表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪獣少女のいるところ  作者: 七志野代人
第三章 動き出す過去
25/49

導き出される希望

 さて、再び超展開☆

 いつの間にか持っていた刀を握りしめ、ジュリは深呼吸をしている。

 緊張しているようだ。

(そう言えば、その刀、どっから持ってきたんだ?)

(これは名刀<撃>。まあ、ボクたちに呼応して現れるから、一応一族専用の刀。で、望めば手に収まってるから、どこにあるかは分からないんだよ)

(ふむ、変わった刀だな)

(ボクの能力の制御にも必要だから、割りと重要なんだよ)

(ふうん……)

 ……能力。

 そう言えば。

(俺のエネルギー吸収と放射も、もともとお前の能力だったりするのか?)

(ご名答。まあ、加減が出来ないから、刀で制御してるけど)

 成る程。

(それじゃ、ルモのところに案内してくれないかな?)

(ああ。分かってる)

 場所はこの間教えてもらったし、大丈夫だ。

(……お別れ、ジュラが納得してくれれば良いんだけど)

(……ああ)


 ……


 コンコン。

 ジュリがドアを叩いた。

「どちら様ですか?」

「ルモ、ボクだよ」

「え……、っ」

 インターホンの向こう側で、驚き、慌てているようだ。

 ガチャリ。

 ドアが開き、ルモさんが、驚いたようにジュリを見つめる。

「本当に、ジュリなのですね……?」

「そうだよ。久し振りだね、ルモ」

「ジュリっ……――」

 ルモさんがジュリに抱きつく。

「……ごめん、ルモ。一人で大変だったろう?」

「見くびらないでください……っ、わたしももう大人です……っ」

 ……いつもお姉さん然としているルモさんが、ここまで感情を表に出しているのを、初めて見た。

 それくらい、仲が良かったのだろう。

「その服は……」

「ん、ヨシトから借りたんだ。変じゃない、よね?」

「ええ、男物なのに、似合ってます」

「良かった。ルモに変とか言われたら、ちょっと傷つくから」

「ふふっ、……変わってませんね」

「……うん。ボクは変わらないよ」

「立ち話って言うのも難ですし、なかに上がってください」

「……ああ」

 ルモさんの家に上がる。

 ……しっかり掃除や手入れが行き届いている。

 俺も見習おう。

 リビングに入り、ルモさんに促されるまま、ソファーに座った。

「……用件は分かってます。ジュラちゃんにお別れをいうんでしょう? その体は、芹沢君から借りたものでしょうし」

「あははっ、それだけじゃない。ちゃんと親友にも、お別れくらい言いたいじゃない」

「……ジュリ」

「ごめんね。僕一人で、勝手に色々決めちゃって。迷惑ばかりかけちゃったよね」

「……いえ。大丈夫。けれど、どうしようもないんですか? もう一度、皆でいられる方法は……」

 ルモさんの言葉に、俺はハッとした。

 そうだ。

 俺が諦めれば、ジュリは皆と一緒に――

「あるにはあるよ。でも却下だ」

「何でですか!?」

「……一つ目は、ボクが今の状態で生活し続けること。ただ、これは本来の設定じゃないから、負荷でいずれ絶対に障害が出る。それに、ボクがわざわざ死んで、ヨシトを助けた意味がないだろう?」

「一つ目、と言うことは、二つ目が有るのですね?」

「うん。細胞を急激に活性化させて、ボクの分の肉体も作る」

「その手なら」

「ヨシトへの負荷が大きすぎる。普通なら怪獣細胞でもエネルギー切れで、細胞が死滅しちゃうだろうし、出来たとして、精神を移動させられるかどうかも未確定。不安要素が大きすぎて、ほとんど賭けになる。最悪、ボクもヨシトも死んでおしまいだ」

「それは……、無謀ですね」

 確かに話で聞いただけじゃ、無謀でしかないな。

 けど、

(……なら、勝率をあげればいい)

「ヨシト……?」

(お前の体じゃ元から負荷が大きい。なら、俺に体を戻しておけば、可能性はあるだろ?)

「ダメだ。それじゃあ、エネルギー切れで細胞が死滅する」

(なら、ジュラの熱線とか、クインの光線でエネルギーを補給すればいい)

「本気で言ってるのかい?」

(本気じゃなきゃ、こんなことを言うかよ)

 精神内で、俺とジュリの視線がぶつかり合う。

「……芹沢君が、なにか提案したんですね?」

「……うん」

「その提案は、ダメなのですか?」

「……最初に言った問題点はほぼクリアしてる。けれど、意識の問題や、安全かどうかは、完全に分からないんだ」

(だとしても、試す価値はあるだろ!?)

「最悪、君が死ぬんだぞ、ヨシト!」

(それでもだ!)

「っ!」

(俺はお前が居てくれれば嬉しいし、みんなも嬉しい! なにより――)

 俺は怒鳴る。

 俺の望みを、願いを、可能性を通すために。

(――ジュラを一番笑顔にできるのは、お前だろうが!)

「……っ!」

「ジュリ……」

 ルモさんが、不安そうに、ジュリを見ている。

(諦めてんじゃねーよ。どうせお前、ジュラをまた一人にしてしまうーとか、そんなことで悩んでるんだろ?)

「……それが分かってるなら……」

(ふざけんじゃねぇ。勝手に失敗前提で話を進めるなよ)

「でも……」

(失敗なんてしない。俺は、ジュラと、ずっと一緒に居るって、絶対一人にしないって、約束したんだ!)

「……ヨシト」

(だから俺は絶対失敗しない。……お前とジュラ、一緒に笑ってるところ、俺に見せてくれよ)

「……はあ、ボクの負けだよ。分かった。試してみよう。でも、ボクが危険だと判断したら、即刻中止にするからね」

(それでいいさ)

 そう、そこに一欠片でも、希望があると言うのなら。

 俺は――躊躇わない。

 珍しく、由人が主人公しました。

 さーて、うまくいくかどうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ