導き出される希望
さて、再び超展開☆
いつの間にか持っていた刀を握りしめ、ジュリは深呼吸をしている。
緊張しているようだ。
(そう言えば、その刀、どっから持ってきたんだ?)
(これは名刀<撃>。まあ、ボクたちに呼応して現れるから、一応一族専用の刀。で、望めば手に収まってるから、どこにあるかは分からないんだよ)
(ふむ、変わった刀だな)
(ボクの能力の制御にも必要だから、割りと重要なんだよ)
(ふうん……)
……能力。
そう言えば。
(俺のエネルギー吸収と放射も、もともとお前の能力だったりするのか?)
(ご名答。まあ、加減が出来ないから、刀で制御してるけど)
成る程。
(それじゃ、ルモのところに案内してくれないかな?)
(ああ。分かってる)
場所はこの間教えてもらったし、大丈夫だ。
(……お別れ、ジュラが納得してくれれば良いんだけど)
(……ああ)
……
コンコン。
ジュリがドアを叩いた。
「どちら様ですか?」
「ルモ、ボクだよ」
「え……、っ」
インターホンの向こう側で、驚き、慌てているようだ。
ガチャリ。
ドアが開き、ルモさんが、驚いたようにジュリを見つめる。
「本当に、ジュリなのですね……?」
「そうだよ。久し振りだね、ルモ」
「ジュリっ……――」
ルモさんがジュリに抱きつく。
「……ごめん、ルモ。一人で大変だったろう?」
「見くびらないでください……っ、わたしももう大人です……っ」
……いつもお姉さん然としているルモさんが、ここまで感情を表に出しているのを、初めて見た。
それくらい、仲が良かったのだろう。
「その服は……」
「ん、ヨシトから借りたんだ。変じゃない、よね?」
「ええ、男物なのに、似合ってます」
「良かった。ルモに変とか言われたら、ちょっと傷つくから」
「ふふっ、……変わってませんね」
「……うん。ボクは変わらないよ」
「立ち話って言うのも難ですし、なかに上がってください」
「……ああ」
ルモさんの家に上がる。
……しっかり掃除や手入れが行き届いている。
俺も見習おう。
リビングに入り、ルモさんに促されるまま、ソファーに座った。
「……用件は分かってます。ジュラちゃんにお別れをいうんでしょう? その体は、芹沢君から借りたものでしょうし」
「あははっ、それだけじゃない。ちゃんと親友にも、お別れくらい言いたいじゃない」
「……ジュリ」
「ごめんね。僕一人で、勝手に色々決めちゃって。迷惑ばかりかけちゃったよね」
「……いえ。大丈夫。けれど、どうしようもないんですか? もう一度、皆でいられる方法は……」
ルモさんの言葉に、俺はハッとした。
そうだ。
俺が諦めれば、ジュリは皆と一緒に――
「あるにはあるよ。でも却下だ」
「何でですか!?」
「……一つ目は、ボクが今の状態で生活し続けること。ただ、これは本来の設定じゃないから、負荷でいずれ絶対に障害が出る。それに、ボクがわざわざ死んで、ヨシトを助けた意味がないだろう?」
「一つ目、と言うことは、二つ目が有るのですね?」
「うん。細胞を急激に活性化させて、ボクの分の肉体も作る」
「その手なら」
「ヨシトへの負荷が大きすぎる。普通なら怪獣細胞でもエネルギー切れで、細胞が死滅しちゃうだろうし、出来たとして、精神を移動させられるかどうかも未確定。不安要素が大きすぎて、ほとんど賭けになる。最悪、ボクもヨシトも死んでおしまいだ」
「それは……、無謀ですね」
確かに話で聞いただけじゃ、無謀でしかないな。
けど、
(……なら、勝率をあげればいい)
「ヨシト……?」
(お前の体じゃ元から負荷が大きい。なら、俺に体を戻しておけば、可能性はあるだろ?)
「ダメだ。それじゃあ、エネルギー切れで細胞が死滅する」
(なら、ジュラの熱線とか、クインの光線でエネルギーを補給すればいい)
「本気で言ってるのかい?」
(本気じゃなきゃ、こんなことを言うかよ)
精神内で、俺とジュリの視線がぶつかり合う。
「……芹沢君が、なにか提案したんですね?」
「……うん」
「その提案は、ダメなのですか?」
「……最初に言った問題点はほぼクリアしてる。けれど、意識の問題や、安全かどうかは、完全に分からないんだ」
(だとしても、試す価値はあるだろ!?)
「最悪、君が死ぬんだぞ、ヨシト!」
(それでもだ!)
「っ!」
(俺はお前が居てくれれば嬉しいし、みんなも嬉しい! なにより――)
俺は怒鳴る。
俺の望みを、願いを、可能性を通すために。
(――ジュラを一番笑顔にできるのは、お前だろうが!)
「……っ!」
「ジュリ……」
ルモさんが、不安そうに、ジュリを見ている。
(諦めてんじゃねーよ。どうせお前、ジュラをまた一人にしてしまうーとか、そんなことで悩んでるんだろ?)
「……それが分かってるなら……」
(ふざけんじゃねぇ。勝手に失敗前提で話を進めるなよ)
「でも……」
(失敗なんてしない。俺は、ジュラと、ずっと一緒に居るって、絶対一人にしないって、約束したんだ!)
「……ヨシト」
(だから俺は絶対失敗しない。……お前とジュラ、一緒に笑ってるところ、俺に見せてくれよ)
「……はあ、ボクの負けだよ。分かった。試してみよう。でも、ボクが危険だと判断したら、即刻中止にするからね」
(それでいいさ)
そう、そこに一欠片でも、希望があると言うのなら。
俺は――躊躇わない。
珍しく、由人が主人公しました。
さーて、うまくいくかどうか……。




