何処にいるのかわかりません
ここは何処でしょうか?
やや方向音痴である我が身が時折考える言葉ではあるが、こんなにも判断がつかない状況下でこの言葉を思い浮かべたことはない。
むしろ“何処”より“何”が正しい気がする。
ここは何なんだ?
何も見えないのだ。眩し過ぎて見えないわけでも真っ暗で見えないわけでもない。
そも目が開いているのかすら怪しい。感覚自体が伴っていない。
でも確かにここに在るとその存在だけははっきり認識出来る。それがむしろ違和感。
何も見えなくて何も感じ取れないのに存在だけはわかる。なんだそれは。
意味が分からなくてもやもやする。
そしてそれは苛々に変わり、不安へと変化する。最後は不満と不安が噴き出すわけだ。
初めはぼそぼそと呟き、次第に大きくけれど平坦に、濡れた音になり嗚咽が混ざり、最終的には泣き喚く。
しかもどうしたわけか子供とか赤子のように盛大に。
何があったのだ自分。どうしたのだ自分。情緒不安定なんだろうね自分。
何せ状況が全くもって把握できない。
その内力尽きるさ。声も涙も涸れるだろう。疲れ果ててこんこんと眠りにつくのだろう。
という発想にはどうしてか至れない。
普通、自分の泣き声は聞こえるものだ。
全身の筋肉を使って体を拡声器代わりに使っているはずだから。
なのに私には私が泣き叫んでいるはずの音が聞こえない。全身に響いているはずの振動すらない。
余りの感覚のなさにそれって生きているのかと疑いたくなる。
わかるのが自分の存在だけというのが何だか魂だとか幽霊だとかを想像させる。けれどそれもなんだか違う気がして解答に辿りつける気がしない。
意味も分からず泣き喚くしか出来ない闇でも光でもないこれまた意味不明な何処かで、変化に気が付いたのはそれから少し後のこと。