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短編集

【コミカライズ化作品】貴方は嵌められたのですよ?

 思いついたので書いてみました。

誤字脱字等ございましたら、ご指摘頂けると幸いです。


6/7にご指摘頂いたブライアンのセリフを修正致しました。

またいくつかご指摘頂いたところも修正しております。


日間ランキングに乗りました!

評価やブックマーク、ありがとうございます(^-^)感謝!

「アレクサンドラ、貴様とは婚約破棄させてもらう」


 騒々しいホールが、一瞬で静かになった。

あれだけ騒がしかった卒業パーティーとは思えないほど、今は息遣いすら聞こえない。そして周囲の者達は一斉に同じ方向へ目線を向けている。

目線と言っても、好奇な目線を向ける者、顔を顰めている者、狼狽えている者など、様々だ。

 その様な多種多様な目線の中、私はついに来たか、と呆れた目線を送っていた。


「お前が彼女に仕掛けたいじめの数々、もう我慢ならん」


 私から見たら何言っているの、この馬鹿は?となるのだけれど、それを言うことは許されない。

何故なら彼はこの国の第一王子、ブライアン=マーティン。残念ながら、この場にいる誰よりも地位が高く、楯突けるものは誰もいないのだ。


「ここにいるマリア=バレット伯爵令嬢はお前に虐められている、と言っていた。それが罪の証拠だ。」


 よく言うわ、とさらに私はあきれ返る。第一、もし彼女の話が本当だとしても、第三者の証言や物的証拠無しでどう証明できるのだろうか。いや、証明できるわけが無いでしょう。そんなことすら分からない彼に、私はため息をついた。

 そんな渦中にいるお姉様はあの馬鹿王子に問い詰められて、涙目である。


 え?私?私は誰だって?

私は馬鹿王子に婚約破棄させられている公爵家のアレクサンドラの妹、シェリル=ボルジャーですわ。


 それより、よくもお姉様を散々悲しませましたわね。あの馬鹿王子。

これからどうなるかも知らないで……どん底に落ちてしまえば良いのですわ。


 と私が苛々しながら、姉の婚約者を睨みつけていたその時ーー


「国王陛下がいらっしゃいました。」


 静かなホールに護衛の声が響き渡っていた。



 国王陛下がこの場にいらした途端、あの馬鹿王子は今までに見せたことのない笑顔で、父上!と声をかける。だが、呼ばれた本人である国王陛下は、悲しそうな目で王子を見ていた。


 私からすれば、陛下の様子は当然だと考えていた、何故ならーー


「父上、アレクサンドラとの婚約は破棄させてください」


 陛下の様子など分かっていないのだろうか、王子は嬉々として陛下に進言している。そして嬉々としている王子の姿とは反対に姉は、疲れた顔で陛下に対して礼を取っていた。

 陛下は礼を取っている姉を心配そうな目で見遣った後、婚約破棄を、と喚いている王子に向けてこう言い放つ。


「分かった、アレクサンドラ嬢との婚約破棄を認めよう」


 その言葉を聞いた王子は、隣にいたマリアの手を取り喜んでいた。

だが彼は気づかない。自分が破滅の道に一歩入ってしまったことを。そしてもう抜けられない所まで来ている事を。

 そして手を取っている彼女の目が笑っていない事を。


「ここで国王として宣言する。この国の第一王子ブライアン=マーティンと公爵令嬢のアレクサンドラ=ボルジャーとの婚約を破棄し、その上で第一王子ブライアン=マーティンを廃嫡とする」


 途端に会場がざわめき始める。それもそうだ、いきなり第一王子が廃嫡になるとは誰も思わないだろう。

壇上に立っている王子も、信じられない……と言う目で、父親である陛下を見ている。

 私は何故そんな事も分からないのか、と思うけれども、分からないから廃嫡になっているのだ。仕方がない。それにもう王子ではないのなら、呼び方を変えないといけないわ。


「何故ですか?!何故私が廃嫡などと?」


 悲しいかな、親の思いは子に伝わっていないようだ。無礼なのは承知の上で、陛下の気持ちを考えると複雑である。


「お前には、とことん愛想がつきた。何度も儂らもアレクサンドラ嬢もお前に王としての自覚を持って欲しくて、苦言を呈していたはずだ」

「しかし、父上!最近は私のことを認めて下さっていたのではないですか?!」


 そう、最近の国王陛下達はブライアンに注意するという事をしてこなかったのである。その事が彼を増長させていた一つの原因であった。


「まさか。学園に入学してからは、婚約者の有無関係なく女性との関係を持ったお前に期待などしておらん。期待する者にしか儂らは声を掛けん」


 呆然とするブライアン、それはつまり王子として期待されていなかったという事になる。


「もしお前がアレクサンドラ嬢の話を聞き、己の非を認めたなら王太子に、と考えていた。だが、最後に選んだ道はアレクサンドラ嬢との婚約破棄だ。お前の道を示してくれた最後の光さえも……切り捨てるとは」


 私から言わせれば、どれだけ頭の中がお花畑なのでしょう、お馬鹿だからしょうがないわね。と思う所なのだが。国王陛下の最後の慈悲にも気づかずに、愛と称した浮気に突っ走った男なんて要らないわよね、お姉様。

 そう思いお姉様に目線を向けると、お姉様はもう立ち直っているみたい。静かに陛下のお言葉を聞いていた。


「しかし…!アレクサンドラはこのマリアを虐めた悪女です!」


 どうもお姉様を悪者にしたいらしく、みっともなくワーワー騒いでいる。本当にこれが第一王子だったのかしら?王族として教育されていないのだろうか、と思うくらい品がないように見える。

 それと、元婚約者だとはいえ婚約解消したお姉様を呼び捨てで呼ぶなんて、貴族としてあるまじき行為である。私はその醜悪な姿を晒しているブライアンに眉を寄せる。

 私と同じことを考えられたのだろう、陛下もため息をついておっしゃる。


「元婚約者とはいえ、婚約解消したアレクサンドラ嬢を呼び捨てで呼ぶとは、品位の欠片もないな。では聞こう。マリア嬢、君は本当にアレクサンドラ嬢に虐められたのか?発言の許可する。」


 ブライアンは縋るように後ろにいたマリア嬢の顔を見つめている。まるで彼女だけは自分の味方になるだろうという期待を込めて。


 しかし彼女はブライアンが思っている未来とは別の未来を描き始める。


「発言のお許し、ありがとうございます。アレクサンドラ様に虐められたという記憶はございません。」

 

 その言葉のあと周囲を取り囲んでいる貴族達が、目を見張った。当事者であろうマリア嬢が虐められた事を否定したのである。

 当事者が虐めを否定するなんて驚くわよね、と私は悠長に考えていた。ここまで来れば、描いたシナリオ通りである。


「マリア、嘘だろ?アレクサンドラに虐められていたんだろう?」


 ブライアンが彼女に詰め寄るも、彼女は首を振る。


「虐めはございましたが、アレクサンドラ様は関係ございません。主犯の方々のお名前は、ここでは控えさせていただきます。」


 最後まで信じていたマリアにまで裏切られたブライアン。その様子を見て私はざまあみろ、とはしたなくとも思ってしまった。多分お姉様も同じ事を思っているに違いない。


「という事だ。マリア嬢、後ほど詳しく話は聞かせてもらうが良いかね?」

「はい、お手間をおかけして申し訳ございません国王陛下」


 口を開いたまま唖然としているブライアンを放置したまま、話は進んでいく。そして一旦卒業パーティーをお開きにする、と陛下より申し出があったため、解散することとなった。




**


 そのパーティーから数ヶ月、私と姉の目の前にはマリア嬢がいた。3人でお茶会をしていたのだ。あの騒ぎの後、マリア嬢と姉は和解し、仲良く友人として付き合っているという噂が流れたが、本当のことだ。

 事実、その噂は私が流したのだから。むしろ仲違いなど昔からしていないのだが。


 今3人で話していたのは、廃嫡となったブライアンの件だ。

 マリア嬢はパーティーの後、陛下に全てを証言した。その証言内容は、虐めの主犯はお姉様に対抗する派閥の方々だ、という事。そしてブライアンには言い寄られていて、自身の身分上断る事が出来なかった事を粛々と話したそうだ。

 結局マリア嬢の話によりブライアンは、陛下の弟である侯爵様の元で、扱かれて暮らしているらしい。執事見習いをやっているようだ。

 元々、甘やかされて育った王子である。厳しく扱かれて根を上げているらしい。根を上げたらまた罵声や怒鳴り声が返ってくるため王子にとっては最悪の環境である。


 そして王太子の席には第二王子が着く事になり、これから婚約者を決めるようだ。第二王子はブライアンを反面教師にしたためか、浮名がない。陛下達も早急にと婚約者をつける事もなく、ある程度自由にさせていたらしい。それでもブライアンより優秀なのだ。これで良かったのかもしれない。


「ところで、マリア様には元婚約者の事で本当にご迷惑をかけてしまいましたね。」


 姉が彼女に謝罪する。心優しい姉のことだ、何度謝っても謝り足りないのだろう。


「いいえ、アレクサンドラ様。私は以前よりアレクサンドラ様には幸せになって頂きたかったのです。こんな役回りで宜しければ、何度でもさせて頂きますわ!」


 彼女は令嬢らしくなく、力拳を作って私たちに見せていた。そんな彼女が可愛らしくてお姉様と目を合わせて私たちは笑う。


「お姉様に何度もこのような目に合っては欲しくないですから、もうこのような事が無い事を祈りましょう」

「確かに、それもそうですね、シェリル様」


 マリア嬢もケラケラと笑っている。お姉様もブライアンと婚約していた時とは打って変わって明るくなっていた。私はお姉様とマリア嬢に囲まれて幸せを感じながら、笑顔で談話していた。


 そう、女性を敵に回すと怖いのですよ?


 もし今目の前にブライアンが居たら言ってあげたい。


 姉の幸せを蔑ろにする貴方は嵌められたのですよ? とね。

 拙作を読んで頂き、ありがとうございました!

この作品は短編で完結です。一応お姉ちゃん大好きな妹の話なのでシスコンシリーズに入れておきます。

シスコンシリーズの他作品とは、全く別の世界のお話になります。


次の作品や執筆中の作品に活かせるので、評価や感想等を頂けると嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] お前には、とことん愛想がついた。 →愛想がつきた だと思います
[一言] 誤字報告です。 「国王陛下が参りました。」 参るは謙譲語なので、身分や立場の低い人が高い人の所へ行く時に使うものです。 この場合国王陛下が国王より身分の低い人の所へ行くので尊敬語のいらっしゃ…
[気になる点] >「ここにいるマリア=バレット伯爵令嬢がお前を虐めていた、と言っている。それが罪の証拠だ。」 アレクサンドラ【を】虐めていた?
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