第二話
ここからは前回書いていた物と違ってきますので、前作を読んでいる方はお気をつけ下さい。
ディヤヴォルオンラインがデスゲームとなってからおよそ四年が過ぎた。プレイヤー達はレベルを上げ、スキルを磨き、経験を積んだ。プレイヤー達のさまざまな出会いや別れ、事件があった。しかし、それも終わりを告げようとしていた。
★★★★★★★★★★★★★★
カズヤとカナデは部屋を出て、朝食を取ると集合場所へと向かった。集合場所の《椿の間》には既に30人程のプレイヤー達が集まっており、空気はピリピリと緊張を孕んでいた。
「よう、カズヤ」
後ろから声をかけられる。カズヤ達が振り返ると、翠のバンダナを頭に巻いた男が立っていた。
「レイン!久しぶりだな」
「おう、元気にしてたか?カナデさんもこんにちは」
「こんにちは、レインさん」
久しぶりの再会に喜んでいると、周りを見てレインは顔をしかめた。
「空気が重いな......」
「仕方ないさ、半年ぶりのボス攻略にそのボスが魔王なんだ。いくら上位プレイヤーでも緊張するさ」
ゲーム内での死が現実の死となるこの世界ではボス攻略は非常に危険な物だ。通常のモンスターよりステータスが圧倒的に大きく攻撃パターンも特殊。上位プレイヤーでレイドを組んだとしても、死ぬ確率は非常に高い。更に一度ボスとの戦闘が始まれば逃走は不可能となるため、実際レイドが全滅なんて話も珍しくは無い。
「今回のボス攻略は上位プレイヤーが全員参加することになっているんだ。失敗は許されない」
「確かに、仮に俺達上位プレイヤーが全滅してしまえば、もうクリアは無理だろうな」
上位プレイヤーと後続のプレイヤー達とでは圧倒的な差がある。上位プレイヤーが全員死んでしまえば、間違いなく遅くなるのは事実だ。
「そうならない為にも私達は勝たないといけない。だから頑張ろ?そして生きて現実世界に帰るわよ、絶対」
カナデが手を差し伸べる。カズヤとレインはそれに手を重ね、深く頷いた。
上位プレイヤーが全て集まり、その前に一人の赤髪の女が立つ。プレイヤー達はその女を見て、驚いた。
「おい、あれってまさか......」
レインもその女に気が付いたのか声を上げ、カズヤがそれに頷く。
「まさか《爆炎剣》のソレイユが姿を表すなんてな」
爆炎剣の異名を持つ彼女からは凄まじい覇気とも言える闘争心が感じとられ、広場はシンッと静かになる。多くのプレイヤー達がソレイユに注目し、固唾を飲んだ。
「諸君!聞いているとは思うが、先日魔王の居場所が判明した。我々はこれより魔王討伐隊を作り、ボスを攻略する。上位プレイヤーと言われる諸君達にはどうか協力して欲しい。我々は!多くの犠牲を払いながらここまで来た!しかし!それももう最後だ!HPゲージの最後の一ドットが消えるまで諦めるな!誰一人死なずにこの最後の戦いを終わらせ元の世界に戻るぞ!」
「「「「うおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」
プレイヤー達は武器を高く掲げ、雄叫びを上げる。ディヤヴォルオンライン最後の戦いが幕を開けた。