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お味はいかが?

連絡先を交換してから三日が経った。

茜ちゃんとのメッセージのやりとりをして、ミネストローネを作ることになった。

近くまで持って行こうか?と言ったら、なんと茜ちゃんが俺の部屋までくることになった。


「ア、ア、ア、ア、ア、ア、アル。アル、アル」


【あんた落ち着きなさいよ。女の子が部屋に来てごはん食べるだけじゃない。それくらいで動揺してどうするのよ】


「彼女いない歴と年齢がイコールで繋がるこの俺の部屋に女の子がくるんだぞ。これがどれほど凄いことだと・・・」


【だから落ち着きなさいって。まずはあんたがすべきことは何なの?はい、口に出して答える】


「い、ええっ・・・と。しょ、食材の確認」


【はい、それから?】


何度も深く、深く、息を吸って吐いてを繰り返す。

深呼吸する。


「部屋の掃除。そうだ、いつもよりも綺麗にしておかないと」


【少しは落ち着いたわね。まずい料理作ったら好感度が下がるわよ。気合い入れて作りなさい】


「お、おお、おおう・・・」


ミネストローネを作った。

うん、上出来だ。

美味しくできたはずだ。

これなら大丈夫だろう。

茜ちゃんにミネストローネできたらおいでとメッセージを送った。


口から心臓が飛び出してきそうなくらいバクバクしている。


ピンポーン。

あああ、きたきたきたきた。

ついにきた。


「お邪魔します」


「い、いらっしゃい。ど、どうぞ」


人生で初めて女の子が自分の部屋に入った。

たったそれだけの事だと他人からは思われるかもしれない。

だが俺にとっては、とても大きな一歩だ。


「わぁー、片付いてる。部屋綺麗にしてるんだね」


「そ、そうかな・・・?」


「うん。部屋が綺麗って凄く良いことだと思うよ。あたしも見習わないと」


「水野さんの部屋は綺麗なイメージだけどなー」


「あはは。そんなことないよ。散らかってるよー」


【いいわねぇ。これぞ青春って感じね】


アルうるさいぞ・・・。

茜ちゃんに聞こえてないからって喋りやがって。

ちょっと黙ってろよ。


「そうだ、ミネストローネ持ってくるね。あったかいうちに食べようよ」


「おー、楽しみー。わくわく」


めちゃくちゃ可愛い・・・。

なんだよ、この子は・・・。


台所からミネストローネを運んできてテーブルの上に置く。


「わぁー、凄い!!これほんとに大下君が作ったんだよね。すごーい。美味しそう。プロっぽい」


茜ちゃんと俺の分の2人分をお皿に取り分ける。


「食べてみてよ。結構上手くできたと思うんだけど・・・」


口に合わなかったらどうしよう。

自分の料理を人に食べてもらうのがこんなに緊張するなんて・・・。


「いただきます!」


茜ちゃんの口の中に、俺の作ったミネストローネが運ばれていく。


ゴクリッ・・・。

ど、どうなんだろう・・・。

口に合ったかな・・・?


「美味しい!!すごい!!大下君、料理の天才だね!」


よ、よかった・・・。


「はぁー、よかった。実は口に合わなかったらどうしようって心配してたんだ」


「えー、心配するようなレベルじゃないよ。普通に美味しい」


ミネストローネを食べ終わり、食器を台所へと持っていく。


「あっ、いいよ。洗い物あたしがするよ」


「あー、大丈夫!茜ちゃんは、お客さんだから座ってテレビでも見てゆっくりしててよ」


あっ・・・。

しまった・・・!!

茜ちゃんって、つい下の名前で呼んでしまった。


「あっ・・・ごめん。水野さんはテレビでも見てゆっくりしててよ」


「えっ、なんで?茜で大丈夫だよ。あたしも彰君って呼ぶのでもいいかな?」


ありがとう。ありがとう。ありがとう。

本当にありがとう。神様。


【あたしも彰君って呼んでもいいかしら?】


お前はダメだ。

とにかく今は黙ってろ。


「うん、もちろんだよ」


平然を装っているが、テンションは物凄いことになっている。

女の子を下の名前で呼べるほどに親しくなったんだ。

やったぞ、俺はやったんだ・・・。


「あーー!!」


「えっ!?ど、どうしたの?」


「この映画知ってる?マジックソルト」


「いやー、わかんない」


「魔法を使えるようになるマジックソルトっていう魔法の塩を手に入れた少年が、悪い魔法使いと戦うファンタジー映画なんだけど、凄く気になってるんだよー」


これはデートに誘うチャンスだ。

よし・・・。


「へぇー。ファンタジーの映画なんだ。じゃあよかったら今度、一緒に観に行く?」


「いいね、行こうよー。この日曜日どうかな?」


「うん、大丈夫だよ」


それから色々な話をした。

中でも茜ちゃんが一番食いついた話は、やっぱり俺の家に強盗が入ってきたときの話だった。


「それでね、俺が風呂に入ってたら何か物音がするから風呂からあがったらさ、中年の男が部屋の中に金目のものがないか漁ってる光景が目に入ってきたんだよ」


「ええー、やだー。めちゃくちゃ怖い」


「で、俺も風呂から上がってきたばかりだから全裸でしょ。本当に文字通り丸裸でさ、当然、武器も何も持ってないわけ」


「うんうん」


「そしたらさ。・・・泥棒は留守だと思って入ってきてるわけじゃん。俺がいた事にビックリして滑って転んで頭を床に打ち付けて気絶しちゃったわけ」


「えええーー」


「それで急いで警察に通報して来てもらって逮捕されたんだ。もうほんとビックリだよ」


「襲われたりしなくてほんとよかったねー」


この話は俺の鉄板のすべらない話の持ちネタになった。

これは使える。

まあ真実はアルに助けてもらったんだけど。


「あっ、そろそろ帰るね!長いことお邪魔しちゃってごめんね」


「いいよ、いいよ。何時間でもいてよ。またいつでも遊びに来てよ。あっ、送っていこうか?」


「ううん、近いから大丈夫。今日はありがとう。ミネストローネごちそうさまでした」


「うん。じゃあ・・・日曜日・・・また」


「うん、またね」


茜ちゃんが帰った。


【じゃあ・・・日曜日・・・また。あああー、いいわねぇ。青春ねぇ】


「うるせぇ」


アルに茶化されるけど、ニヤニヤが止まらない。

ああ、早く日曜日来ないかなぁ・・・。


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