四の幕
およそ二ヶ月間が空きました……。もうしわけありません……。
誰がなんと言おうと、これは天罰だろう。
「教えてほしいかな? なんで僕がここにいるのか」
だけど、挫けるつもりも、諦める気も、ない。
「いらないよ、ドクターイクス。わたしは、あなたが敵だと理解してるから」
「おや冷たい。ま、言うことを効かない以上、強攻策に出させてもらうよ」
「……彼女達に、何をしたの」
「従順になってもらった。それ以上は言う必要がないかな」
男はそう言ってニタリと笑った。
「さあ、全員、目の前の連中を攻撃しろ」
……
「いくよ、ジュリ!」
「わかってるさ、ディア!」
ボクとディアは同じタイミングで駆け出した。
目の前の男の素性は聞いている。
ドクターイクス。
ゲノム・ディストラクションの研究を広明から引き継いだ男。
そして、ボクの死体やディアでおぞましい実験を行っていた男。
つまり、ボクたちの敵だ。
立ちふさがる相手は彼を除いて三人。
シャラナ、バルハ、フェル。
「絶対、開放するから……!」
目の前のこの男を許せない。
どんな手段だかわからないけど、ボクの、ボク達の友達を操って、ボク達と戦わせようとする、そのやり方が許せない。
「はっ!」
短く気合を吐き、刀を振るう。
真っ直ぐにドクターイクスに向けての一閃。
だけど、シャラナがそれを防ぎにかかる。
雷光が放たれた。
「くっ!」
ダメだ、この攻撃は吸収できない。
怪獣細胞由来のエネルギーなら簡単に吸収できるけど、ここまで大きい細胞由来じゃないエネルギーは、大きなダメージになってしまう。
屋外にいないと使えない能力だけど、依存するのは自然の力。
シャラナの攻撃は、ボク達のそれとは比べ物にならない威力だった。
今は攻撃を避けつつ、隙をうかがうしかない。
だけど、敵はそんな悠長には構えさせてくれない。
フェル、バルハが一気に迫ってくる。ボクの得物が刀である以上、本気で攻撃に出れば、二人を傷つけてしまう。
慎重に立ち回らないと……っ!
ぞわりと肌の粟立つ感覚。咄嗟に回避する。
閃光がボクの肩を掠めていった。
ジュラとよく似た少女の放ったものだ。
「なに、今の……!」
ボク達の熱線によく似た、しかし、決定的に違うその光線。
撃った少女は表情ひとつ変えずに、容赦のない追撃を放っていく。
「くっ――!」
四人からの集中砲火。
回避し続けるのにも、限界がある。
(このまま、じゃ――)
倒される。
最悪の結末が脳裏をよぎる。
それが現実になる瞬間――
「――お姉ちゃん!」
青い光がボクの目の前に炸裂した。
ジュラがこちらに向けて手を掲げている。
「ジュラ!」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「う、うん。ありがとう、ジュラ」
「ん。わたしも、戦う」
「でも、ジュラは」
「もう、こないだのダメージは残ってないから」
「ジュラ……」
「……許せないのは、許さないのは、わたしも一緒だから」
確かな怒りを感じさせるその声とともに、ジュラが跳躍した。
ああ、そうか。
「いつまでも小さいわけじゃ、ないよね」
あの子も成長している。
大事な誰かのために、必死に戦えるくらい、成長しているのだ。
……出来れば、成長を見守ってあげたかったな。
「いつまでのんびりしてる気? 妹の成長に感動するのは後回しにしよ」
「ゼロ……」
「わたしも随分とムカついているよ。……多分、眠っている由人も」
「ヨシトも……?」
「うん。まったく、意識なんてはっきりしていないだろうにね?」
「そう……そうなんだ」
「そうなのよ。それじゃ、弟の分も暴れてあげるわ!」
言うが速いか、ゼロが駆け出す。
「……うん。ボクも、ヨシトの分まで!」
そして、ボクも駆け出す。
取り戻すために。
怒ってくれているヨシトのために。
「全力でいくよ!」
刀を構えなおす。
全身から燐光が立ち上る。
さあ――
――覚悟して?
出来るだけ早く更新できるよう、心がけてまいります




