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怪獣少女のいるところ  作者: 七志野代人
第四章 今に目覚める
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三の幕

 ストックが切れました。

 また更新ペースが落ちます。

 轟々と雷と風が荒れ狂い、シンカへと襲いかかる。

 だが、それをシンカは紫の光線だけで迎え撃つ。

 凄まじい音があたりに鳴り響く。

「どけっ! 小娘!」

「…………」

 シャラナの怒声にも表情を変えず、光線を弾き続ける。

(埒があかんのう……)

 互角だった。

 否、それ以上かもしれない。

 相手の力量が全く読めない。

 今が全力なのか、それとも手加減しているのか。

 いつまで保つのか、どれくらい集中しているのか。

 そういった要素が全くこの少女から読み取れない。

 故に焦る。

 何も読み取れず、ただ淡々と攻撃してくる様が、まるで死人のような生気のない瞳が、ひたすら不気味に、シャラナの瞳に映った。

 刹那、シンカが距離を詰める。

 前傾姿勢で地面を蹴ってきたのだ。

 その右手に光線が瞬き、


 光が、解き放たれた。


「っ!」

 咄嗟の防御。

 シャラナは、限界の出力で雷光を放ち、相殺させる。

 が、

 相手の左手が瞬いた。

 もう一条の光が放たれたのだ。

 耐えきれず、シャラナが弾き飛ばされる。

「くっ、うぅ!」

 左手を盾にした。ボロボロだ。

(せめて、二人を助けだす!)

「甘いな、竜王」

 男の声と同時に、背中に凶悪な灼熱感。

「ぎっ、ぁああああああああああああああああああああああああああっ!」

「手駒がこいつで打ち止めなわけ無いでしょう?」

 白銀色の短めの髪のジュリに似た少女が、シャラナの背にミサイルを撃ち込んでいた。

 黒と金の髪のルモとよく似た少女が、赤い光線を放っていた。

(なんて、ことじゃ……)

 シャラナは、目の前の男の業の深さに気が付いた。

「貴様…………どれだけの命を…………」

造っただけだよ・・・・・・・? なに、犠牲にしたのは君達の友人の黒髪の子と、そっちに逃げた赤髪だけだ。それ以外には手を加えても危害を加えてもない。迷惑じゃないでしょ?」

「ふざけるな! 貴様のそれは、唯の生命への冒涜に過ぎん! 人の生命への干渉を! 神の領域に立ち入るのを! 一度は許し、二度目も許した! だが、それ以上を許した覚えはない!」

 怒気を発し、シャラナがボロボロの体で駆ける。

「貴様にあるのは己の欲望のみ! 故に、妾が情で流されることもないと知れ!」

 飄々と男は肩をすくめる。

 そしてその視線に煩わしげな光を浮かべた。

「そんなつもり、毛頭ないよ。勿論まかり通すのさ。力で無理やりね。――潰せ、シンカ、キリ、ザナ」

「――舐めるなああああああああああああ!」

 

 爆音と閃光と衝撃。

 万雷が男にむけ叩きつけられる。


「……やっぱり甘い」

 刹那、光線二条とミサイル、火球が万雷を迎え撃つ。

「なっ……!」

 そして、翼を閃かせ、一撃が彼女の腹を強かに撃ち抜いた。

「が、――」

 シャラナの体はそのまま吹き飛び、地面に叩きつけられた。

「っ、か、なん、で……」

 彼女の見上げた視線の先。

 バルハとフェルが立っていた。

「ああ、君は知らなかったね?」

 男は手に隠し持っていたそれ・・を見せる。

 金属製の、小さな装置。

「この装置は、ある程度弱った怪獣を思うがままに操れるんだ」

「な、に…………?」

 そんなものがあったのか。

 では、まさか、

 あの二人だけではなく――

「…………二人だけでなく、その者共も操っておるのか……!」

 男の表情に嘲りと愉悦が浮かぶ。

「まあ、そういうことだねぇ」

「貴様! どこまで生命を――」

「君にも奴隷になってもらうよ。歯向かう以上、無理やり叩き潰すよりも、都合良く扱えるようにしたほうが、合理的だしね」

 瞬間、装置が不快な振動音を発し――

「従え、シャラナ」

「ぐっ、ぁああああああああああああああああああ!」

 シャラナの思考が書き換えられていく。

(イヤだ、イヤだ、妾は、妾は……妾は、なんだ? なんだ? 妾は奴隷? 奴隷。奴隷だ。誰の? ドクターイクスの、奴隷だ)

「さて……君はなんだい? シャラナ」

「貴方様の奴隷です。何なりとご命令を」

「……そう、それでいい」

 男――ドクターイクスは、宣言した。


「――始めよう。今から、この町を全て奪い取る」

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