少女の葛藤
さてさて、駆け足で参ります。
くそ短いですが、ご容赦ください。
セリザワが好きだった。
お姉ちゃんが好きだった。
なのに、
「…………」
……お姉ちゃんは、セリザワのお父さんに殺された?
セリザワはわたしと一緒にいてくれて、お姉ちゃんもわたしと一緒にいてくれた。
セリザワのお父さんがお姉ちゃんを殺した?
でも、セリザワは関係ない。
殺したのは、セリザワのお父さんだ。
セリザワ本人とは関係ない。
関係、ないのに……!
「…………いや」
あの人間の顔がちらつく。
わたしを撃とうとしていた、あの人間が。
セリザワは違う。
違う。
違う筈なのに。
ごめん。
「っ、いや……」
謝らなくていいのに。
裏切ったわけじゃないのに。
殺せ。
あのときの言葉。
理解してしまった。
裏切った人間と、セリザワのお父さんは同じだ。
それじゃあ、セリザワは?
一緒にいる。
ごめん。
「いやぁっ!」
耳を塞ぎ、叫ぶ。
そんなの、想像したくない。
セリザワが裏切るなんて思いたくない。
それでも、脳裏にはあの時の記憶が浮かんできて。
……その人間の顔が、セリザワにすりかわっていて。
「違うっ! セリザワは、セリザワはっ!」
目の奥が熱い。
涙が零れる。
なんでこんな気持ちになるんだろう?
なんで一緒にいられないんだろう?
怖い。
怖くて怖くてしょうがない。
いつか裏切られるかもしれない。
そんなワケない。
でも、セリザワはあの人間と同じかもしれない。
絶対違う。
絶対なんて保証はない。
それでも否定したい。
否定しなきゃいけないの?
彼を信じているから。
本当に信じているの?
それは――
「セリザワ…………」
わたしは――
「……わたし、は…………」
……
どうやら、ジュラが例の話を知ってしまったらしい。
ルモはため息をつき、瞳を伏せた。
彼の意思を知っている以上、それをフェルやバルハに語ることはない。
それが彼の望みだから。
たとえジュラが傷付いてしまったとしても、今こういうことがあったのは、妥当なタイミングだったろう。
これ以上に信頼を重ねて、それを揺らがせたら、本当にどうしようもなくなるかもしれない。
なら、今の内にこういう軋轢は無くしたい。
……今のジュラは、不安で信頼が揺らぎ、その事自体にも恐怖しているような状態だ。
これを覆すためには、ジュラがもう一度彼を信用するしか――壁を乗り越えるしかない。
あるいは、
「芹沢さんが、手を握ってくれるか、ですかね…………」
ルモさん久しぶりに登場です!
ジュラは、再び人間不信的な物におちいっています。
こっから挽回するところが主人公の腕の見せ所ですが……さて。




