバー……え?本物?」

「はい、本物です」

「うわ、いたんだ」

「はい、ご不明な点がございましたらお気軽にお声かけください」


 まわりを見ると、デュランダルやファルシオンといった、ゲームでよく見る名前の剣がずらりと並んでいる。


「ええ……最初から最強武器が手に入るとかダンジョン探索の醍醐味が無いから……」

「お好みでしたらどうぞお持ちください。持てるようでしたら、ですが」

「……止めておくから」


 持ってみたらあら不思議、とても軽くてこれなら私でも扱えそう!


 なんてことはもちろんなく、触ってみたら鉄の剣よりも重かったので諦めるしか無かった。


「というか、ここに展示されている武器の大半が重くて持てないよね。期待させておいて落とすとか悪質なやり方だから」

「それは心外でございます。私共は選ぶ権利を皆様に平等に提供しているだけでございますから」


 なんてことを言いながらほんの少しだけ嘲るように口元を歪ませたのをメイは見逃さなかった。


「……ふーん。そう」


 そのことを指摘するよりも、気になることがあった。まともに装備できないとはいえ、頑張れば持つことくらいは出来るかもしれない。それならば……と、普段ならあるものが仕舞ってある場所に手を入れた。


「あ、あれ?ある!」


 スマートフォン。

 部屋の机の上に置いてあったはずのソレが、外出中にいつも仕舞ってあるポケットの中に入っていた。


「電波はダメか。でも……」


 軽く操作してみて、機能が制限されていないことが確認できた。


「ねぇメグ、ここで撮った写真って持ち帰れるの?」

「はい、可能ですよ」

「うっそ!マジで!?」

「マジマジです」


 映え世代のメイにとって、たっぷり撮る以外の選択肢はない。大チャンスだ。


「じゃあメグ撮って撮って。さっき煽られたの気にしないであげるから!」

「そんなこと言わなくてもお撮りしますよ」

「あ、重いの持ってるときに焦らして変顔になるの待つとか止めてよね」

「……はい」


 注意しておいて良かったと心から思った。


「それじゃあ頑張ってみるから。エクスカリバー……うううう……えいっ!」


 フラフラになりならがらもなんとか持ち上げることができた。


「構えるのちょっとしか保ちそうにないから、ササっと撮ってね」


 そうして、メイの武器装備ショーがはじまった。


「あ、グングニルだって!でっか!流石に持てないかなぁ……でも頑張ってみるから!」

「弓も格好良いよね、構えてるところとか。うひゃーかったーい!ひけなーい!」

「ニンジャも外せないよね。風魔手裏剣にんにーん!くノ一装備が無いのが勿体ないなぁ」


 防具は初心者ダンジョンでは不要とのことで、ここには無かった。防具とセットなら更に映えるのに残念だ。


「顔の角度はやや左で……もう少し武器を前に倒せます?良いですね、はい。撮りますので決め顔どうぞ」


 メイにとって一つ誤算だったのが、メグの写真家としての能力が非常に高いことだ。映えまくる写真をバシバシ撮ってくれることで、テンションぶち上り。何時間もかけて写真を撮りまくっているにも関わらず付き合ってくれるメグに、はじめて感謝した。


 そして長い時間が経ち、メイが満足したころ、問題のブースへとやってきた。


「おーこれまたすごい量だなぁ。普通のはどれだろう。……銃の普通って何かな?」


 銃。


 ファンタジー世界には似つかわしくないそれも、数多くの種類が並べられていた。もっとも、メイは銃に関する知識は全く無いので、なんとなくすごい、程度の感想しか抱けなかったけれども。銃好きにとっては涎垂ものだろうが。


「銃はあるけど、戦車とかはないんだね。武器と兵器の違いなのかな。どこが境目なのか知らないけど。RPGなんとか、みたいなの撃ってみたかったなぁ」


 メイはバイオレンスなものが割と平気だったりする。


「良く分からないけど試しに撃ってみたいなぁ。セーフティーってのを外してから引き金をひけば良いんだよね」


 漫画やラノベで得た微妙な知識を元に手ごろなサイズの銃を適当に弄ってみたところ、偶然にも正しく撃つ準備が出来てしまった。


「お試しでしたら、あちらのカカシに……」


 バン!


「お、当たった!やった!銃って至近距離でも当たらないって聞いたことあるけど、簡単じゃん!フフン、私って才能あるかも」


 反動の強さにびっくりしつつも、命中したことを喜ぶメイだったが、これが偶然によるものだということはちゃんと理解していた。そんなことよりも問題なのは……


「おめでとうございます。見事に的中しましたね」

「でしょでしょ。もう一発やってみようかな」

「それでしたら他の銃も試してみることをお勧めいたします。そうですね、こちらのショットガンなどはいかがでしょうか。まずは私が使い方を説明……」


 展示されているショットガンを慣れた手つきで取り上げ、準備をはじめるものの……


「あ、やっぱ私は短剣でいいや。じゃダンジョン行ってくるー」

「(ギリィッ!)」


 突然逃げるように走り出し、目星をつけていた短剣を手に武器庫から飛び出すメイ。


 激しく歯ぎしりしたメグの胴体には、綺麗な穴が開いていた。


 やられたらやり返す。煽られたのは気にしないけどやり返さないとは言ってない。姉の教えがしっかりと身についている証拠だった。


区切りの問題で少し短いです。

武器に関して筆者はあまり詳しくないので全体的にぼかして書きましたが、武器警察のみなさまお手柔らかにお願い致します。

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