三の幕
ストックが切れました。
また更新ペースが落ちます。
轟々と雷と風が荒れ狂い、シンカへと襲いかかる。
だが、それをシンカは紫の光線だけで迎え撃つ。
凄まじい音があたりに鳴り響く。
「どけっ! 小娘!」
「…………」
シャラナの怒声にも表情を変えず、光線を弾き続ける。
(埒があかんのう……)
互角だった。
否、それ以上かもしれない。
相手の力量が全く読めない。
今が全力なのか、それとも手加減しているのか。
いつまで保つのか、どれくらい集中しているのか。
そういった要素が全くこの少女から読み取れない。
故に焦る。
何も読み取れず、ただ淡々と攻撃してくる様が、まるで死人のような生気のない瞳が、ひたすら不気味に、シャラナの瞳に映った。
刹那、シンカが距離を詰める。
前傾姿勢で地面を蹴ってきたのだ。
その右手に光線が瞬き、
光が、解き放たれた。
「っ!」
咄嗟の防御。
シャラナは、限界の出力で雷光を放ち、相殺させる。
が、
相手の左手が瞬いた。
もう一条の光が放たれたのだ。
耐えきれず、シャラナが弾き飛ばされる。
「くっ、うぅ!」
左手を盾にした。ボロボロだ。
(せめて、二人を助けだす!)
「甘いな、竜王」
男の声と同時に、背中に凶悪な灼熱感。
「ぎっ、ぁああああああああああああああああああああああああああっ!」
「手駒がこいつで打ち止めなわけ無いでしょう?」
白銀色の短めの髪のジュリに似た少女が、シャラナの背にミサイルを撃ち込んでいた。
黒と金の髪のルモとよく似た少女が、赤い光線を放っていた。
(なんて、ことじゃ……)
シャラナは、目の前の男の業の深さに気が付いた。
「貴様…………どれだけの命を…………」
「造っただけだよ? なに、犠牲にしたのは君達の友人の黒髪の子と、そっちに逃げた赤髪だけだ。それ以外には手を加えても危害を加えてもない。迷惑じゃないでしょ?」
「ふざけるな! 貴様のそれは、唯の生命への冒涜に過ぎん! 人の生命への干渉を! 神の領域に立ち入るのを! 一度は許し、二度目も許した! だが、それ以上を許した覚えはない!」
怒気を発し、シャラナがボロボロの体で駆ける。
「貴様にあるのは己の欲望のみ! 故に、妾が情で流されることもないと知れ!」
飄々と男は肩をすくめる。
そしてその視線に煩わしげな光を浮かべた。
「そんなつもり、毛頭ないよ。勿論まかり通すのさ。力で無理やりね。――潰せ、シンカ、キリ、ザナ」
「――舐めるなああああああああああああ!」
爆音と閃光と衝撃。
万雷が男にむけ叩きつけられる。
「……やっぱり甘い」
刹那、光線二条とミサイル、火球が万雷を迎え撃つ。
「なっ……!」
そして、翼を閃かせ、一撃が彼女の腹を強かに撃ち抜いた。
「が、――」
シャラナの体はそのまま吹き飛び、地面に叩きつけられた。
「っ、か、なん、で……」
彼女の見上げた視線の先。
バルハとフェルが立っていた。
「ああ、君は知らなかったね?」
男は手に隠し持っていたそれを見せる。
金属製の、小さな装置。
「この装置は、ある程度弱った怪獣を思うがままに操れるんだ」
「な、に…………?」
そんなものがあったのか。
では、まさか、
あの二人だけではなく――
「…………二人だけでなく、その者共も操っておるのか……!」
男の表情に嘲りと愉悦が浮かぶ。
「まあ、そういうことだねぇ」
「貴様! どこまで生命を――」
「君にも奴隷になってもらうよ。歯向かう以上、無理やり叩き潰すよりも、都合良く扱えるようにしたほうが、合理的だしね」
瞬間、装置が不快な振動音を発し――
「従え、シャラナ」
「ぐっ、ぁああああああああああああああああああ!」
シャラナの思考が書き換えられていく。
(イヤだ、イヤだ、妾は、妾は……妾は、なんだ? なんだ? 妾は奴隷? 奴隷。奴隷だ。誰の? ドクターイクスの、奴隷だ)
「さて……君はなんだい? シャラナ」
「貴方様の奴隷です。何なりとご命令を」
「……そう、それでいい」
男――ドクターイクスは、宣言した。
「――始めよう。今から、この町を全て奪い取る」




