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怪獣少女のいるところ  作者: 七志野代人
第二章 決意と絆
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住人たち 後編

 投稿が遅れてしまいました。

 次回以降は、一日一回、もしくは、二日に一回のペースでの投稿を維持したいです。

 バルハさんの自己紹介後しばらく。

「……ご飯」

「まあ待てって。もうちょっとなんだからさ」

 相変わらず、ジュラは俺の膝の上である。

 バルハさんはそれを見て、なんか複雑そうだった。

 ……やっぱり、絵面的に俺、ロリコン野郎ですか!?

 フェルも忙しそうに机拭いたり厨房にいってたりするし、話しかけられないな。

 お昼までなら、時間が結構余ってるが、腰を落ち着けた以上、あんまり動きたくねえし。

 というか、ここまでわざわざ案内してもらってるのに、何も注文せずに席を立つってのはどうなんだろうか。

 それはそれで失礼な気がするんだよな。

 かといって、黙ってるのもどうかと思うし。

「なあ、ジュラ」

「?」

「なんでお前は、みんなをずっと警戒してるんだ?」

 今日のフェルに対する態度を見て、尚更気になった。

 ジュラは、なにをそこまで警戒しているんだ?

「……セリザワなら、教えても良い」

「言ってみ」

「…………………………………………………………………………怖い」

「怖い?」

「……人の姿は、怖い」

「…………なんでだ? あ、いや話したくないなら、無理に話さなくて良い」

「……ん、ありがとう。でも、話す。セリザワには、話すべき」

 今朝の一件から、ジュラの雰囲気が、さらに柔らかくなった気がする。

 本格的に信頼してくれているようだし、その信頼は裏切りたくない。

 信じてくれているんだから、なれるだけ力になりたい。

「……人は好き。いろんなことを話せて、一緒に笑ってくれるから。……でも、怖い。いつか裏切るかもしれないから。…………あの人も最初は優しかった。でも、わたしを撃った。体は、痛くなかった。でも、ココロが、痛かった」

 あの人って言うのが誰なのか、俺にはわからない。けれど、

「……安心しろ。この町の人なら、きっと裏切らない。少なくとも、俺は絶対お前を裏切らないし、一人にしない」

「……だいじょうぶ。わかってるから」

 ぽんぽんとジュラの頭を撫でる。

「……ジュラがあそこまでなつくとはねぇ。大したもんだね」

「………………そう、ですね」

 フェルとバルハさんがあっちの方で仕事をしつつなんか話してるけど、まあ気にしないでおこう。

「……セリザワ」

「ん?」

「ありがとう。話、聞いてくれて」

「どういたしまして。当たり前を実践しただけだけどな」

 笑って返す。

 ジュラも、つられたのか、少し笑った。

 奥の方でフェルが驚いていたが、気にしない。 

 しばらく膝の上のジュラを愛でる。

 そうしていると、いつの間にか結構時間がたっていたらしい。

 お昼時になり、新しいお客さんがレストランに入ってきた。

 豪奢な金髪に碧眼に整った顔立ち。

 そしてルモさんに勝るとも劣らない巨乳。

 見た感じ、顔の印象は十五か十六歳くらいに見える。

 胸の発育が良い高校生といったところか。

 というか、俺と同年代に見える娘って、何気初めてじゃなかろうか。

 その巨乳美少女が、俺を見て、眉をひそめた。

「…………男?」

 皆あまり気にしていないが、この町にいるのは、少女型巨大怪獣である。

 少女型、である。

 なんで少女と銘打たれてるのに男がいるんだよって話になるよな。普通は。

 今まで会ってた人達全然気にしてなかったけどね! 

 とりあえず、この町では俺が異端なのは変わらないんだよな。

 つかつかと、少女はこちらに歩いてきた。

「はじめまして、わたしはクインっていうの。あなたは?」

「俺は芹沢由人。大怪獣町に引っ越したばかりなんで、お手柔らかに頼む」

 お互いに自己紹介をする。

「そう、由人。あなた、怪獣なの?」

「……一応そういう扱いらしいな。実感も何もないけど」

 今さらだが、どう考えたって首を捻るしかねえぞ、この話。

「……それなら、一度だけ手合わせしてもらっても良いかしら?」

「は?」

 なんか唐突に物騒な話が出てきたな

「別に今すぐじゃなくて良いから、お願いできない?」

「……それをやるメリットは?」

「怪獣が一番力を発揮するのは、戦闘中と相場が決まってるわ。少女型巨大怪獣だって同じ。むしろ、私たちの方が、その傾向が強いらしいわよ?」

 なにその設定。

 はじめて知ったわ。

「それで見定めるってわけか?」

「そうなるわ。怪獣なら、一方的にやられるようなことはないでしょう」

 いやいや、あんたが強かったら、それこそ俺、どっちにしろボッコボコにされるだけじゃね?

「ふむふむ、なかなか面白そうなことになってるねぇ……あ、ご注文承りまーす」

 フェルがいきなり登場してきた。

「ま、あたし個人としては、こういうことは積極的にやって、ささっと認めさせちゃうのが良いと思うよ」

 どういう理屈でそうなんの!?

「……それじゃあ、食後しばらく休憩をとってから、決闘と言う流れでいいかしら」

「出来ればやりたくねえわ」

「やれるならやっときなよ。芹沢君自身、自分の正体を把握しておきたいだろうしね」

 理にかなってんのか、これ。

「ま、腹が減っては戦はできぬって言うし、まずは腹ごしらえからだ」

「じゃあ、わたしはハンバーグセットで」

「……サンドイッチセット」

「俺は……悩むな。……よし、チキンセットで」

「はいはーい。バルハ姉がぱぱっと作ってくれるから、ちょっと待っててねー」

 にこにこしながらフェルは厨房に入っていった。

 ……あの、ジュラが膝に乗っかってる状態で、クインさんと一緒の席ってのは非常になんつーかその、事案だとか思われそうなんですが。

 自己紹介の時にも乗っかってたし、何を今さらといった気がするけれど。

「なあ、クインさん、でいいか? 一つ気になったんだけどさ」

「呼び方ならクインでいいわよ。それで、何?」

「あんまし堂々と聞くのはどうかと思うんだが……一応さ、俺みたいのもいるし、あれだけど、この町って、少女型巨大怪獣が住んでるんだよな」

「そうよ」

「の、割には少女って呼ぶにはルモさんとか、二十歳くらいに見えるんだが……」

「ああ、そのことか。簡単よ。少女型巨大怪獣は、外見が成長するものと、しないものがいるのよ。まあ、成長って言ってもルモくらいが限界みたいだけど。フェルやバルハは、昔はもっと小さかった、って言うよりも、ジュラくらいだったんだけどね。成長して、今の姿になって、それから止まってるし、あの二人はあの姿が限界でしょうね」

「ジュラとかお前は?」

「わたしはずっとこのままよ。ジュラのお姉さん――ジュリも、外見の成長はなかったわね。ジュラは……どうなんだろう。たまーにいきなり成長するのもいるのよね。ルモとかちっちゃかったのに、一気にあの姿に成長したし」

「……成る程な。個体差が激しいってことか」

「そういうこと。まあ、外見とか全然あてになんないのよね、この町」

 そこは素直に納得できるな。

 しかし、さっきの話からすると、ジュラが一気に大人びる可能性もあるわけだ。

 ……成長された途端に嫌われるとか、有りそうでイヤだわ。

 うーん、思わぬ懸念事項が湧いて出たな。

 流石に嫌われるのは勘弁だ。

「はーい、ハンバーグセット、サンドイッチセット、チキンセット、お待ちどうさまー、って、芹沢君、随分と難しい顔してるね」

「……あ、顔に出てます?」

「ばっちりね。大方、ジュラが大きくなったら、芹沢君の事を嫌いになるかもしれない、とか、でしょ?」

「絶対に話聞いてただろ」

「まあね。クインと芹沢君がどういう話をするのか興味あるしね」

 皿をテーブルにのせ、フェルは笑った。

「それじゃ、ごゆっくり~」

 

 ……


 普通にレストランの料理は美味しかった。

 が、この後クインと決闘なもんだから、気が重いったらありゃしない。

「……セリザワ」

 どうしたもんかと思いつつ、どうしようもないんで休んでると、ジュラが話しかけてきた。

「セリザワは、わたしが大きくなったら、嫌いになる?」

 なんか不穏な質問がきたな。

「なるわけないだろ」

 即答するけど。

「……なら、わたしも同じ」

「うん?」

「わたしの姿が成長しても、セリザワを嫌いにならない」

 ……あー、さっきの話ですか。

「……だから、心配しないで。ずっと一緒にいたい。だから、嫌いになんてなれないから」

「…………ありがとうよ」

「ん……」

 ポンポンと、頭を撫でてやる。

 どことなく、ジュラの表情が綻んだように見えた。


 ……


 ディストラクション計画。

 芹沢広明博士が主任を勤めていた、生体破壊兵器<ゲノム・ディストラクション>の開発計画。

 <ゲノム・ディストラクション>は、特殊な物質により、細胞に直接干渉し、生体を停止、崩壊させる兵器であり、少女型巨大怪獣の登場以前、巨大怪獣が登場した時代に考案されたモノ。

 少女型巨大怪獣の登場までは、「世界を破滅に導き兼ねない」と判断され、研究はおろか、開発など論外だった。

 しかし、先の巨大怪獣の襲撃によって被った被害は甚大であり、早急な少女型巨大怪獣の処理が決定。

 凍結されていた計画は再び動きだし、結果として、ジュリに対し、対処と言う名目で、実験的に<ゲノム・ディストラクション>は使用された。

 効果は絶大であり、ジュリの殺害に成功。

 しかし、死亡したジュリの細胞採取中に、<ゲノム・ディストラクション>に耐性を持った細胞が発見され、この悪夢の兵器ですらやがて決定打になり得なくなることが判明。

 さらに耐性を持った細胞が暴走。増殖を繰り返し、新たなる少女型巨大怪獣となり、甚大な被害を与えた。

 結局の所、再び計画は凍結。

 その後、人類側の次の手として、採取されたジュリの細胞をもとに、機械細胞実用化計画が開始することとなっている。

 今回も盛大にフラグ回です。異論は認めません。

 バトルは次回に持ち越しです。……まあ、戦闘の描写は未だにコツを掴めてないんですけどね。

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