職種分類(戦闘職編)
□戦闘職種類型
冒険事業に関わる職種は主に戦闘職と生産職に分けられるが、戦闘職種は、大冒険時代初期には、
近接┳攻撃型➡︎剣役職
物理┣防御型➡︎盾役職
┗支援型➡︎補完役職
遠隔┳攻撃型➡︎杖役職
魔導┣防御型➡︎杖と杯兼務
┗支援型➡︎杯役職
というトランプの四つスートとワイルドカードのジョーカー即ちスペシャリストを元にした基礎五役職原型理論により分類された。当時は戦闘職種の数も少なく、任務を兼任するなどは当たり前だった。
やがてこの基礎五役職原型は、
近接┳物理┳攻撃型
┃ ┣防御型
┃ ┗支援型
┗物魔両用┳攻撃型
┣防御型
┗支援型
遠隔┳物理┳攻撃型
┃ ┣防御型
┃ ┗支援型
┗魔導┳攻撃型
┣防御型
┗支援型
という十二類型に分類され、基礎十二類型戦闘職種と呼ばれた。
その後、兼任に伴う戦闘の負担から誤射事故や過酷な気療士の成り手不足が多発した。五大魔法と五大魔術など魔法技術の発展と様々な新職種の誕生を背景に、戦闘職種の役割を徹底化することで、戦闘行為を細分化し、各職種の負担を減らすことを目的とした分業化・効率化改革が行われた。
職種の増加に伴い、人数も増え各職種の負担は減った。同時に細分化された職種を管理する指揮管理職種や前衛と後衛を連動させる中衛が創設された。
職種の専門化と効率化に伴う単純作業に対して、意欲を上げるため、技能を磨き、上級職種に昇格する昇格制度が創設された。
昇格に伴い、技能面だけでなく、金額面でも昇給することで、単純作業に対する不満も解消された。こうして基礎五役職原型理論を下敷きとして、戦闘職種を分類する戦闘職種役職分類法が生まれた。
しかし、分業化とそれに伴う専門化は、戦闘という不測の事態が多発する環境において、専門とする職種が死亡したりした場合、その役職を代行できるものがおらず、一人欠けたことで徒党全体の戦闘が滞る事態を引き起こした。
そこで、専門とする主職種の他に細分化された副職種を専攻する複職種として兼任が復活し、複合型を加えた戦闘職種分類法となった。
戦闘職種分類では、戦闘職は、徒党の戦闘配置や戦闘隊形に基づき、まず距離いわゆる間合いによって大きく近接型と遠隔型そして近接と遠隔を兼ねた複合型として<遠近型>に分類される。
いわゆる前衛型と後衛型そして中衛型である。また距離とは別に、武装の種類によって、純粋な物理型と純粋な魔導型そして物理と魔導両用の複合型いわゆる魔装型に分類される。次に武装をどう使うか、その任務によって、攻撃型、防御型、支援型そして任務を兼ねる複合型<兼務型>に分類される。
武装複合型(魔装型)を近接物魔両用型に分類することで、複合型を距離複合型(遠近型)、任務複合型(兼務型)に分類し、更に距離と武装が複合したり、武装と任務が複合した重複型(万能型)を加え、十五型戦闘職種分類法となる。
前衛型
1近接物理攻撃型
2近接物理防御型
3近接物理支援型
4近接物魔両用攻撃型
5近接物魔両用防御型
6近接物魔両用支援型
後衛型
7遠隔物理攻撃型
8遠隔物理防御型
9遠隔物理支援型
10遠隔魔導攻撃型
11遠隔魔導防御型
12遠隔魔導支援型
複合型(複職種型)
13距離複合型(遠近型)
14任務複合型(兼務型)
15重複型(万能型)
✳︎武装複合型(魔装型)➡︎近接物魔両用型へ
1近接物理攻撃型
純粋物理攻撃役で、基礎五役職原型の剣役職に該当する。軽装戦士を原型とし、性格は外向的で明るく、直観に優れ、単純で何事も力づくで解決する短絡的な型が多い。その職種の豊富さは遠隔魔導攻撃型と双璧を成す。
◆剣士
剣を主武器とし、剣技を持つ軽装戦士。武刀士と違い、片手剣などに盾を構える戦闘スタイルである。
高い筋力と敏捷さを持ち、徒党内の戦闘配置は強襲前衛が多く、多くのエースアタッカーを輩出した。基礎五役職の剣役職の代表例である。双剣士、刺剣士などが派生する。
◆双剣士
いわゆる二刀流の剣士。軽装戦士系で剣士の派生職種。両手にそれぞれ武器を持ち、俊敏さを生かした手数で敵を圧倒する。
多くは片手剣と短剣という風に長さが違う剣を持つ。攻撃の間合いが違うので、様々なバリエーションの攻撃や防御を可能とする。しかし拳闘士が両手で戦うのと違い、武器の重さや利き手の違いから利き手でない方の手で、敵が両手で繰り出す斬撃を受け止めるには難がある。
その点や他のデメリットを差し引いても圧倒的な手数による連結剣技の攻撃力は魅力に溢れている。
◆武刀士
軽装戦士系。武芸に秀でた火竜諸島カムト神武皇国の剣士を指す。武技保持者として武を頼りに生き、武頼漢と呼ばれる彼らは、独自の文化を持つが、特に刀技に秀で、刀を主武器とする者を指す。
また剣士と違い、盾を装備しない。本国のマジックルネサンスを巡る政変で海を渡った彼らは、契約した主君への忠誠が高く、命を軽視するほどの勇猛さを誇る。特に戦場冒険者いわゆる浪人傭兵として名を馳せた。その戦闘力を生かし、迷宮においては剣士より攻撃に特化する傾向がある。
他の武技にも精通し、武槍士や武弓士の職種もある。生霊魔法いわゆる氣を習得することで、舞刀士や閃刀士へ昇格し、更に剣豪或いは司卿の一種である武将に昇格できる。
◆槍撃士
軽装戦士系。槍は間合いが長く、敵の機先を制して攻撃でき、また簡単な構造のため、比較的安価な値段でお手軽に購入できる。そのため多くの迷宮冒険者が利用した。
ただ、木製の柄の部分に脆弱性があり、防御には向かない。補助・防御用に盾、攻撃用に槍を装備するのが一般的である。
◆斧戦士
長い柄に三日月状の片刃や両刃の斧頭をもつ戦闘用の斧<戦斧>を武器とする戦士。お手軽な手斧と違い、戦斧を使いこなすには、ある程度の筋力が要求される。斧頭の重心を利用した遠心力による一撃の攻撃力は剣士を超える。
◆鉄槌士
鉄槌を主武器とし、破壊力に特化した職種である。金属の塊を振り下ろすには強靱な膂力を必要とする。攻撃の予備動作が大きいため、攻撃が読みやすく、咄嗟に軌道を変更したりには不向きである。
2近接物理防御型
重装戦士を原型とし、基礎五役職原型の盾役職に該当する。性格は外向的だが、理性を重んじる思考型や感情型が多い。純粋物理防御役である。
◆重騎士
基礎五役職の盾役職の代表職種である。鎧兜や袖・脛当・篭手など板金鎧で全身を固め、佩楯を片手に鈍器や長柄武器を使用する。
その高い防御力で敵陣に対する橋頭堡となり、前線を維持する能力が高い。徒党内戦闘配置は中央前衛として、徒党の大黒柱となる。動きが鈍重などの欠点がある。
また重装備を着こなすため筋力をはじめ高い身体能力や体力を持つ。見習い騎士いわゆる従騎士が昇格することで転職できる。
盾による武技<盾打閃>など盾専門の盾手騎士が派生する。
◆盾手騎士
盾による防御専門の重騎士の職種。<盾打閃>によるカウンター攻撃を得意とする。
3近接物理支援型
基礎五役職原型の補完役職に該当し、徒党の足りない部分を補う特殊技能職種型。基本、近接型は魔導災害獣などと近距離で向き合うため、外向的性格が多いが、支援型のせいか、性格は内向的で、感覚を重んじる型が多い。戦闘能力は低いが、それを補う能力を持ち、その能力で支援に徹する。
◆盗賊
基礎五役職の補完役職の代表例で、その特殊技能で、徒党に足りない部分を補う。俊敏性に優れ、足音を消して移動したり、隠密行動を得意とする。罠の解除と共に罠を見破るなど洞察力にも優れ、開錠技能など手先の器用さからその生業にも関わらず重宝される。
戦闘能力は低いが、俊敏性を生かし敵を誘引したり、戦闘中は撹乱などで支援に徹する。戦闘前は最前衛に就くが、敵の発見後、速やかに中央前衛(セカンドトップ)と交代する。
◆斥候
盗賊から派生した職種。盗賊の技術・能力をほぼ踏襲するが、それを悪用させない誓いを立てさせ、警察組織や護民官が、末端の非公認協力者いわゆる密偵として、雇用したのが始まりである。.
犯罪捜査や捕り物の手先として、ソードブレイカーなどの捕具を与えられた彼らは、隠語でソードブレイカーや蜘蛛と呼ばれる。食うために盗賊に身を落とす者に対して、スカウティング技術の習得を通して盗むことなく生きていけるよう自立を促す互助組織がスカウトギルドである。
スカウトギルドは、貧しい年少の子供にも積極的に勧誘を行い、誓いと掟の下、潜索活動や野外活動の訓練を行う。戦場冒険者の斥候をウォースカウト、迷宮冒険者のスカウトは、ダンジョンスカウトと呼ぶように、それぞれ活躍する場に特化した斥候である。
4近接物魔両用攻撃型
付加魔術により、物理と魔導を兼ね備えた物魔両用複合型である。純粋な近接物理型の上位互換と言える。魔装戦士型を原型とする。
◆氣剣士
生体強化型の魔装戦士。生霊魔法を習得することで、剣士が昇格する。
自らの幽体の念場の振動が、同じ周波数で共鳴する受身側に伝わり、肉体に霊気が流れる。この念気共鳴いわゆる<共命>現象を通して霊気を補充し、生体強化する。攻撃力はもとより、機動力から回避能力まであらゆる面で能力が上がる。
◆氣拳士
神との合一<神合成>を目指す修業の一環として生霊魔法いわゆる氣を利用した拳法が生まれ、神聖王国の三星山聖雲寺拳法のように、氣を習得した武僧<氣拳士>は、氣療士と共に迷宮潜索においても重宝された。
ソフィスト教秘教にのみに秘かに伝えられた生霊魔法の秘蹟は、マジックルネサンスなどを経て巷間にも広まり、拳闘士が生霊魔法を習得した場合も、氣拳士と呼ばれるようになった。
拳闘士の弱点である防御力の低さを霊気により、粘弾性が変化する霊気粘性流体いわゆる氣を身に纏うことで、カバーしつつ、攻撃力に転化する。特に浸透勁と呼ばれる武技は、過負荷の高圧霊流を掌底に乗せることで、魔導災害獣の硬い皮膚を通すことができる。
硬い毛皮で覆われた内部器官を損傷させたり、霊気ショックにより昏倒させたり、人だけでなく、魔導災害獣にも有用な武技のため、その習得は必須となる。
◆獣化士
森殿管理官いわゆる森官系の獣を祖霊とする祖霊信仰に基づき、自らに憑依させることで、獣化現象を起こし、脅威的な身体能力を得る職種。
戦闘能力は氣拳士と同等もしくはそれ以上と言われる。質量と結び付き、物体を物体たらしめる固有の情報〈形相〉の形相記憶効果により、怪我をしても憑依した幽体の形に戻ろうとし、驚異的な回復力を誇る。
獣性を剥き出しに戦闘能力を得る代償として理性を失い、魔境性人格障害の症状として狂化状態に陥る危険性がある。肉体の強化に比例して精神の狂化が進む傾向があり、獣化士はやがて狂化士へと昇格する。
また魔薬により、ドーピングを行う殉殺士や悪霊や悪鬼が憑くことで狂化状態を引き起こすこともあり、いずれも狂化士の一種として分類される。
竜を憑依させる竜化士が重騎士を副職種とした場合、竜騎士に転職できる。竜を外向召喚し、騎乗する喚操竜騎兵士いわゆる竜騎兵士と似ているが、別の職種である。
◆呪刻戦士
森官戦士が、ルーンをその身に刻み、呪紋刺青による生体強化を行う。大剣などを主武器とし、森官戦士の中でも特に攻撃に特化した職種。
◆魔槍士
召喚した精霊による属精武器など魔装武器である<魔槍>で戦う魔装戦士。
攻撃重視の焔属精、スピード重視の風属精、スピードと攻撃重視の雷属精など属精次第でその一撃は必殺となる。
5近接物魔両用防御型
◆金剛騎士
生霊魔法を習得した重騎士が昇格する。通常の装備に加えて、霊氣により、粘弾性が変化する霊気粘性流体を身に纏い、この流体装甲によりその防御力は、金剛の名を冠するにふさわしいほど硬い。
また<超剛筋>の術式により、霊気粘性流体を人工錬筋として、金剛力と呼ばれる膂力を得る。超人的な筋力により、弱点の鈍重さも解消するほど機敏に動くこともできる。
◆鋼城騎士
城塞並みの防御力を誇る金剛騎士の上級職種。経験とカリスマを得て司卿へと昇格する。従騎士→重騎士→金剛騎士→鋼城騎士→司卿。
◆剣舞士
元々回避能力が高い刺剣士が、生霊魔法を習得することで、昇格する。主に回避盾役職を務める。まるで舞うように、回避する能力は、もはや芸術といっていい域まで高められていて、氣を見て氣先を制する見氣りの能力によるところが大きい。
◆舞刀士
武刀士が、生霊魔法を習得し、昇格する。能力・役割共に剣舞士と同じで見氣りによる回避盾役を務め、一撃離脱戦法により敵を翻弄する。
◆誓騎士
祈願者、呼び出す者の意味。天使憑きの一種に分類される。神に祈願し、守護天使を代理人として誓約を交わす。誓約に基づき、常駐する守護天使と念気共鳴することで、念場の振動が、同じ周波数で共振する受身側に伝わり、霊気が流れる。
いわゆる<共神>現象により、神聖魔法付加魔術として神の恩寵・加護を常時得ることができる。精神力(念力)と生命力(霊気)いわゆる霊念力を補充されることで、信仰心を力の源として、念力障壁を無意識に展開できる。防御力はもとより、高揚感と共に相互誘起する霊気が、肉体に加わり、身体能力も向上する。
この誓約は心禁拘束の一種で、古代語魔法ではゲッシュと呼ばれる神禁拘束である。成約する限り加護を得られが、破れば、恩寵は呪詛となって誓約者にふりかかる。
職種としては、加護により精神抵抗力が非常に高い。念気共鳴を遠隔輸気治療に流用し、氣療士を副職種とすることで、支援・防御の聖騎士へ、護法士を副職種とすることで、防御特化の神護騎士へ、退魔士や裁法士を副職種とすることで攻撃特化の討罰騎士へと昇格する。
◆神護騎士
誓騎士の上級職種。護法士を副職種とし、昇格する。憑依する守護天使の位階が誓騎士より高い。
精神安全のため構築した精神防御結界である霊離層障壁に物理防御を加え、より防御に特化した職種。
6近接物魔両用支援型
◆悪党
盗賊が生霊魔法を習得し転職する上級職種。特に気配断絶や暗器による一撃必殺の奇襲を得意とした。また軽気功による身のこなしの軽さは、軽業な機動・逃走を可能とし、盗賊の生業だけでなく、迷宮潜索にも役立つ。
◆盗殺士
悪党の上級職種。盗賊ギルド間抗争で各一家が抱えた用心棒や刺客に端を発し、その暗殺能力を生かし冒険者としても活動した。
後衛型
7遠隔物理攻撃型
後衛は基本的に内向的な性格が多いとされ、特に純粋物理攻撃型は直観に優れる。
◆弓撃士
いわゆるシューティングアタッカーで、射撃武器として弓を使用する。純粋なシューターであり、狙撃に特化した者を指す。
シューティングアタッカーとしては魔術射撃を得意とする魔砲手と双璧を成す。魔術射撃に威力・有効範囲では劣るものの、速射性や扱いやすさ、命中精度など弓の種類によっては優れる点も多い。
主に単弓、強化弓、複合弓に分かれるが、射程距離と威力に比例して、引く力即ち筋力と技量が必要とされる。武頼漢の弓撃士を武弓士と呼ぶ。
8遠隔物理防御型
◆従騎士
徒党において後衛兵と呼ばれる戦闘配置につく。騎士に付き従い、盾持ちを務める従騎士は、前線に立ち、徒党全体を守る重騎士など盾役職に対して、予備役として後方に控える。
大冒険時代初期、詠唱時の霊圧の変圧いわゆる意識変性状態により無防備な魔砲手や気療士には、後方からの奇襲攻撃に対して護衛が必要で、比較的自由な従騎士が後方哨戒や護衛役を担った。
遠隔霊気治療技術の発達や魔法発動工程の簡略化と共に、その意義は失われ、逆に自由な立ち位置を利用して、攻撃参加も行う攻撃的な従騎士も現れた。
通称、高貴なる従騎士は、一時代を築いたが、徒党役職の能率向上のため、新たに生まれた中衛にその役割を譲り、現在では重騎士に昇格する修行の一環として務める元の意味合いが強い。
9遠隔物理支援型
◆戦教師
後方において戦闘面での助言として作戦立案や徒党の戦闘訓練などを担う職種。様々な知識特に魔導の知識に精通し、善意の神聖魔法系魔導師<賢者>が、その豊富な知識を生かし、徒党戦闘における助言役や指揮を担っていた。
やがて徒党の細分化・分業化に伴い徒党の指揮管理職種が新たに創設され、徒党戦闘の戦術を専門とする戦教師が賢者から独立した。
白導師いわゆる護法士が昇格する場合が多いが、基本的に頭脳と知識さえあれば魔法が使えなくてもなれる。その場合、戦闘能力は皆無となるが。徒党は公募に従って、臨時に募集された側面が強いので、バラバラな冒険者をまとめるには訓練が必要不可欠であった。
ただ、実力主義で一癖も二癖もある冒険者を従わせるには其れ相応の実力が求められる。鋼城騎士や聖騎士の上級職種<司卿>と専属契約を結ぶことが多い。戦争において戦略を扱う戦操士や司卿と戦教師を兼ねた戦卿士に昇格できる。
◆荷役
厳密には戦闘職種ではないが、戦闘支援職として徒党でも戦闘職が自由に戦うのに必要な職種である。徒党の補給物資の運搬・管理を担当する。
軍隊で言えば、兵站の輸送兵に該当する重要な職種である。また熟練の荷役は、迷宮の豊富な知識から斥候や迷宮案内人に転職できる。
荷物を持って迷宮潜索するには筋力・持久力などの基礎体力が求められ、駆け出しの新人冒険者や騎士見習い<従騎士>が、実戦訓練の意味も含めて荷役になることも多い。
10遠隔魔導攻撃型
◆魔砲手
基本五役職の杖役職に相当する。魔法使いの代表職種である。投射魔術により魔術射撃を行うマジックシューティングアタッカーの総合職種で、生霊魔法による氣弾士や氣砲士、属性射撃を行う精霊魔法系、はたまた暗黒魔法の超怨波攻撃に古代語魔法系の竜咆撃までも含め魔砲手としている。その職種の多彩さは近接物理攻撃型と双璧を成す。
◆喚鬼士
魔神を崇める暗黒魔法系闇司祭職の一つ。悪鬼を外向召喚する喚鬼型。本人を霊魂供与者として悪鬼を霊魂受容者として契約を交わすことで、悪鬼を喚鬼し、使役する。
地獄界下層の住人<悪鬼>は、霊離念性体いわゆる星幽体と霊体で構成されるため、精神強制憑依の発動条件が、相手と目を合わせるだけの邪眼能力など遠隔精神攻撃に滅法強い。
そのため、遠隔魔導攻撃型に分類される。契約に基づき、召喚する度に喚鬼士即ち人間と悪鬼との魂核融合が進み、精神能力だけでなく、身体能力までも悪鬼化する。最終的には悪鬼と人間が魂魄融合した変異体<魔族>や魔人へと変貌する。
◆退魔士
氣療士の除霊や聖別などの精神衛生の役割が、職種の細分化に伴い独立し、精神衛生士<衛聖士>が派生した。中でも悪霊や悪鬼に対して、攻撃目的に除霊を行うソフィスト教会公認の専門職種を退魔士と呼ぶ。
ただ除霊系は、普通の人間との戦闘においては効果がない。そこで対人戦闘において封印系の呪縛術式で、精神体いわゆる星幽体を呪縛する裁法士が派生した。
11遠隔魔導防御型
◆護法士
白導師を指す。魔導特に情報魔法技術に対する知識や造詣が深く、常人より魔法技術に優れた者を魔導師と呼ぶが、神聖魔法では<賢者>と呼ぶ。
賢者は人の内側いわゆる霊脳空間の知識に精通し、中でも怨波などの霊念波障害(霊障)対策や悪霊などの強制憑依に対して、精神安全のため、霊離層結界を張る専門職種を護法士と呼ぶ。
護法士には守護天使を外向召喚し、憑添霊いわゆる守護霊として対象に派遣し、守り手とする喚護士や反呪をはじめ様々な結界を極めた界護士などの職種が派生する。
12遠隔魔導支援型
◆呪法士
暗黒魔法系闇司祭職の一つで魔導の知識に精通し、その知識を悪用する魔導師を指す。黒導師とも言う。自らの肉体から遊離した霊離念性体いわゆる星幽体で対象に強制憑依する遠隔精神攻撃や怨波による怨響性外傷いわゆる呪詛或いは幻覚で状態異常を引き起こし、敵を弱体化・妨害することで支援する。
喚鬼士よりは、精神攻撃能力は劣る。また廃人や肉体に戻れなくなる危険はあるが、少なくとも<魔族化>することはない。
霊離念性体を遠くに飛ばす遠隔観測に伴う索敵能力も高い。魔物や魔導災害獣に強制憑依することで、魔物や魔導災害獣をペットのように、自由に操ることもでき、それ専門の職種<操獣士>が派生する。
◆氣療士
基礎五役職の杯役職に相当する。僧侶を原型とし、僧侶の徒党における役割いわゆる霊気治療任務が専門職種化し、氣療士が生まれた。命の番人という戦闘配置につき、徒党になくてはならない必須職種である。
輸氣治療による身体的な治療だけでなく、陽サイオン(正の霊荷を持つ荷霊源子)で悪霊などの陰サイオンを中和する除霊治療にも長ける。命の番人として徒党内の生存状況を強化・管理し、徒党の生命線を支える。
特に輸氣治療は接触による近接霊気治療だけではなく、戦闘中に念気共鳴で受身させる遠隔治療能力、更に上級になると、聖域内の全てのものを治療する範囲霊気治療能力が求められる。それぞれ侍祭級氣療士、司祭級氣療士、司教級氣療士と呼ぶ。更に<神光呼吸>など死者蘇生の秘蹟いわゆる奇蹟を扱う枢機卿級がある。
徒党役職の細分化による効率化のため、氣功系輸氣肉体治療、精神衛生系除霊治療に、怨波による霊念波障害いわゆる霊障を防ぐ防呪結界など気療士としての主な役割から除霊を専門とする退魔士、精神安全を専門とする護法士が派生した。退魔士、護法士、氣療士を僧侶三職種と呼ぶ。
◆賢者
賢人とも呼ばれる。英雄の助言役として、その職種は古くから存在する。魔導特に情報魔法技術に対する造詣が深く、護法士の上級職種に当たる。情報の共有化による指揮系統を構築し、戦闘指令の伝達や情報戦を担当するなど指揮を補佐した。指揮系統の補佐特に作戦立案が戦教師として独立した。
◆森官
森の賢者の意味で、森を神殿とする森殿管理官の略称。賢者の一種で、特に自然信仰として、精霊信仰や祖霊信仰を司る。自然の持つ魔力例えば森の生氣による治癒やルーンの力を体に刻んだ呪紋刺青などを特徴とする。吟遊詩人や森官戦士が派生する。
◆符加士
セレス月華帝国発祥の民間魔道教に端を発し、魔道の達人を目指す符咒派は、紙や札に呪符として符号化した呪文と魔力を込めた。護符として古代神の持つ様々な特殊な力を対象に符加でき、製作の知識を独占することで、呪符魔術師は民間で独自の地位を築いた。
自動書機による活版印刷技術の発達と呪符の海賊版が出回ることで、呪符魔術師は、その地位を失い、現在は冒険事業の一職種に甘んじている。呪符の用途は幅広いが、呪符カードを味方に付加することに特化し、支援役として重宝された呪符魔術師は、符加士と呼ばれる。
◆吟遊詩人
森官の一部の職能が、森官から独立し、詩や曲を作り、各地に訪れて歌う職種<吟遊詩人>となった。元々森官の祈祷に起源するその歌いわゆる呪歌には魔韻が含まれており、場を清め、福を呼び込み、災いや魔物を避ける魔除けの効果がある。
直接的な戦闘能力は皆無に近いが、味方に祝福を授け、戦意高揚による戦闘能力の向上、魔除けによる敵の足止めや森の祝福による治療など様々な効果を味方に授け、徒党を支援する。吟遊詩人達はジャグリングと呼ばれる曲芸に優れ、大道芸人として、隠者が潜入工作をする際の偽職種に利用された。
複合型
複合型は主職種と副職種を兼任する複職種制度により、組み合わせる職種次第で無数のバリエーションが発生する。武装複合は近接物魔両用型として、距離複合型、任務複合に分けられるが、距離と武装の両方が複合したり、武装と任務が複合する重複型通称万能型を加える。
13距離複合型
遠隔と近接の複合型で、中距離型や中衛型と呼ばれる。
◆司卿
強いカリスマ性を持った鋼城騎士や聖騎士が昇格する職種。職種の細分化・分業化に伴い、新設された徒党の指揮管理職種として、戦闘を指揮する。
カリスマはもとより、檄を飛ばしながら味方を鼓舞し、リーダーシップを発揮するには、其れ相応の実力が求められる。故に中央前衛として、戦闘経験を積んだ騎士系が昇格する場合が多い。
戦闘配置は、前衛と後衛を連動させる中衛の<リンクガード>を務め、指揮管理職種として指揮に専念する。必要不可欠な作戦立案能力を補うため、戦教師と専属契約を結んだり、また自ら副職種として戦教師を専攻する場合もある。後者を戦卿士と呼び、機会を見れば自ら攻め上がる攻撃的な中衛として知られる。
◆武将
武頼漢版の司卿。
14任務複合型
攻撃、防御、支援など様々な任務を兼務する複合型。
◆刺剣士
近接物理兼務型。細剣など片手剣を使用する軽装戦士系。軽装に身を固め、一撃の威力は劣るが、フェイントを織り交ぜた手数と精密な刺突により、急所を狙う。蝶のように舞い、蜂のように刺す一撃離脱戦法を得意とする。
基本的には近接物理攻撃型だが、敵を引き付けるその特性から回避盾役もこなす。生霊魔法を習得することで、剣舞士へ昇格する。
◆暴剣士
近接物理兼務型。盗賊や斥候が剣技を習得し、昇格した職種。盗賊系の俊敏さを生かし、片手剣と盾で戦う戦闘スタイルである。向こう見ずに前線に飛び出し、騒がしく盾を打ち鳴らしながら、魔導災害獣いわゆる魔獣を挑発する扇動能力に長ける。
基本的には派手な近接物理攻撃型だが、その扇動能力と回避能力を生かし、擬似的に回避盾役を務めることも可能。一見自慢屋で無謀に見えるが、その行動は抜け目がなく、緻密な計算に基づく。
◆拳闘士
近接物理兼務型。軽装戦士系で、打撃を中心とした格闘技に優れる。これに対して組み技中心とした格闘家を組技手と呼ぶ。防御力を代償に得た俊敏さを生かし、一撃離脱で敵を引き付ける回避盾役型と接近戦を得意とする近接戦闘型の二つの型がいる。
防御力の問題から人と違い、魔物と素手で戦うのは其れ相応の胆力が要求され、近接戦闘型の拳闘士は希少とされる。
◆式法士
遠隔魔導兼務型。式や式神と呼ばれる半自律型仮想精霊<人工精霊>を任意に起動することで、呪紋式土偶兵いわゆる魔動兵や死体を操ったり、式による半自律攻撃や罠に利用する。
呪符魔術師<符咒士>の中でも特に式神を専門とし、遠隔魔導攻撃や防御、支援もこなす。魔動兵の遠隔操縦を専門とする操像力士や蟲型の式を専門とする蟲毒士などが派生する。
◆操獣士
遠隔魔導兼務型。野良の魔導災害獣や獣に精神強制憑依で刷込を施し、操る職種。遠隔魔導攻撃から防御、支援もこなす。野生竜の場合、操竜士と呼ばれ、このようにテイマーの前に、馴致する生物の名前をつける。正式に対等の召喚契約を交わす場合、喚操獣士と呼び、一応区別はしている。
◆死操士
遠隔魔導兼務型。暗黒魔法系闇司祭職の一つ。幽霊や亡霊などいわゆる精神寄生体を死体に強制憑依させ操ることに特化している。遠隔魔導攻撃から防御に支援もこなす。死体が量産される戦場冒険者いわゆる傭兵にとって死操士は、脅威であり、本体の居場所を特定することは至上命題とされた。
中でも自らをアンデッド化した者は、死令者と呼ばれる存在に転職ではなく転生する。歴史上、炎魔大王と呼ばれた闇朝の闇エル=フ王イルブリードは拝火教の司祭として、闇帝国建国の際、死皇帝を号するなど数体の死令卿の存在が確認されている。
◆精令騎士
精霊と契約し、外向召喚することで、使役する職種。火力による攻撃特化の火精や速度重視の風精、防御や耐久性に定評のある地精、補助などの水精と使役する精霊によりその任務が左右され、それ故に遠隔魔導兼務型に分類される。精霊の制御には意識を集中しなければならず、その間、無防備になる弱点がある。
また扱う精霊の数が増えれば増えるほど、威力に比例して制御は難しくなり、制御を離れた精霊が使役者を攻撃する危険性もある。中には風精を偵察に、火精を攻撃に、地精を防御、水精を補助として一人で単独潜索する猛者もいる。
15重複型
距離、武装、任務の組み合わせが重複して複合する型。万能型とも。
◆操獣騎士
遠近物魔両用兼務型いわゆる万能型。操獣士を副職種としと重騎士を主職種する複職種。基本的に操獣士は、魔導災害獣などを前線に出して自らは後方で指揮するが、操獣騎士は文字通り騎乗し、自ら前線で戦う役職である。
高い機動力を生かした重装騎乗の突撃打撃力や騎乗する魔獣による遠隔魔導攻撃は類を見ないが、迷宮ではその威力は制限される。戦場でこそ真価を発揮する職種である。高い機動力により遠距離から瞬時に突撃する攻撃力を持ち、または迂回して奇襲などその間合いは他の職種と比べても群を抜く。
偵察任務、伝令任務、哨戒任務など後方支援も担い、距離、武装、任務全てが複合する重複型いわゆる万能型に分類される。その上級職種が喚操竜騎兵士いわゆる竜騎兵士である。
◆聖騎士
いわゆる万能型。誓騎士が念気共鳴を流用し、氣療士を副職種として専攻することで、昇格する。天使の位階が誓騎士より高く、加護・恩寵も大きい。
念気共鳴による輸氣治療を行うことで、敵から狙われやすく、敵をひきつける敵群支配にも長ける。上級職種には司卿や戦卿士がある。
◆森官戦士
いわゆる万能型に属する。野伏が大森林時代にまで遡る古エル=フの森林信仰を受け継ぎ、森を<森殿>とし、その祭祀を務める<森官>を副職種とすることで、森の番人たる森官戦士に昇格する。
森官は特定の植物や精霊信仰を持つため、森官戦士も精霊魔法にも精通する。森官は森林の生氣を吸収することで、霊気治療などの生霊魔法の扱いにも長け、森官戦士はそれを生体強化に応用することで、接近戦をもこなす。
森林や密林では無類の強さを発揮する。多くは中央前衛で、盾役職を務める。
◆閃刀士
距離と武装が複合する遠近物魔両用攻撃型。武刀士が生霊魔法と高速抜刀術<居合い>を習得することで派生する。生体強化での近接戦闘は勿論、<飛氣斬>や<氣爆>などの投射魔術と<居合い>を組み合わせ、<射合い>として遠隔攻撃をもこなす。
◆野伏
距離と任務が重複する遠近物理兼務型。魔境を冒険する魔境斥候は、魔導災害獣を狩る射撃武器を扱い、斥候と弓撃士を兼ねた野伏と呼ばれる複職種へ昇格できる。索敵など隠密行動の他、罠や機動力を生かした弓矢による狙撃などを得意とする。
◆山伏
武僧の一種であり、山岳における野伏でもある。野伏の派生職種に位置づけられる。山岳信仰に基づき、山の持つ生氣を吸収することで、生体強化を行う武僧<氣拳士>に昇格する。
◆殉殺士
万能型。暗黒魔法系の職種で、黒導師いわゆる呪法士が禁断の魔薬によるドーピングに手を出すことで派生する。
怨響性外傷いわゆる呪詛精神攻撃や幻覚などで、敵を惑わし、弱体化させ、痛みも恐怖も感じず、制限されている身体能力を限界まで引き出し、弱体化した敵にとどめをさす。宗教的な意味合いが強く、魔薬の副作用から狂化状態を引き起こし、狂化士の一種で<殉狂騎士>へと昇格する。
◆隠者
遠近物魔両用兼務型いわゆる万能型。カムト神武皇国へ渡来したソフィスト教秘教隠道士が、現地の土着信仰と習合し、掌中亜大陸に逆輸入された職種。山の生氣で生体強化した山伏が、魔神を信仰する暗黒魔法系や古代神を信仰する古代語魔法系が習合した東方独自の魔法技術体系<隠術>を習得して昇格する。
気配を断ち、投擲用短刀による中距離投擲を行ったり、氣で強化した体術で軽業な機動や接近戦をこなす。
◆竜騎士
いわゆる万能型。獣化士の上級職種<竜化士>と重騎士の複職種。竜化騎士や竜鱗騎士、単に竜騎士と言う。
魂核融合永久活動体である竜を自らに内向召喚させ、竜の念場の振動が、同じ周波数で共振する受身側に伝わり、霊気が流れる。この<共命>現象を通して竜と人間の魂核が融合し、竜人と化す。
女性の場合は竜女。竜鱗による防御力は勿論、形相記憶効果による自己自然治癒力を生かし、氣療法士いらずの盾役職もこなせる。また古代語魔法の一種<竜語魔法>の使い手でもあり、咆哮魔術による遠隔咆撃は、威力は勿論、起動の速さや咆哮に付随する竜の恐怖効果からも恐れられる。