その人は頼った。
「…………落ち、着く」
女の子――ジュラに抱きつかれたまま、三分経過。
いやもう、ジュラめっちゃ眠そうなんだけど!?
マズい、非常にマズいぞ。
主に下半身とか理性的な意味で!
「あの、そろそろ、離れて……」
「………………………………………………くぅ」
「………………は?」
寝やがったあああああああああああっ!
どうしろと!? いや本格的にどうしようもねえ!
くそっ、自分の家の場所すらわかんねえってのに、こんな女の子連れて行動とか、マジで無理だ。
おまけにしっかり抱きついたままなもんだから、俺も動けない。
あああ、気持ち良さそうに頬擦りしながら「お姉ちゃん…………」とか寝言言ってるし!
ちょっ、誰か、誰か出てきてー!
この状況を打開してー!
俺じゃどうしようもないんですって!
が、待てども待てども人は来ない。
……えと、ガチで誰か出てきてくれね!?
俺、このまんまこの子の体重支えて立ってるの、つらいし絵面がアレだしイヤなんですけど!
…………先に言っておこう。絵面云々言ったが、俺はロリコンじゃない。
決して、こんな小学六年生みたいな子をどうこうするつもりは全くありません!
下半身とか理性はどうしようもないんですって!
だって健全な高校生なんだもん!
つーかいい加減誰か来てくんねーかなあ!?
もう怪獣だろうが何だろうがどうでもよくなってきたわ!
「すいませーん! ちょっと、誰か来てくださーい! 俺、新しい住民なんですけどー!」
なりふり構わず、大声を出す。
うん、まあ、案内役いるっぽかったけど、出てこねえし。
あ、この子がそうだとして、今現在は寝ちゃって行動不能だし、ノーカウントだ。代理を要求させてもらうが、文句を言われる筋合いは無い。
今度はさすがに誰か出てきた。
出てきたのは、茶髪のお姉さん、そう、年上っぽい女性である。
全体的に柔らかい雰囲気と、綺麗な翠の瞳。
そして巨乳。圧倒的巨乳。
あれだ、疲れてるときに抱きしめてもらったりとか、甘えたくなるようなって表現が一番か。
癒してほしいお姉さん系美人がこっちに来た。
「うふふ、ごめんなさいね? この子が、ちゃんとあなたを連れてこれるかどうか、見てみたくて」
「あなたがこの子の保護者ですか?」
「ええ。ジュラちゃんの保護者、ルモと申します。芹沢由人さんですね?」
「はい」
「ようこそ、大怪獣町へ。
わたしたちは、あなたを歓迎します」
そう言って、ルモさんはにっこりと笑った。
惚れそうだ。
「本当は、わたしが迎えにいく予定だったんですけど、ジュラちゃんがどうしても行きたいって言い出しましてね? それで、成長を見守る意味で、一人で行かせたんですが……」
「寝ちゃいましたよ」
「ええ、わたしも驚いてます。まさか、ジュラちゃんが、初めてあった人に、こんなになつくなんて思ってませんでしたから」
くすりとルモさんは笑う。
「安心してるんですね、あなたに触れて。
やっぱり、あなたはこの町に来るべきして来た、ということになるのでしょうか?」
すいません、話が飛んだ気がします。
「折角ですし、ジュラちゃんと一緒に住む、と言うのはどうでしょう?」
さらに飛んだ。って――
「――はい?」
今、さらりと、とんでもないこと言わなかったか?