プロローグ
狐の嫁入り…誰もが美しいと思うほどの青空から
落とされる人々の恵。
まだ、おばあがいた幼い頃の記憶…
“チア、お狐様には近づいては行かんよ。チアに怖いことが起
こるからね”
優しく、けれどしっかり教えてくれた。
“なんで?おばあ。チアお狐様好きなの。
お狐様のことが好きなチアにお狐様は怖いことしないよ”
お狐様が大好きだった私はおばあがお狐様を嫌いなんだと思
って聞かなかった。
そのまま拗ねておばあが止めるのも聞かずにお狐様が
祀られている森に迷い込んだ。
「どうしよう。帰り方が分からないよ…お狐様助けて!」
チアは心細くて泣き出した。
するとポツポツと優しい雨が降り出す。
けれど空を見上げると綺麗な青い空のままだ。
「……狐の嫁入りだ。」
強い風が吹いて思わず顔を覆う。
「俺を呼んだのはお前か?」
声が聞こえた方を振り返るとふわふわのしっぽと耳をもつ
男の人がいて……
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『お狐様…チアね。綺麗になって、大きくなったらお狐様の
お嫁様になるの。だから絶対に迎えに来てね!』
目の前のお狐様へ無邪気に微笑みかける幼い私…
お狐様は驚いたように目を大きく見開くとふっと微笑んだ
『よかろう…そなたが俺の嫁になるのか。
楽しそうだ』
そう言って私の頭を撫でるお狐様は
とても美しかった。
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