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35. 参加者がガチすぎて勝てない

少し短いです。


「問題です。『日本』と『日゛本』。表記がやや違いますが発音が同じ二つの国、実は同じ世界の別の惑星にある国である。〇か×か」

「(……私の世界に宇宙人がいるってこと!?しかも露骨に名前が似ているとか流石に無いでしょ。でもここまで予想が外れ続けてるから、ここは敢えて裏を狙ってみようかな。そっちの方がロマンあるしね)〇」

「答えが出揃いました。正解は×です」

「もーー!当たらないからーー!」

「正しくは『日本』と『日゜本』ですね。さあ、次の問題です」

「え、今凄い気になること言ってたから。宇宙人いるの!?」

「問題です」

「スルーしないで教えてよーーーー!」


 コロシアムで行われているのは、〇×クイズ王決定戦。

 参加者の誰も答えを知らない問題が出題され、正答率が運に左右されるクイズ大会である。


「なんでみんなそんなに当たるの!?」


 それなのに、メイ以外の出場者は八割以上の正答率を叩き出している。


「ふふっ、初めてですかな、お嬢さん」

「我々も最初は運が良い人が勝つと思っていたでござる」

「運に頼っているだけでは勝負にすらならない。さっさと帰んな」

「意味分からないからー!」


 他の参加者たちにボロボロに言われるメイは、勝ち目が無いことが明らかなくらい差がついていたのでギブアップして帰らざるを得なかった。


「わたくしもダメでした……」

「あいつらおかしいぞ」

「八割外したんだけど私の運悪すぎない?」


 運ゲーと思ったのでセーラたちも参加してもらったが、勝負にすらならなかった。


「分かる分かる。私もアレ参加したことあるから」


 肩を落としてコロシアムを後にするメイたちを外で待ち受けていたのはウェザーだ。


「クイズ系のイベントで勝つのは無理だと思った方が良いわ。参加者がガチすぎるもの」

「それ先に言ってよ!でもガチすぎるって言っても〇×は運ゲーでしょ?」

「そうね、普通なら運ゲーよね」

「何かイカサマやってるってこと?」

「いいえ、違うわ。彼らは過去の大会のデータから〇と×の出現タイミングを分析してるのよ。それに出題者の視線や体の動き、声の抑揚まで分析しているって聞いたことがあるわ。きっとそれ以外にも気持ち悪いくらい分析しているのでしょうね」

「気持ち悪!」


 単なる運ゲーなのだからそんな分析は迷信だろうと言いたくはあったが、それで結果を出されているから否定できない。


「あーなんかむしゃくしゃするから、体動かす系のに参加してくる!」

「今掲示されてるのは止めた方が……いえ、なんでもないわ」


 体を動かして気分をスッキリさせるためのイベント参加なのだから、この際勝ち負けはどうでも良いのだろう。




「アスレチックなら程良い運動になりそう」


 縦へ横へと長くのびるアスレチックロード。

 参加者全員が同時にスタートし、最初にゴールした人が優勝というシンプルなものだ。

 アスレチックの内容も、狭い足場や高い段差、宙に張られたロープなど定番のギミックばかりである。

 純粋に技量が問われるタイプのイベントなのだろう。

 メイ以外の参加者はマッスルタイプの人が多い。


「お嬢さん、そんなやわな体で参加するのかい?」

「ちょっと体を動かしたくなったので」

「優勝狙いじゃないってことか、それが賢明だな。俺たちと競ったら危ないから後ろからゆっくり来るんだよ」

「あはは、そうですね」

「そもそも一緒に進むなんて出来ないだろうがな」

「違いねぇ」

『あっはっはっは』


 ここでも煽られるメイだが、内心でほくそ笑んでいた。

 体を動かすと言ったが、力を使わないとは言ってない。

 他の選手も何らかの能力を使ってくるかもしれないが、メイの力で軽々と障害を越えて行けば勝負にはなるはずだ。


「(いざとなったらこの力で脱落させてやる)」


 他の参加者への直接攻撃は禁止されているが、バレなければ良いのだ。

 ゲスいことを考えるメイ。

 だがその考えは甘かった。だだ甘だった。


「選手のみなさんがスタートラインにつきました。まもなくスタートです」

「実力者が勢揃いした今大会、果たして記録は生まれるのでしょうか」

「スタートしました。おおっと!カオル選手いきなり大技成功です!一フレームしか猶予の無い二段ジャンプを成功させました!」

「さらにはリク選手が華麗に壁抜けを決める!ヨシキ選手は被弾からのノックバックを上手く活用しての大穴スキップです!」


「なぁに、これ?」


 明らかに人間技では無い動きをして次々と先に進む他の選手を見て、本気で暴走することに決めたメイ。惜しげもなく力を使って追いつこうとするが、常に全速力で進み続ける彼らに全く追いつきそうにない。力を使おうにも届かない。


「きたー!スピンジャンプからの隠しワープへ到達!スタート直後の大技を成功させたカオル選手がリードを保ったままそのまま先頭でゴールしました!」

「アスレチックで勝負しろよーーーー!」




「満足した?」

「もうやだ、なにこれ」


 傷心のメイは初級世界のカフェで休憩中。

 美味しいケーキと紅茶で治療するのだ。


「人間の動きじゃなかったぞ」

「人間って壁抜け出来るんですね」

「あれじゃ壁を爆発して進んでも勝てない」


 基本的に彼女たちは運動が得意では無いので、応援席でメイを応援しながら他の参加者の人間止めてる動きに愕然としていた。


「だから言ったじゃない、ガチすぎるって」

「ガチとかそういうレベルなのかな……」


 彼らが日本に来れば某アスレチックなテレビ番組など簡単にクリア出来るのではないだろうか。


「今はまだ待つ時よ。勝負になりそうなイベントを選ぶの」

「そんなこと言われてもなぁ」

「既存のイベントなら狙いどころを私が教えてあげるわ。それ以外なら完全新規のイベントに参加するのが良いわ」

「ガチ勢が研究してないから?」

「そう。掲示の紙に新規かどうか書いてあるから、それと賞品を見て選ぶと良いわ」

「賞品も色々あるよね」


 イベント賞品には料理や小物や〇〇権など幅広いジャンルが揃えられている。

 その中でも、メイやウェザーが欲しがっている『見た目を変化させる』タイプの賞品は効果時間が短いにも関わらず人気が高い。


「私たちが欲しい賞品が貰えるイベントは『育毛剤』関係もセットで商品候補になることが多いのが厄介なのよね」


 男性に大人気なこの賞品があると、そのイベントは熾烈な争いになってしまう。

 多くのイベントガチ勢は、この賞品を手に入れるために日夜努力しているのだ。


 見た目にこだわる男女の執念、それらが入り乱れたイベントはとても醜く、独特の面白さがあると見る人にとっては人気があったりもする。


「彼らを倒さないと私たちの勝利はないわ。狙いどころのイベントが出るまで彼らの動きをチェックしても良いかもね」

「動きがキモイから進んで見たくはないかなぁ」

「気持ちは分かるからそこは任せるわ。それじゃ、私は行くわね。良いイベント見つけたら連絡するから」


 ウェザーは注文したケーキを素早く平らげると先に席を立った。


「うーん、どうしよっかね。みんなが活躍できるイベントとかあれば良いんだけど」

「わたくしは回復がメインなので、あまりイベント向きでは無いかと」

「私もめんどくさいのは嫌ー」


 セーラは能力が特化し過ぎているため、ソルティーユはやる気も実力も無いため、適したイベントは少なそうだ。


「やっぱりトモエがキーかな」

「罠たっぷり仕掛けたいぞー」


 罠使いのトモエは運動能力も優れているため、活動系イベントで能力を発揮しそうだ。アスレチックでも罠を使って相手のパターンを崩すことで勝利する可能性が僅かながらある。


 とはいえ、メイとトモエの二人だけで何度もガチ勢を相手にするのは精神的にもしんどい。


「うーん……しばらくは賞品とか気にしないで、楽しく参加できるイベントがあれば参加するってスタンスにしよっか」


 勝つために必死になるのも面白いけど、まったりとみんなで遊べるようなイベントがあればそれでも良い。


「わたくし達でイベントを企画するというのはどうでしょうか?」

「えー準備とかするのめんどくさいよー」

「Meたち以外に参加者がいるかも分からないぞ」

「あはは、企画したけど誰も来なかったなんて悲しいもんね」


 とはいえ、一人で企画しているわけではないから、最悪この四人でやれば良い。

 それを気にしなければ、セーラの提案はメイ的にはありだ。

 ただし大きな懸念点がある。


「ソルテの言う通り、準備は確かにめんどくさいよね」


 イベント運営なんて学園祭でクラスの展示を手伝ったことがあるくらいだ。ゼロから作り上げるのは簡単では無いだろう。


「確かにその通りですね……やってみたかったのんですが残念でっ……す!」

「甘いっ!」


 キンっと金属が鳴る音が店内に響く。

 二つのフォークがクロスした音だ。


 セーラがメイの前にあるショートケーキのイチゴを奪おうと手を伸ばしてきたのだ。


「いつもとは違う作戦だったのに止められてしまいました」

「視線で分かったから」


 いつもなら食べかけの部分を狙ってくるセーラが、敢えて手つかずのイチゴを狙ったのだが、僅かな視線の違いをメイは見破っていた。


「というか、自分が食べ終わってからの攻撃は卑怯でしょ」

「食べるのが遅いメイが悪いのです」

「ぐっ……味わうということすら許されないのか!」


 この争いにトモエとソルティーユが加わり、激しい争いの末にカフェが崩壊……とはならなかった。

 メイがあることを思い付いたからだ。


「そうだ、これがあるから!」

「これ、ですか?」

「うん、特に準備は必要なくて、私たちがいつもやってること」

「参加者がいるか分からないぞ」

「来なかったら来なかったでいつも通りであまり気にならないから」

「ルールはどうするの?」

「そんなん適当で良いじゃん。一番食べ……ううん、『一番奪った人が優勝』とか」


 メイの思い付き。

 それは彼女たちの料理争奪バトルをイベントにすることだった。


 選ばれたお店が危ない。


年末にRTA大会を見てたら思い付いたネタを入れました。


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