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怪獣少女のいるところ  作者: 七志野代人
第四章 今に目覚める
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後悔、決意

 いつも否定されてきた。

 誰からも、何からも、否定されていた。

「危険なんですよ、だから拘束しなければいけない」

「君の存在価値は細胞の情報源というだけだ……」

「きっと芹沢の息子も、君のことなんて覚えてないだろうねぇ?」

 いつも何かを殺していた。

「アアア……」

 赤い獣。

「君の細胞から作られた、子供みたいなものなのに、ためらいなく殺すね?」

 そう言われても、何も感じなくなっていた。

 自分の掌で、熱が失せていく感覚にも慣れてしまっていた。

 ああ、

 結局、わたしは、


 ……


「由人君……」

 少女の姿になってしまった彼を抱える。

 思い出してくれた。

「セリザワを……どうするの?」

「……ジュラ、だっけ? 彼の住んでたとことか、彼の面倒を見てた人の居るところ、知ってる?」

「?」

「由人君、そこに連れてくから」

 一緒に、彼女を抱える。

「ごめんなさい、あなたに、最低のことをしたわ」

「……今は、セリザワを運ぶのが先」

「うん。……ありがとう」

「……ん」


 ……


「おや、随分遅かったね――誰だい? 君は?」

 わたしを見て、ジュラとよく似た女性が首をかしげた。

「……お姉ちゃん」

「ジュラ? その服、どうしたの? その人は?」

「…………今は、セリザワを休ませたい」

「え? ヨシト? そういえば、彼はどこだい?」

 ……ああ、今は由人君は、女の子の姿になってるんだった。

「この子が由人君だよ」

「え?」

「お姉ちゃん、本当だから、早くセリザワを休ませないと」

「う、うん」


 ……


「なにこれ、ひどい熱じゃないか……!」

「由人君は、わたしたちのために、頑張りすぎ……なんだよ……」

「! 待って、あなたも……!」

「わたしなんてどうでも良い! ……今は……由人君を…………」

「…………うん」


 ……


 なし崩しに、由人君の家にいることになった。

「いいの……?」

「信用できないけど、目は離せないし」

「……うん。そうだね……」

 彼女が本気を出せば、今のわたしなんて歯が立つわけがない。

 ジュラも完全に回復した。

 わたしも調子が戻りつつある。

 でも、まだ由人君は目を覚まさない。

 何故だろう。

 いや、答えは分かりきっている。

 消耗が激しすぎたのだ。あの日、例えるなら、彼は体の中身をぐちゃぐちゃにされた上、それを焼かれたようなものだった。

 生きていられること自体、奇跡みたいなものだった。

 そう、結局は、

「……わたしの、せいだよね……」

 彼は確かにわたしを救ってくれた。

 でも、その替わりに彼は――


 ……


「ちょっ、由人が目を覚まさない!?」

「一大事じゃないか!」

「大丈夫、なんでしょうか……?」

「とりあえず、芹沢さんの状態は?」

「……知らぬまに、なにやら大事になっておるの」

 クイン、フェル、バルハ、ルモ、シャラナ。

 彼と関わりのある少女型怪獣が集まっていた。

 もう一週間経った。

 それでも、彼は目覚めない。

 寝かされたままの彼の頭を、そっと撫でる。

 いつ起きるのだろうか? それとも、もう二度と……

「……ん」

「あっ……!」

 小さい声を漏らし、ゆっくりと彼が目を覚ます。

「んー、おはよー……あふ、ねむぅ……」

「よ、由人君!?」

「ヨシト!」

「セリザワ!」

 思わず名前を呼ぶ。

 けど、

「んぅ……? わたし、由人じゃないよ?」

「え?」

「だって、由人はまだ寝てるもん」

 彼――彼女はそれを否定した。

「わたしはゼロ! 由人のお姉ちゃんみたいなものだよ!」

「……由人君、じゃないの……?」

「そうだよ」

 また、目の前が真っ暗になった気がした。

「ごめん……ごめんね……由人君…………」

 わたしのせいだ。

 このまま、彼は目を覚まさないかもしれない。

「ごめんなさい……ごめんなさい……………………」

 ああ、なんで。

 彼は悪くないのに。

「ディア」

「……ジュリ……」

 彼女は真っ直ぐにわたしを見つめていた。

「勝手に諦めないで。ヨシトは目を覚ます。絶対に。だから、あなたも下を向かないで」

 強い言葉。

「…………」

「まだ、彼に責められたわけでもないだろう? なら、今は前を向いて、彼を目覚めさせる方法を考えよう」

 信じている言葉。

「…………うん」

 そうだ。

 泣いてる暇なんてない。

 彼を元に戻す方法を、目覚めさせる方法を、

「絶対、見つけよう――」

 ゼロの目覚める少し前のお話です。

 ディアは主人公がとっとと起きないせいで、ネガに……。

 起きろよ主人公w

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