暖かい想い 後編
さて、お風呂回後編です。
前回のジュラを知ってると、ちょっとにやっとします。
さっさと洗ってもらってないところを洗い終え、俺は湯船につかった。
ジュラが洗ってくれると言い出したときは驚いたが、予想以上に丁寧に洗ってもらえてありがたかった。
うーん、俺の十六年間の人生、一番体をいたわってもらえた気がする。
俺が下半身洗ってもらうのを遠慮したときと、体は洗ってやれないって言ったとき、なぜか残念そうな顔をされたのはきっと気のせいだ。
ざばーっと、ジュラも泡を流し、湯船に入る。
結構大きい湯船のため、俺くらいの体格なら、ジュラみたいな幼zy……ゲフンゲフン、ロリッk……ゲフンゲフン、……ジュラみたいな小さい女の子なら、余裕で入れる広さである。
……なの、だが。
「あー、ジュラ? 何故にこのポジションだ?」
「…………ここがわたしの定位置。…………ダメ?」
「いや、ダメじゃない。むしろそう言ってもらえて嬉しいんだが……この状況でこのポジションは……その…………いろいろと、まずくないか?」
「……問題ない。むしろいい」
「あのなあ、耳まで赤くなってる時点で説得もなにもねえよ」
「……気のせい。セリザワが戦闘で疲れてるだけ」
「オーケイ、ごまかそうというなら状況確認だ。俺たちは今どこにいる?」
「……お風呂」
「俺達はどういう格好をしている?」
「……裸。でも、セリザワはタオル巻いてる」
「そこはさておけ。で、だ。お前は今、どこに乗っかってる?」
「……セリザワの膝の上」
「……もういい」
ガックリと上を向く。
いや、嬉しいよ? 嬉しいけど恥ずかしいんだよ!
裸の俺の上に、タオル一枚上に、ジュラが居る。
裸である、全裸である、すっぽんぽんである、一糸纏わぬ姿である!
で、結果俺は、鎮まれ俺の息子ぉおおおおおおお!状態である。
幸い、息子は元気になってないから、バレてない。バレてないんだが……、
「……ん」
少しジュラが体をずらす。
ジュラの柔らかくも張りのあるお尻が、モロに股間に嬉しい刺激を送り込んできやがる。
悶々としたまま、必死に情念を押さえ込む。
だって熱線食らいたくないし。
ジュラに嫌われたくないし。
……ジュラに怯えた目でなんて見られた日には、冗談抜きで死にたくなってきそうだ。
あんまり意識しないようにし、ジュラに話しかける。
「そういえばさ、ジュラ」
「……ん?」
「お前は、この町に来る前は、どこでどうしてたんだ?」
「…………あまり、楽しい話じゃ、ないけど」
「話したくないか?」
「……ん、だいじょうぶ。セリザワには、知っててほしい」
「確か前聞いたのは、人が怖い理由、だったよな?」
「……ん。殺されそうになって、逃げた。怖かった」
「…………そう、か」
「……今は、セリザワが居る。だから怖くない」
嬉しいこといってくれる。
抱きしめたい衝動にかられたが、嫌われたら死にたくなるからやめといた。
「……それからは、洞窟に隠れて、ずっと泣いてた。……お姉ちゃんは居なくなって、どうすれば良いのか、わかんないままで」
「……………………ジュラ」
「……セリザワ」
後ろから、ぎゅっと抱きしめた。
「もう、絶対一人にしない。ずっと一緒にいてやる。お前に二度と、そんな思いさせない」
「………………ん」
「あんまり何度も同じこといってたら、信用ないか?」
「…………大丈夫、信じてる」
後ろから抱きしめている俺の手を、きゅっとジュラが握る。
「…………だから、一緒にいて? 絶対、わたしもセリザワを一人にしない」
「ああ。………………ところでさ」
「……ん?」
「……この体勢、結構恥ずかしいな……」
「……もうちょっと、このままがいい。……だめ?」
「…………分かったよ。もうちょっとだけだぞ?」
「……ん。ありがとう」
そのままぽけーっとしている
相変わらず、下半身は意識しないように、だが。
しばらくたって、ぐらりと、ジュラが湯船の中に沈んだ。
「ジュラっ!?」
大慌てでジュラを抱き起こす。
「大丈夫……って、寝てるのかよ……」
どうも安心して眠ってしまったようだ。
まあ、外に出掛けたし、疲れているのかも知れない。
「しょうがない、のか?」
上手くジュラを抱え、湯船から上がる。
脱衣所からタオルをとり、ゴシゴシとジュラの頭を拭き、邪念をかなぐり捨てた後、体もゴシゴシと丹念に拭いた。
別のタオルを取りだし、俺も自分を拭く。
その後、再び邪念を封じ込め、パンツを穿かせてシャツを着させる。
布団を敷き、寝かせてやる。
夕飯時に起こしてやれば、問題ないだろう。
椅子に座り、料理本を取り出す。
さて、上手いもん作ってやらないとな。
……
夕飯を決め、準備を着々と進め、さっさと作り終えて一息吐いていた。
すると……、
「……セリ、ザワ? ……セリザワ? ……どこ?」
ジュラの声。
とても不安そうな声。
「ジュラ? どうした?」
「……セリザワ!」
布団の上で踞っていたジュラは、バッと顔をあげると、飛び起きて、俺に抱きついてきた。
「……セリザワっ、……セリザワ……っ!」
あろうことか、涙目で俺にすがりついている。
「うぉ、どうした、大丈夫か?」
「……起き、たら、セリザワが居なくて、居なくなったかと思ったら、すごく、怖くなって、……それで、それで…………っ!」
……成る程。
気付けば自分一人になったと思って、とてつもなく不安になったわけか……。
「……ごめんな、ジュラ。不安にさせちまったな」
「…………ん。謝るのはわたしのほう。一緒に居てくれるって言ってくれたのに、それを疑った」
「ははっ、それじゃ、お互い様か?」
「……ん。もう疑わない」
「よし、もう不安になんかさせねー。……約束だな」
「……約束する」
ジュラの頭を撫でてやる。
嬉しそうにジュラは顔を綻ばせ、目を細める。
「それじゃ、夕飯にしようか」
「……何を作ったの?」
「エビフライ。ジュラは海老、大丈夫か?」
「……平気。むしろ好き。セリザワが作ってくれたなら、尚更」
「そんな大仰な。……でも、ま、そう言ってもらえると嬉しいよ」
「……ん。早く食べる」
俺はもう一度笑った。
こんな風に、ちょっと変わってるが、まあまあ穏やかな日々は、もっとずっと続いてくれると嬉しいね。
久方ぶりにジュラがガチ泣きしかけるかいです。
ジュラを抱っこできる主人公うらやまsi……なんでもありません。




