雑用と書いて、日々と読む
遅れた上に、今回は短めです。
本当にごめんなさい……。
「さて、……やったりますか」
ふう、と息を吐き、箒を握る手に力を入れる。
さっさと畳の床を掃いていく。
神社と言っても、シャラナの家みたいなものらしい。
つまるところ、俺は他人の家の掃除を任されたらしい。
で、当のシャラナは何をしているかというと……
「うーん、ジュラは可愛いのぉ~。うりうり、ここが気持ちいいか? ん?」
「……くすぐったい」
ジュラを抱っこして頬擦りしつつくすぐっている。
「ん、……やめてほしい」
ちなみに、ジュラは普通に嫌がっている。
いくら拒まれても、シャラナはジュラを離そうとしない。
……いや、遠慮しような?
「……シャラナ。俺に金を払って掃除をさせるくらいなら、自分でやった方がいいと思うんだが?」
仕事任せてまで、ジュラを愛でるつもりか? いや、気持ちは分かるけど、家の掃除くらい、絶対自分でやれるだろ、この人。
……このセリフが、地雷であることを、当然、俺は知らなかった。
みるみるシャラナの目が虚ろに暗くなっていく……。
離されたジュラが、怪訝そうにしている。
「あー……、シャラナ? どうした?」
「……うむ、ヨシト。これだけは……言わせてもらうぞ……?」
「なんだ?」
「〆切前なんじゃぁああああああっ! ジュラで癒されていたいんじゃぁああああっ! 妾はっ、妾はもう壊れてしまいそうなんじゃぁああああああっ!」
「〆切ぃ?」
「そうじゃ! これでも小説家として多忙なんじゃ! 妾にとって、待ってくれる人がいるのじゃから、ちゃんと原稿あげたいんじゃよ! けど、けどじゃよ!? それでも妾でもどぉしようも無いことがあるんじゃ! それでも出版社も編集もさっさと原稿をあげろあげろとうるさいんじゃ! ちょっとくらい、癒しを求めたってしょうがないじゃろう!? 」
「シャラナ、小説家やってたのか?」
「そうじゃよぉ……。妾だって、休む権利くらいあるじゃろ……?」
……小説家。ただし、〆切前の極限状態だった。
「あー、はいはい。分かったから、……すまん、ジュラ、構われてやってくれ」
「……うぅ……。……分かった。……セリザワ、貸し一」
「…………分かったよ。……何を頼むつもりだ……?」
……と言うか、貸し一って、ジュラみたいな女の子に言われると、違和感すげぇな……。
「うぅ、ジュラぁ~……」
ぎゅうぅうううっと、シャラナがジュラを抱きしめる。
「……さて、続き続き……」
箒で畳を掃く。
結構手が回らなかったようで、あちらこちらに埃があった。
やれやれとため息を吐きつつ、手早く掃除をやっていく。
暫くして、ジュラが来たが、残念ながら構ってやれない。
「……我慢」
シャラナは執筆に入ったらしい。
じーっと俺を見ていたジュラだったが、箒を取りだし、一緒に掃除を始めた。
箒が大きいのでちょっと不安定に見えるが、上手く掃除している。
……メイド服だ。誰かメイド服を持ってこい。
絶対似合うって、これ。
「うがぁああああああ! 誤字脱字なんてクソ食らえじゃぁあああああ!」
すごい叫び声……否、雄叫びが聞こえた。
びくんっ、とジュラが驚き、俺に抱きつく。
地味に震えている。
……可愛い。
「シャラナ……大変そうだな……」
「……セリザワ。シャラナ、どうして怒ってるの?」
「あれは、怒ってるってよりも、泣いてるっつった方があってる気がするな……」
「?」
無駄に遠い目をする俺を、ジュラは怪訝そうに見上げているのだった。
作者の心の叫びです。
執筆じゃなくてレポート的な方で!
工業系の悲しき宿命です……。
後、シャラナに関しては元からこういう設定だったり。




