迷宮潜索入門
冒険者は、その活躍する場で名称を変える。例えは戦場冒険者は傭兵と呼ばれ、魔境冒険者は咒猟士、そして迷宮冒険者を潜索者と呼ぶ。場が違えば、戦う相手も当然変わり、それに合わせてやり方も違ってくる。
ここでは迷宮潜索を行う上での必要な知識について見ていくことにしよう。
□迷宮潜索とは
迷宮潜索とは文字通り、地下迷宮に潜り、探索活動を行うことである。迷宮とは魔導災害警戒区域及び魔導災害特別警戒区域を指し、魔導災害非常事態宣言特別法いわゆる07に基づいて、国家により指定・公示された区域や地域のことである。
迷宮自体が地下霊気エネルギーいわゆる地脈を利用し、魔界と直結する巨大積層型立体魔封陣とする召喚陣説や迷宮が生きていて、自己防衛本能に基づく免疫機能が魔物とする生命体説など諸説あるが、迷宮の正体は明らかになっていない。
いずれにせよ、迷宮は元々魔導災害指定された危険区域であり、原則、結界などにより封印処理され、迷宮警備隊により立ち入りは制限されている。
大冒険時代初期には、国王の認可の下、冒険商人を出資・後援者として公募冒険隊が立ち入り調査を名目に送り込まれた。公募とは、主に商業目的に、冒険者を募り、迷宮へ挑む形式を指す。政府への潜索料、装備や運搬資材など物資の調達はたまた迷宮案内人の雇用など潜索にかかる必要経費の負担軽減のため、公募主が出資者として肩代わりし、代わりに戦利品の独占販売権を得ることができる。
数々の公募冒険隊が迷宮に挑戦し、その多くは二度と帰って来ることはなかったが、一部の者が迷宮踏破を成し遂げた。彼らは迷宮の深淵に手を届かせた者として到達者と呼ばれた。
到達者の成功以降、迷宮が魔鉱石などの鉱物資源、魔獣の部位や薬草などの生物資源、魔宝など魔法技術の遺物いわゆる魔宝の宝庫と気づいた列強諸国はこぞって迷宮攻略に乗り出した。以来、冒険者の育成をはじめ国を挙げて迷宮攻略が推奨され、本来立ち入り禁止の迷宮は、免許を持つ潜索者に解放され、現在に至る。
□冒険者組合
迷宮は免許証札がないと潜れない。この免許いわゆるステータスカードを発行しているのが、冒険者組合である。
冒険者組合の起源は冒険商人組合にある。大冒険時代、一部の新興冒険商人達は、公募冒険隊に出資することで、様々な戦利品例えば魔物の毛皮や新種の薬草、魔鉱石などの原料を確保・独占した。
彼らは既存の外国資本商人に対抗して、冒険商人組合を立ち上げ、重商主義政策を掲げる王権との結びつきを強めた。冒険事業による莫大な富を背景に、賦課金の上納や行政機関への参入を行い、やがて法衣貴族と呼ばれるようになった。富を独占する彼らに対し雇われ冒険者達は、反発を強め、職種別の同職組合を結成した。
職種はそれぞれの技能に合わせて戦闘時の役割を分担し、分業化することで、効率や生存率を高める徒党制度に由来する。盗賊組合や剣士組合という風に、戦闘に携わる戦闘職以外にも迷宮で確保した原料を製造販売する手工業いわゆる生産職も同職組合に含まれる。
こうした同職組合間の対立を調停するため各職種組合の代表者により、議決機関<参事会>が立ち上げられ、冒険者組合長が議長を務めた。
冒険者組合は、冒険商人組合に対抗するため、冒険者から直接迷宮産原料の買取いわゆる換金業務や買取原料の生産系の同職へ販売業務の他、免許証札の発行や冒険者養成所の指定などの免許業務や参事会の運営業務そして本業とも言える公募に基づく仕事斡旋業務などその仕事は多岐に渡る。
□冒険免許の取得
魔導災害非常事態宣言特別法いわゆる07に基づき、迷宮や魔境などは、立ち入りは制限されており、冒険免許取得者は、立ち入り調査を特別に認可された者を指す。原則、国王の認可なしに魔境や迷宮に入った者は逮捕される。
免許証札別名ステータスカードを取得するには、直接、冒険者組合会館に隣接する冒険者免許試験場(免許センター)に行き、適性・技能・学科の三つの試験の仮免許試験、本免許試験を受けて合格し、取得する方法いわゆる飛び込みと冒険者組合が指定する公認の指定冒険者養成所へ入所し、卒業検定に合格する方法がある。
冒険者免許試験場で、技能や学科の試験を受ける方法は難関だが、費用は指定冒険者養成所ほど、かからない。ほとんど新規冒険者は、指定冒険者養成所と言われるが、入所費用が高いという難点がある。
受験資格年齢は、国や冒険免許の区分や種類によって異なる。
◆第一種魔境冒険免許
一部、魔界の門が開き、魔界との境界を形成する地域いわゆる魔境において魔法の矢を駆使した狩猟いわゆる咒猟免許である。禁猟区域である魔境への立ち入り認可及び魔導災害獣いわゆる魔獣の駆除等を認める許可を指す。
冒険者は地域によってその役割に偏りがある。例えば魔境近くの冒険者ギルドには、咒猟免許資格者が集まり、実質、咒猟士組合と化している。
主に四つの種類がある。
・小型咒猟免許
組合等級が二級から五級に相当し、小型魔獣の咒猟が可能となる。
・中型咒猟免許
組合等級が、六級から九級に相当し、中型魔獣の咒猟が可能となる。
・大型咒猟免許
組合等級が十級、J(臣下)級、Q(女王)級、K(王)級が必要とされ、大型魔獣の咒猟が可能となる。
・特殊咒猟免許
組合等級がA(最高)級にのみ与えられる。特殊魔導災害獣を狩る。
◆第二種迷宮冒険免許
迷宮潜索免許を指す。基本的に第一種と同じであるが、
・上層潜索免許
組合等級が二級から五級に相当し、迷宮の浅い階層への潜索が可能となる。
・中層潜索免許
組合等級六級から九級に相当し、中層への潜索が可能となる。
・下層潜索免許
組合等級が十級、J(臣下)級、Q(女王)級、K(王)級が必要とされ、下層への潜索が可能となる。
・特殊(深層)潜索免許
組合等級が、A(最高)級で最下層いわゆる深層に到達した到達者に与えられる。
という風に名称は変わる。
◆第三種戦場冒険免許
戦場冒険者いわゆる傭兵の冒険免許である。他の二種と違い、その活躍の場たる戦場に立ち入るのは自由であり、技能も他の二種に比べ必要でないため、最も敷居が低い免許である。
大冒険時代、冒険商人と結び、王権を強めた国王は、軍隊の維持いわゆる常備軍を冒険商人お抱えの冒険傭兵旅団から起用した。中でも故国の魔法を巡る政争から逃れ移民したカムト神武皇国人は、その勇猛さと忠誠心で名を馳せた。
武技保持者である彼らは、武のみを頼りに生きる武頼漢として、ド派手な武装で戦場を駆ける華武鬼者や武刀士と呼ばれた。
・人級
組合等級が二級から五級に相当。
・地級
組合等級が、六級から九級に相当。
・天級
組合等級が、十級、J(臣下)級、Q(女王)級、K(王)級に相当。
・天元級
組合等級が、A(最高)級で天級の元になるという意味。
組合等級
組合等級は十三階級に分かれ以外の通りである。
A級
ーーーー
K級
Q級
J級
十級
ーーーー
九級
八級
七級
六級
ーーーー
五級
四級
三級
二級
□迷宮遭難対策
迷宮は年間三万を超える帰還困難者いわゆる遭難者を出す。迷宮に潜る前の事前対策としては、潜索経験者例えば迷宮案内人を最低一人は確保し、初心者が潜るにしても、事前調査や武装など装備品の充実、そして十分な訓練を行い、迷宮を侮らないことが重要である。
党主は率先して事前調査や党員との情報の共有化を行い、自分の組合等級に合った公募や迷宮選びが重要となる。迷宮は魔導災害警戒レベルに従って七つのレベルに分けられる。
・レベル1
精神ウイルスレベル1幽霊など個体及び地域社会に対する低危険度。
・レベル2
精神ウイルスレベル2亡霊など個体に対する中危険度、地域社会に対する軽危険度。
・レベル3
精神ウイルスレベル3死霊など個体に対する高い危険度、地域社会に対する低い危険度。
・レベル4
精神ウイルスレベル4邪霊など個体、地域社会とも高い危険度を指す。
・レベル5
精神ウイルスレベルレベル5妖霊や災害指定された伝承級の呪物など人類社会に対する高い危険度。
・レベル6
伝説級の魔装武器いわゆる魔宝など人類社会全体に対する脅威。
・レベル7
神話級即ち魔神や古巨神族や古竜族などを想定したものとなっている。
各党員は地図の読み方や手信号などの基本知識及び非常食や飲用霊薬の携帯など基本となる迷宮対策を行う必要がある。
魔界との境目いわゆる魔境から魔界へと至る場合もあるので、暑さ寒さ対策は勿論、悪性の怨霧質いわゆる瘴気対策として、防呪覆面など持参した方がいい。深く潜れば潜る程、脳機能が低下し、判断力の低下や幻覚症状を起こすいわゆる潜脳病対策として訓練や魔境性人格障害にも気をつけたい。
また潜索前に、潜索計画書を提出するのも遭難対策の一環である。
□徒党システム
遭難対策の一環として徒党システムを多くの冒険者が採用している。徒党とは公募に則り迷宮潜索という共通の目的のため、複数の仲間や一味と組み、戦闘においては互いが決められた役割を果たし連携することで、戦術の幅を広げ生存率を高める基本システムである。
経験豊富な党主と非常時には党主となる副党主を選任し、党主は、判断・決断内容を党員と協議共有しながら、決断する責任を負う。徒党間の不和や迷宮の気候変化には細心の注意を払いつつ人命を最優先に時には撤退の判断を下すのもいい党主の素質である。これに対して単独で潜ること単独潜索と呼ぶ。
徒党では戦闘配置ごとに役割があり、大冒険時代初期には五つの戦闘職種が戦闘配置につくことを役職と呼んだ。役職は、数々の迷宮の深層に到達した到達者一党<五防星>を元に、絵札のスートとジョーカーに擬えて五つに分けられる。これを基礎五役職原型理論と呼び、これに基づく徒党制度を五人制と呼ぶ。※六人制度を採用する場合もある。
近接┳攻撃型➡︎剣役職
物理┣防御型➡︎盾役職
┗支援型➡︎補完役職
遠隔┳攻撃型➡︎杖役職
魔導┣防御型➡︎杖と杯兼務
┗支援型➡︎杯役職
・剣役型(スペード(♤ ))
軽装戦士を原型とする。接近戦において物理攻撃役を務める役職。徒党のエースアタッカーが多い。物理攻撃で敵を倒す力や継戦能力が求められる。スペードを象徴とする。<五防星>で疾きこと風の如しと言われた風刃の剣士に由来する。剣役職。
・盾役型(ダイヤ(♢ ))
重装戦士を原型とする。金剛石のように、重装備による堅い防御力を誇り、囮として敵を引き付け、剣役や杖役の攻撃時間を稼ぐ。通常、杯役の後方支援を受ける。ダイヤを象徴とする。敵を近づけない様に、或いは敵の進路を妨害するため長柄武器を装備することが多い。<五防星>で動かざること山の如しと謳われた不動の重騎士に由来する。盾役職。また剣士などが、攻撃を回避することで敵を引き付け、剣と盾役を兼ねる剣盾役もある。
・杖役型(クローバー(♧ ))
いわゆる魔術師を原型とする。攻撃役の中でも後衛を務める。その役割は後方火力支援にある。弓矢や魔法の矢いわゆる魔砲による射撃に特化し、シューティングアタッカーと呼ばれる。魔術射撃は術式次第で、範囲攻撃を行うことも可能な点は弓矢より優れるが、その反面詠唱などに時間がかかる。クローバーを象徴とする。杖役職。侵掠すること火の如しと謳われた火奏の魔砲手に由来する。
・杯役型(ハート(♡ ))
僧侶を原型とし、輸氣治療の氣療士、除霊治療の退魔士、結界による防呪を扱う護法士の僧侶三職種が、それぞれの専門性を生かし、役割・業務を分担しながら、命の番人として徒党全体の生存状態を管理し、後方支援を行う役。徒党の心臓である。ハートを象徴とする。静かなること凪の如しと謳われた天才的な気療士にして冷静な指揮官である神凪の気療士に由来する。杯役職。
・補完役型
ジョーカーを象徴とし、その絵柄<宮廷道化>のイメージから大道芸人や吟遊詩人或いはそれを隠れ蓑とする盗賊が原型とされる。基本四職種に足りない部分をその特殊技能で補い、役割を補完する特殊技能職種。例えば盗賊は、罠解除の特殊な技能で徒党に足りない部分を補う。また隠微能力を生かした奇襲が、徒党を救う切り札となることもある。知られざること影の如しと謳われた影打の盗賊に由来する。
□徒党の戦闘配置
徒党の戦闘配置は大まかに、前衛、中衛、後衛の三つの戦闘配置に分かれる。大冒険時代初期には中衛はなく、前衛と後衛のみだった。現在でも少人数の徒党いわゆる五人組制度は省く場合がある。
◆前衛
前衛は最前線に位置し、索敵、攻撃と共に後衛を守る役割を持つ。三名から五名が務め、主に三(四)つのポジションがある。
・最前衛
徒党の先頭に立ち、索敵や罠の処理などを行う暫定戦闘配置。先頭に立ち、敵の発見と同時に速やかに中央前衛と交代する。交代後は遊撃前衛を務める。
・中央前衛
いわゆる盾役型の戦闘配置。トップの後ろに位置するため、セカンドトップとも呼ばれる。戦闘前こそ先頭の座を最前衛に譲るものの、敵の発見と同時に速やかに交代し、戦闘時には率先して先頭に立つ。事実上の最前衛である。
文字通り、徒党の要で、最前線のセンターで敵を引きつけ、味方が攻撃するチャンスを作る役目を負う。その立ち位置により、自ずと敵の攻撃を受ける危険が高くなる。そのため高い防御力、それを可能とする強靭な身体能力そして徒党を支えるという強い精神力が求められる。
自分の体を壁にして敵の進路をブロックすることで、味方の強襲前衛や遊撃前衛いわゆる猟兵をフリーにするいわゆるスクリーンの習得は必須である。
・強襲前衛
いわゆる剣役型の戦闘配置。接近戦の攻撃に特化した前衛である。中央前衛のやや後方に位置し、サードトップやサードアタッカーとも呼ばれる。中央前衛(セカンドトップ)の背後いわゆるスクリーンの影から飛び出し、速攻を仕掛ける。
敵がこちらの存在に気づいていない場合には切り込み隊長として、先制攻撃を仕掛け、また敵の包囲を突破し、敵陣深く切り込む機動力と打撃力が、戦況を決定づけることからエースアタッカーと呼ばれる。攻撃力の高さは遠距離、近距離の違いはあれど後述するシューティングバックの戦闘配置と双璧を成す。
遠距離攻撃に優れた後衛のシューティングアタッカー(魔砲や弓矢など射撃を武器とするポジション)と比べスピード、身体能力共に優れ、魔物との接近戦を物ともしない胆力が求められる。
・遊撃前衛
猟兵とも呼ばれる。前衛の名を冠するものの、状況を見て柔軟に敵陣の内側・外側を行き来する中衛に近い役割を持つ。暫定的な戦闘配置である最前衛で、敵の発見後、強襲前衛のすぐ後ろあたりにまで下がる戦闘配置で基本的には、強襲前衛の側面支援などサブアタッカーとしての役割を担う。中央前衛(セカンドトップ)の背後から強襲前衛と共に飛び出し、連携突破を仕掛けるなど戦闘においては投擲狙撃による奇襲や撹乱など遊撃を務める。索敵能力や身を隠す隠微能力、罠を見破る洞察力、俊敏性及び手先の器用さなど求められる能力は多岐に渡り、器用貧乏とも呼ばれる。
攻撃だけでなく、時には後方からの奇襲に備え、最後尾まで下がり、後方哨戒に当たるなど最前衛から最後尾と遊撃をこなし、俊敏さや索敵能力は勿論、体力も要求される戦闘配置である。
◆中衛
戦闘領域の中央に位置し、前衛と後衛の間にあって、両者を取り持つ戦闘配置。当初、徒党の指揮は、命の番人や中央前衛が兼任することが多かった。
しかし連携ミスによる誤射事故や氣療士の負担による成り手不足から各自の役割分担を徹底化し、戦闘行動を細分化することで、各自の負担を減らした。同時に指揮専任の戦闘配置を創設し、彼らが全体を俯瞰することで、細分化した役割を連携させた。
こうして生まれたのが中衛である。近接戦闘・長距離攻撃を可能とした魔封剣の普及と共に、中衛は一躍花形役に躍り出る。隙を見て前衛と交代する中距離突撃などの攻撃補佐、また後衛の護衛を兼ねた中衛は、指揮官として多くの名のある潜索士を輩出した。
・中央中衛
前衛と後衛を連動させる戦闘配置。五人組制度で、狭い通路など一列縦隊(1─2─1─1)で進む場合は、最前衛を盗賊系が務め、その次に中央前衛である重騎士系、強襲前衛である剣士系そして中央中衛中央中衛には命の番人を置き、後衛には魔砲手などを置く。前方で敵が発見された場合、最前衛を中央前衛である重騎士系と盗賊系が交代し、命の番人も後衛へ下がる(1─2─2)。
徒党の司令塔として機能し、敵性魔物の布陣や味方の状況など全体を俯瞰して見る広い視野とリーダーシップが要求される。
通常、党主や血盟団の団長が務めることが多い。元々、指揮兼任の負担を減らすために生まれた戦闘配置だが、裏腹に複数の職種を兼任する高位の複職種が就くことが多い。指揮だけではなく、時には中距離から魔術射撃を仕掛け敵を牽制したり、自ら中距離突進で、前線を押し上げたり味方の補佐を行う。状況に応じて臨機応変に対応するオールラウンドな能力が求められるが、攻撃的と守備的の二つの型がある。
◆後衛
徒党の後方から前衛や中衛の支援を行う戦闘配置。命の番人やシューティングアタッカーで構成される。ツーバック制やスリーバック制など戦闘隊形によりその数は変わる。
・中央後衛
シューティングアタッカーいわゆる杖役が就く戦闘配置。シューティングアタッカーとは、職種で言えば弓撃士や魔砲手が担当し、遠距離射撃による後方火力支援を行う。
遠距離射撃を専門とする純粋なシューターが多くを占め、党員に射撃機会を作ってもらう代わりに確実に敵を射抜く力が求められる。特に魔術射撃による範囲攻撃は火力の高さで言えば、徒党随一であり、戦局を一変させる力を持つ。中衛がなかった時代にはセンターバックはセンターフォワードの後ろに位置し一人だった。
しかし中央前衛との連携ミスによる誤射事故を防ぐため、左右の端いわゆるウイングに配置するツーバック制が、生まれセンターバックは廃止された。そのままセンターバックを残すスリーバック制など戦闘隊形により中央後衛はいたりいなかったりする。
・右後翼
ツーバック制ではシューティングアタッカーを命の番人
の右に配置し、右後翼と呼ぶ。スリーバック制では中央後衛の右となる。いわゆる右後翼で遠距離射撃を担当する。前方は勿論真ん中辺りの敵を射撃するには、斜めから角度をつけて狙うため、中央前衛に引きつけられた敵の死角となりやすい。
時に左後翼と協力して、十字に交差するように、左右の斜めから同時に射撃する。いわゆる十字射撃により、中央前衛を屈ませたり、下がらせたりせずに援護でき、防御にも活用できる。
・左後翼
ツーバック制ではシューティングアタッカーを命の番人のやや左斜め前に配置し、左後翼と呼ぶ。スリーバック制では中央後衛の左となる。いわゆる左後翼で遠距離射撃を担当する。
・最後尾
徒党の最後尾いわゆる杯役の戦闘配置。戦闘時は主に命の番人が務め、党員の命即ち生存と活動状況を維持或いは強化し、生命力いわゆる霊気などを後方から遠隔治療を行なうことで一括管理する。ツーバック制では最後尾の左右斜め前に左右の後翼が配置される。
最も危険な盾役職いわゆる中央前衛とを繋ぐ生命力補給線は文字通り徒党の生命線となる。そのため回復術式の効果範囲は、時に生死を分ける重要な要素となる。危険だからといってあまり下がり過ぎると救えるものも救えない。最も運動量が少なく、かつ常に全体を見渡せる戦闘配置であるため、初期には戦手全体に指示を行う重要な役割も担っていた。
□血盟集団
徒党は、公募に則り、主催者の下、一時的に集った集団としての側面が強い。これに対し血縁ではなく、血の盟約に従い、共通の目的を持つ集団を血盟集団と呼ぶ。
元々は古エル=フの森林盟約者団に起源する。エレメン精霊連合王国は魔法の火を巡る拝火百年戦争により、栄光のエル=フ率いる光朝と闇エル=フ率い闇朝に分裂した。光朝の滅亡後、難民の一派、森林七枝族は森を森殿とする大森官の下に集い、森林盟約者団を結成した。王の系譜に連なる七つの血縁団を血盟団は模倣している。
血盟団は公募ごとにそれぞれ違うメンバーが召集される徒党形式と違い、 メンバーが固定化された徒党単位で、公募に臨む。徒党と違い、慣れ親しんだメンバー間の練度は高く、いちいち連携訓練の必要もない。
また戦場冒険者の血盟団を傭兵団と呼び、魔境冒険者の血盟団を猟兵団と呼ぶ。指導者の下で二十から三十人規模で形成され、百人から千人規模の大型血盟団もある。五人から十人程度の徒党単位で班が、形成され、基本班単位で活動する。