母さん落ち着いて
ぐぅ〜〜〜
侍女のカーミアが作ってくれた昼ご飯を前にして俺は盛大に腹の音を鳴らしていた。
腹が減って仕方がないが俺の分の昼ご飯はないようだ。
いや、用意はされていたらしいが母さんがその分まで食べてしまった。
「あれ〜?レシウス君はどうしたのかな〜?君が倒してきた大きな大きなお魚が目の前にあるのにどうして食べないのかな〜?」
人を小馬鹿にするような喋り方で母さんが話しかけてくる。
「母さん、どうか落ち着いてください。話し合えば分かりますって」
必死に母さんを説得しようと試みるが、母さんは頭の上に?を浮かべている。
「んん〜?落ち着けってどういうこと〜?レシウス君、母さんはいたって平然ですよ〜。怒ってなんかいませんよ〜」
笑顔でそう応えながら目が笑っていない母さん。
もっと言えば眉間にシワがよっている、絶対怒っている。
「いや、確かに母さんやカーミアに何も言わずに出て行ったのは申し訳なかったと思います。ですがこうして五体満足で帰ってきたので許してくださいです」
日頃から敬語を使っているわけではないので少し変な言葉になりつつも弁明を口にするレシウス君こと俺。
そんな我が子の必死の弁明をどう受けとったのか母さんはさらに青筋を増やしている。
「レシウス、母さんは今までレシウスを大事に育ててきました。そんな母さんがレシウスに対して怒っているのです、なら何故怒っているのかを確かめるべきではありませんか?」
あ、やっぱり怒ってるんじゃん。
とはいえ何故怒っているのかは俺が知るはずもない。
なんせ今言った言葉が怒っている理由を理解した上での弁明のつもりだったのだ。
それが弁明になってないと言われてしまえばどうしようもないよママン。
「分かりませんかレシウス」
うんうん唸って悩んでいるフリをしているとだんだん後光を纏いそうな勢いの母さんが諭すように話しかけてきた。
「レシウス、貴方は母さんがどれだけレシウスのことを愛しているのか分かっていないのです。分かりますかレシウス、7歳児にしてはどこか達観したところが垣間見える貴方、たぶん知力は他の子供には負けないでしょう。母さんやカーミアがいろいろと勉強も教えているのでもしかしたら大人にも負けないかもしれません。ですが!レシウス、貴方はまだまだ子供なのです。少々剣の腕が立つからといって河の主に何の罠や仕掛けもなく挑もうなど後5年は早い。いいですかレシウス、母さんは貴方が河の主に挑んだことを叱っているのではなく自分と相手の力量の差を分からずにその無二の命を容易に負け筋の濃い闘争という天秤に賭けたことを怒っているのです。分かりますかレシウス、いつも母さんは言っているでしょ…………………」
ネチネチネチネチ
グチグチグチグチ
ピーチクパーチク
……、はい母さん申し訳ないのですが途中から聞き流してまーす。
いや〜親って生き物は説教が長くてイかんね。
まあ、俺のことをしっかり思ってくれている証拠なんでしょうけどね。
子供の立場としては叱るより先に褒めてほしいという考えがございましてですね、そんな頭ごなしに全てを拒絶されるとヤル気というものが無くなるんですよね。
ん、詭弁か?
これから母さんは数十分もの間説教をし続け、だんだん父さんのお話となり最終的には泣きながら母さんの愚痴になっていった。
「わ、私だってねぇ…ぐすっ、頑張ってレシウスを育てている…うっ…づもりなんでずぅ〜。どうして、みんなレシウスを…ヒック、悪く言うの〜!」
どうやら俺はこの家以外では悪ガキ扱いのようだ。
いやまあ勇者に憧れて色んな事をしてきたけどさ、暴れ牛を止めるためにパチンコを強力にした物で応戦したりジャイアンツアントという結構大きな蟻を倒そうとして巣の穴に落ちて死にそうになったり、うん色々したな。
あ、母さんがとうとうお酒に手を出し始めた。
たぶんこれ以上は酒の力を借りてでもしないと言えないことなのだろう。
(おいおい母さん大丈夫か?)
さすがに見てられなくなったのか侍女のカーミアが止めに入る。
すると泣き崩した母さんが「カーミア"〜」と絡み出した。
「奥様落ち着いてください、まだレシウス様の目の前でございます。どうして酒も入ってないのにそんなに酔っているんですか、奥様!」
おっと、カーミアが言葉に力を込めて喋っている、珍しいことがあったものだ。
うーん、確かに今の母さんは酔っている時の状態に似てるなー。
服とかすっごくはだけているし。
あーあーあられもない乳房が見えてしまってますよ母さん、こんなとこ大人たちには見せれませんな。
あ、母さんの乳房は息子である俺から見ても結構なモノで、慎ましやかな胸をお持ちのカーミアと並んで見るとその迫力が分かろうと言うものだ。
「む、オッパイばっかり見て、レシウスのエッチ〜。ぷ、あはははっ」
カーミアに散々絡んだ母さんが俺がはだけて見えてしまう胸に視線をやっていることに気づきからかってきた。
人のことをエッチ呼ばわりすると泣いていた母さんは笑い出した。
(あんた本当に酒でも入ってんじゃなかろうな)
あまりにも母さんが情緒不安定なので酒を飲んでいるのではと勘ぐってしまう。
まあ母さんには笑っていてほしいので良いんですがね。
「申し訳ございませんレシウス様、奥様を落ち着かせるために部屋に行ってきますのでレシウス様は昼食をとっていてください」
「え?俺にも昼ご飯あるの?」
ずっと無いものだと思っていたのでカーミアの言葉に聞き返してしまった。
するとカーミアは微笑んで顔を近づけてくる。
カーミアは俺が言うのもなんだがそうそういないレベルの美人さんだ、母さんが少しオットリした美人だとしたらカーミアはキリッとした凛々しい美人だ。
そんな美人の顔が近づいてきたので7歳児ということなど関係なく男として緊張してしまう。
「ふふ、レシウス様のお母様はそう簡単にご飯を取り上げることなどいたしません。今回は少しばかり危ない目にあっていたようなので懲らしめるだけのつもりだったのです。キッチンのところにしっかりとご用意させていただいてますのでお召し上がりください」
そう耳元で囁くカーミア。
美人の吐息が優しく耳にかかったのと昼ご飯が用意されていたことが嬉しかったのとで心臓が高鳴った。
「ありがとうカーミア!」
笑顔でそう告げるとカーミアは微笑んで小さく会釈すると母さんを部屋に連れて行った。
会話すると文字数が一気に増えました(笑)
しかし全然苦にならないのは何故だろう…
まあ良いことだと思うので良しとしようと思います。
それと今のところ投稿は不定期になってしまいます。
出来るだけ早めに決まった時間に毎日投稿出来るようにしようと思います。




