そして始まる。
会話メインの説明回です。
うん、ルモさん。
これだけは言わせてもらおう。
「どこをどう考えたらそうなるんですかっ!?」
ジュラが俺になついているらしい。なら一緒に住めば?
……いやいや、どうやったらそうなるの。
一般人かつ、天才でもなけりゃ、ましてや怪獣でもない俺は、その思考についていけませんよ?
「うーんと、ジュラちゃんとか、わたしなんかが怪獣だというのは把握してますよね?」
「そりゃあ……この町、怪獣しか居ないでしょう?」
「その通りです。まあ、全員が女性――それも、大半が少女の姿です。そのなかでも、ジュラちゃんは幼く、そして孤立しがちなのですよ」
「そうなんですか?」
「はい……。わたしも一緒にいる時間は長いのです。おかげで、手放しで安心できる相手と認識されていますが、それは、彼女が警戒を解けるよう、わたしも必死だったからです」
「……なるほど。ちゃんと向き合って時間をかければ、ジュラは心を開いてくれるワケですが、それはその当人に対してであって、それは他の人に適用されないわけですか」
「あたりまえ、なんですけどね。ただ、普通なら、警戒を解く基準を甘くするとか、そういう効果がちょっとくらいあるんですけど……ジュラちゃんは、警戒を解いた人以外には、同じだけ努力しない限り、安心して接することはありません
「ルモさんの口振りからすると、警戒も厳しいみたいですしね」
「……わたし並みの努力は、推奨できませんね。わたしだって粘り勝ったようなものですし、根気がいる、なんてレベルじゃあないです」
確かに、それだけのレベルの苦労を見ず知らずの他人――と言うわけでもないだろうが、あまり知らない人相手に施そうとはしないだろう。
俺だってイヤだ。だから、ルモさんがそこまで気にかける理由がわからない。
「ルモさんは、なんでジュラを苦労してまで気にかけるんですか?」
「……そうですね。わたしがこの町の運営を任されている、というのも大きな理由の一つです。ただ、個人的に、彼女のお姉さんに仲良くしてもらいましたから、その恩返しもあります。後は……可愛いから、ですかね」
「はあ……。ところで、俺がジュラと一緒に暮らすって話、どっから出てくるんですか?」
「わたしでも随分と時間をかけてジュラちゃんと仲良くなったのに、あなたは一瞬で仲良くなったでしょう? あなたなら、ジュラちゃんと皆の架け橋になれるかもしれないですし、それに――わたしも、そろそろ、ジュラちゃんに付きっきり、というわけにもいかないので」
「……そうなると、仕方ない、ですかね……。でも、俺がジュラに害をなさない、とも考えられないでしょう?」
「ふふっ、大丈夫ですよ」
「何でです?」
「そんなことしたら、あなた、消し炭にされちゃいますから」
「………………なるほど」
「安心してください。衣食住については、この国がしっかり面倒を見てくれますし、それに、あなたへのなつきようなら、消し炭にされることもまずないでしょう」
「……安心、出来るのか? 微妙すぎる……」
「わたし達は一つのアパートで生活してます。幸い、部屋はいろいろと余ってるので、お好きなものを使えますよ」
「……わかりました。乗り掛かったつもりもない船ですけど、一緒に暮らさせていただきます。確かに、こんな子を一人にするのは不安ですしね」
結局、俺はこの話を引き受けた。
いや、実際ほっとけないし、ここまで話を聞かせてもらったし。
「っと、すいません。場所とかの案内、頼んでもいいですか? 後、ジュラがくっついたまんま寝てるんですけど、普通におぶったりして良いですか?」
怪獣とはいえ女の子だし、ジュラの運搬方法は一応は確認をとる。
「ええ、案内役を引き受けます。ジュラちゃんは、あなたが言うように、おぶっていっていいですよ」
そう言って、ジュラを俺から引き剥がした。
「こうして寝てると、なかなか起きないんですよ」
その内に、俺がさっさとジュラをおぶった。
本当に起きない。
よーく寝てらっしゃる。
「しばらく――といっても、五分十分くらいで着きますけど、少し歩きます」
……
いろいろと聞きながら歩くこと五分。
アパートに着いた。
「ここでこれから生活してもらいます。よろしくお願いしますね」
そう言って、ルモさんは笑った。
ちょっと分かりづらいところも見受けられるので、次は簡単な人物紹介になります。