ー鉄器時代ー
【鉄器時代】
〈暗黒時代〉
〈先住民族大移動時代〉
→掌中亜大陸バルディア中央山脈(中指山脈)黒穴山大噴火にはじまる天変地異は、世界規模の日照障害に伴う飢饉を引き起こした。飢饉により亜人を祖先とする先住民族大移動が起こった。
先住民族大移動にはじまる剣の時代=鉄器時代の到来は、上位古代語魔法時代、下位古代語魔法時代、そして魔動器時代と連綿と受け継がれた魔法の時代の終焉であった。
そしてそれは同時に五色人種即ち現世人類の時代のはじまりでもあった。相次ぐ侵入と飢饉、更に病気の蔓延は、混乱に拍車をかけ、暗黒時代と呼ばれることになる。
〜中原における先住民族大移動時代〜
数百年続いた〈暗黒時代〉により、亜人類の代わりに彼らを祖先とする先住民族が登場し、剣を持った彼らにより、魔法はその影響力を失った。
その反動として魔導政治の復興の名の下に新月朝セレス月華帝国が興った。中原中央では、各地の混乱をよそに、ウィザード官僚が権力争いに明け暮れた。権力争いに破れた魔薬王シャオ・ランは、薬指山脈ホーライ山を拠点に呪殺朝を興こす。
北方では、〈竜門海峡〉を越え中原に侵入した〈ケイロン族〉を皮切りに〈牙の民〉の侵入が活発化。泡沫海沿岸では小群島帯を経てアクレイア人など海の民が猛威をふるった。
相次ぐヴァンダリアンの侵入により、〈新月朝セレス月華帝国〉の四神都護府である〈白虎都護府〉、〈青龍都護府〉、〈黒狼都護府〉、〈紅鳳都護府〉が独立勢力化していった。
中でも〈青龍都護府〉の青龍大将軍ヤオ・ロンが独立したセレス系青龍朝は感情線河流域を支配。ウィザード教における第二身分、ソードロード(剣卿)の身分を主張し、剣の王を名乗った先住民族系剣王諸国との民族闘争を激化させていった。
〜中原ドラグント七王国時代における神聖同盟と三日月朝の成立〜
一方竜を祖霊とする森林狩猟民〈ドラグン民族〉の各部族は〈ケイロン族〉、〈牙の民〉を追って〈竜門海峡〉を越え、騎馬系先住民族大移動の第三波が中原を襲った。
襲撃にさらされた青龍朝は、王位を与えることで懐柔しようとするが、結局ドラグント大移動の波に飲み込まれ、部族ごとに分かれたドラグント七王国が興った。
一方、掌中亜大陸西部では、ドラグントの脅威を前に、〈神聖の七雄〉が改宗したソフィスト教の名の下に同盟を結んだ。
以下の七つの国々である。
旧白虎朝(白虎都護府)皇帝の姪と結婚し、王位を得た〈古リオン獅子王国〉。
先住民系海遊民族アクレイア人の〈アクレイア湖王国〉。
勢力均衡や専守防衛を説いた用兵集団〈カノン調整者同盟〉。
先住民族ケイロン族の〈ケイロニア辺境王国〉。
先住民系騎馬民族〈牙の民〉系白羊族の〈白羊朝〉。
先住海遊民族系ロマール人の〈第一次両カストゥール王国〉。
そして古エル=フの末裔と言われる〈流星民〉系〈アストラリア天王国〉。
やがてこの〈神聖同盟〉は七死七生朝と呼ばれる覇王=同盟盟主の時代を経て、〈第一次転生朝〉セイン神聖王国へと発展していった。
神聖同盟とドラグント七王国の争いが激化する中、掌中亜大陸東南部では、セレス系〈月氏五王国〉が復活したウィザード教呪殺教団の宣教工作により統一され、〈三日月朝セレス月華帝国〉が興った。
〜中原三国時代と黄金竜朝による統一〜
復活したウィザード教原理主義呪殺教団の長老タオ・シンによる〈三日月朝セレス月華帝国〉、大竜帝国の復興の名の下に、ドラグント七王国を統一した〈黄金竜朝〉、そしてソフィスト教神聖同盟に基づくセイン神聖王国の三国が分立し、中原は三国時代を迎えることになった。
ドラキア朝いわゆる第二帝国時代の聖都アイバーンの奪還を目指す不眠竜王ギルヴァルス・エルドラン率いる竜軍八旗は、セイン神聖王国侵攻を開始。対して、分裂気味の神聖王国に再征服と再統一をもたらした転輪聖王レイ八世英雄王は、抗竜の英雄として、聖座騎士団を率いた。
こうして勃発した〈第二次神竜戦争〉では、一時首都ドランゲンハーツを包囲するにまで至ったレイ英雄王だが、転生継承に異を唱えた息子ハイドラの反乱、その間隙をついた三日月朝リー・カン・フォン千夜帝による呪殺戦術に倒れることとなった。
星歴六一七年の剣ヶ原の戦いで聖座騎士団を破り、ルイーン攻略後、奪回したアイバーンでアイン独眼竜王は戴冠。黄金竜朝二代目にしてドラグント第三帝国皇帝として君臨した。
勢いに乗ったアイン独眼竜帝は〈三日月朝〉セレスの〈黒月軍〉を破ると、復活した呪殺教団の牙城〈雲の巣〉を焼き尽くし、三国時代に終止符を打った。
〜中原における北竜南龍朝時代と剣の誓約同盟〜
掌中亜大陸に統一をもたらした黄金竜朝は、七代目〈逆鱗帝〉の時代全盛期を迎えた。だが、掌中亜大陸西南部におけるセイン神聖王国の残党〈剣の誓約同盟〉との〈剣卿戦争〉や泡沫海貿易をめぐる〈ニルヴァーナ朝〉との戦争、また火竜諸島大遠征など相次ぐ戦争により、財政難を招いた。
旧七王国時代以来の部族勢力である竜牙大公国、竜角大公国、竜爪大公国、竜胴大公国(竜血大公国と竜鱗大公国に分裂)、竜尾大公国、竜翼大公国の七大公は、第二次剣卿戦争で破れた〈竜哭帝〉に対して、選帝会議の開催を要求。
以来皇帝の選定、推戴などの特権を得た七大公は、〈選帝大公〉として独立勢力化していった。
旧部族勢力の台頭に伴い、伝統のドラグン民族の習俗を守ろうとする伝統派は、中原化を進めようとする開化派に対する圧迫を強めた。両派の対立は、黄金竜朝の断絶を機に、皇帝継承をめぐる伝統派のシルヴァニア家と開化派カイロン家の対立に発展。
対立帝ルーア・カイロンを推戴する開化派は、星歴八一六年ついに武装蜂起。破れたルーア・カイロンは東南部に逃れると北竜朝(=銀竜朝)に対してセレス系南龍朝を興し、北竜南龍朝時代と呼ばれる分裂の時代を招いた。
一方掌中亜大陸西南部では、黄金竜朝の南北分裂を機に〈剣の誓約同盟〉が攻勢を強める。星歴八二三年〈護国卿〉アルナス・ヴァンガードによる聖都ルイーン解放後、神政復古の大号令を発したセイン神聖王国は復興し、〈第二次転生朝時代〉を迎えた。
こうして再び北竜朝(=銀竜朝)南龍朝を加えた三つ巴の争いを展開することとなった。
〜煉朝セレス月華帝国による中原統一〜
北竜朝(=銀竜朝)の断絶後、カッパード家が継いだ銅竜朝は、南龍朝にはじまるセレス系六王朝と激しく争った。また転生王位継承制度により幼年期は摂政、成人後は宰相として実権を握った護国卿時代セイン神聖王国が加わり、三つ巴の戦いを繰り広げた。
やがて〈第二次三国時代〉は、星歴九八九年南龍六朝で栄えた魔道教を国教化し、セリカ(転訛してサリカ)を都とした煉朝セレス月華帝国の煉帝によって統一されることになる。
煉朝二代目〈英霊帝〉の時代、北の〈牙の民〉に対して〈黒狼都護府〉を設置すると、南はセイン神聖王国滅亡後、その文化の影響を受けた先住民族系〈ヴァンダリア南蛮王国〉及び弾圧下のソフィスト教徒に対する抑えのため、聖都ルイーンに〈剣南都護府〉を設置。西には小群島帯の海域諸国諸国経営のため〈海域都護府〉を設置するなど周辺に六大都護府を置いた。
その首都セリカは、魔道教が栄え、またセイン神聖王国のアスカナ地方の絹貿易に象徴されるように、〈海の竜の道〉を通じて、交易が盛んな国際都市として栄華を謳われた。
〜中原における煉朝の没落と亜竜五王朝時代〜
中原を統一し、九八九年から一二五一年の約三百年にも及んだ煉朝だが、魔道教によるウィザード宦官の専横や朱雀将軍プロディアスによるプロディアス朝アスカ飛鳥帝国の成立、更に北の先住民の侵入や、鼻高原の〈ロタール双鷲帝国〉との戦争などによりついに崩壊。
〈竜門海峡〉を越え、中原に侵入した先住民の一派、沙羅曼蛇族は、キンブルク、ガヤン、カイロンなどを次々と陥落させ、〈沙羅曼蛇朝〉を興した。これ以後、掌中亜大陸東部には、〈沙羅曼蛇朝〉も含めて〈歪威蛮朝〉、〈那亜牙朝〉、〈尾露血朝〉、〈火怒羅朝〉と先住民系五王朝が次々と継起し、亜竜五王朝と呼ばれることとなった。
〜中原における千年十字軍時代と再征服運動〜
開祖レイ・ソフィストの誕生を聖歴とする西方では、死後千年近くを迎え、聖地巡礼熱が高まっていた。
やがて高まった巡礼熱は、ランス十字王国、第四次アヴァロニア千年王国、リヴァタリア自由都市連合による千年十字軍運動に発展。亜竜五王朝に対して、〈海の竜の道〉を渡った彼らの一部は、豊かな掌中亜大陸西南沿岸部に襲い掛かる。中原文化の影響力を受けた先住民族系ヴァンダリア南蛮王国を滅ぼすと、南ランス十字王国を樹立した。
また掌中亜大陸西部では星歴一二九三年、白色人種系ソフィスト教徒国〈新リオン獅子王国〉が成立。更にカストゥール伯から発展した〈第二次両カストゥール王国〉などソフィスト教徒は、異教徒に対する攻勢を強めた。
こうして煉朝時代以来、セレス系魔道教により弾圧されたソフィスト教の復興の名の下、領土奪回再征服運動を展開。再征服運動の中で、〈リオン=両カストゥール王国〉が成立し、更に南ランス十字王国が、プロディアス朝アスカ飛鳥帝国を併合し、そのまま〈リオン=両カストゥール王国〉と連合。
星歴一三八六年、復活したアル・カーラスこと転輪聖王レイ帰還王を戴いた第三次転生朝セイン神聖王国が興った。リオン系、両カストゥール系、南ランス系こそ武術、魔術、芸術を司る後の聖王親王家〈護三家〉のはじまりとされる。
〜中原における第三次転生朝セイン神聖王国と青血朝革命〜
復活した第三次転生朝セイン神聖王国だが、転輪聖王レイ無血王の無血平和主義政策により、諸侯の不満が高まっていった。
逆に宰相で〈電光〉と呼ばれたカイルは、異教徒撃退戦〈血の平原の戦い〉で勝利し、武勇と声望を集める。声望を背景に続く息子アルスは、レイ無血王より譲位され、聖王として、青血朝(黄金樹朝)を興した。
以来、護国大権の名の下に、聖座騎士団総長が王位に就任する血縁王位継承がはじまり、聖王と法王を兼ねた転輪聖王ことアル・カーラスは、政教分離することなった。こうして転生継承制度は、法王にのみ受け継がれることとなる。
初代アルス至光王にはじまり、続く真智王、慈善王、美王の時代、いわゆる真、善、美時代に青血朝(黄金樹朝)は、最盛期を迎えた。真智王、慈善王、美王は、巡礼観光産業をはじめとした産業を振興し、その象徴として、アスカ飛鳥帝国時代の黄金第一神殿に次ぐ黄金第二神殿が建立された。
特にこの建立を一夜で行ったと言われる真智王は、聖都ルイーンに多くの魔法使いを招聘し、魔法使いギルドをその支配下に置いた。
教父ゾフィールは、真智王の弟〈聖悟公〉の隠し子伝説を持つが、彼が正教に対し、オレイオン地方三星山聖雲寺でソフィスト秘教を開いたのもこの時代である。後世ブルー・ブラッド=マジック・ルネッサンスと呼ばれることとなる。
〜中原における上弦朝、下弦朝セレス月華帝国成立〜
中原東部では、黄金竜朝、銀竜朝、銅竜朝を経て、亜竜五王朝と続いた先住民系異民族王朝を倒し、煉朝以来のセレス人による上弦朝セレス月華帝国が興った。上弦朝は、感情線河流域のガヤンを都とすると、集権化を進め、伝統の魔法使いを官僚とする魔導政治主義により、皇帝の独裁制が確立された。
貨幣経済の発達と共に各地に巨大都市が誕生し、〈海の竜の道〉により、東羊水海の火竜諸島をはじめハイナム海南海を南下し、〈肘半島〉経由でムーマ抱擁海までセレス人商人が進出。煉朝以来の中原統一を目指し、セリカ(転訛してサリカ)を支配した上弦朝は、更に人差指山脈を通る〈黒鉄街道〉から青血朝セイン神聖王国へ侵攻した。
しかしアルハン頭部大陸のドラキア地方から〈竜門海峡〉を渡った拝竜教竜洞騎士団によりガヤン、セリカは陥落。これにより、上弦朝の皇帝一族は、掌中亜大陸東南部へ逃れ、下弦朝を興した。
拝竜竜洞騎士団総長ガウスは、勢いに乗りセリカから〈黒鉄街道〉を経て、聖都ルイーンを目指したが、青血朝五代目の不動心王により、その難所〈剣の道七十二峰〉で侵攻を食い止められた。
〜中原における南北百年戦争時代〜
青血朝(黄金樹朝)セイン神聖王国は金枝を紋章とした金枝朝へ受け継がれた。教会改革を目指したた金枝朝大回心王の時代、〈聖なる座〉即ち聖職者ギルドの騎士叙任を巡る権力闘争から国王派と法王派の派閥争いが起こった。
護国大権に基づき聖王即ち聖座騎士団総長として、聖座騎士の叙任権を握る大回心王が、三神器守護騎士団こと宗教騎士団の解散をもくろんだのが、はじまりとされる。
聖座騎士叙任権闘争にはじまる国王派と法王派の派閥争いは、大回心王を継いだ破門王の時代、激化の一途を辿る。やがて転生朝による神政復古を目指す法王は、〈七門の変〉を起こし、千日戦争と呼ばれる内乱へ発展。
破門王は義理の兄ウィンザレオ黒獅子公と共に、〈北都七聖寺〉を包囲する。しかし破門宣言によりウィンザレオ黒獅子公が裏切り、竜洞騎士団が還俗した〈ドラキア竜血大公国〉へ亡命することとなった。
こうして神政復古を果たし転輪聖王を名乗ったレイ千日王だが、恩賞及び聖職者官僚登用政策に対する不満が、聖座騎士諸侯に広まっていった。
そして政策に反対し下野したウィンザレオ黒獅子公が武装蜂起。破門王に代わり聖王を名乗ったウィンザレオ黒獅子王により、レイ千日王は、南都六聖寺いわゆる南都派の中心ケイロンへ逃れた。
対立法王を立て即位したウィンザレオ黒獅子王による北都朝と南都朝の分裂は、ドラキア竜血大公国へ亡命した破門王を正統とする竜王派が加わることで、二度の三王政治時代を挟んで約百年続くこととなるのである。
〜中原におけるドラキア竜血大公国と鉄血朝時代〜
中原北部では、アルハン頭部大陸と掌中亜大陸いわゆる中原を結ぶ〈竜門海峡〉の要衝〈ドラゲンハーツ〉を拝竜教宗教騎士団〈竜洞騎士団〉が支配していた。
やがて竜洞騎士団が還俗した〈ドラキア竜血大公国〉は、ドラキンの時代、黄金竜朝、銀竜朝、銅竜朝より続く〈三頭環竜〉の紋章と共に、ドラグント大竜帝国の正統後継者をもって任じ、ドラグント第四帝国いわゆる鉄血朝が興った。
王朝名由来となった〈鉄血帝〉ドラキンは、竜の体を冠したドラグン七部族諸侯とドラグント王国を従え、〈竜軍八旗〉制度を復活させ、竜盟約に基づき連合軍事国家を形成。
その死後、ドラキン二世は第二帝国時代の首都アイバーンで戴冠すべく、亡命した破門王の息子僭王ダレンを傀儡に、セイン神聖王国への侵攻を開始。北都朝と南都朝そして僭王と呼ばれた竜王派が争う〈第一次三王時代〉をもたらした。
続く〈第二次三王時代〉鉄血朝は、セイン神聖王国の〈ドラグンディア地方〉を飛び地として支配し、ドラグンディア侯国は、一時は独立国となる程強い影響力を持つことになる。
しかし北都朝ウィンザレオ金獅子王と南都朝のアンジェリカ王女の結婚による統一後、ドラグンディア地方を残して影響力は衰えた。
〜中原におけるマジック・ルネッサンスと大冒険時代〜
自動書機印刷、羅神盤、魔砲の三大発明は、得意な騎兵戦に対する一斉魔砲攻撃の経験を経て、鉄血朝大竜帝国ドラキン一世によって、積極的に取り入れられていった。
当時の首都ドランゲンハーツには、セレス人魔法技術精通者が集められ、その改良が進む。惑星の地磁気に合わせてその方角を知る羅神盤と固定式魔砲を備え、帆に風の呪紋を刻んだ〈呪帆船〉が次々と建造されていった。
元々は軍事遠征のために行われた〈暴剣皇子〉トレヴァーン・ウル・ドラキアの第一次南海大遠征は、〈レムリア南部腰部大陸〉でのブラック・ストーンの回収及びその古代語解読を経て、失われた古代語魔法の復興〈マジック・ルネッサンス〉に発展。
重商主義政策の支援の下、荒々しく野心に溢れた冒険商人や冒険者一党と呼ばれる傭兵、冒険者が、更なる魔宝を求め熱狂し、やがて時代は大冒険時代を迎えた。
一方セイン神聖王国では長らく続いた南北百年戦争により、騎士や聖座騎士諸侯は没落し、ドラグントで起こったマジックルネッサンスの魔砲が、その衰退に拍車をかけた。
騎士に代表される重装騎兵に代わり、歩兵が戦闘の中心へと移っていたためである。これを背景に冒険傭兵旅団と呼ばれる魔砲傭兵団を常備軍として、三段詠唱と呼ばれる輪唱戦法でドラグンディア侯を破った北の獅子リオン家ウィンザレオ金獅子王は、南の鷲イグラス家王女アンジェリカと結婚し、南北百年戦争に終止符を打った。
折しもマジックルネッサンスによる魔法技術の進歩が、海外進出の気運を高め、大冒険時代を迎えていた。ウィンザレオ金獅子王は、冒険商人ダルカンと結び、冒険事業をはじめ商工業の奨励政策で財政の建て直しに成功。
やがて北の獅子と南の鷲の紋章を組み合わせた鷲獅子朝は、セイン=マジック・ルネッサンス時代を迎えることとなる。
〜中原におけるマジック・ルネッサンス時代〜
南北統一を果たした鷲獅子朝は、冒険事業をはじめとする商工業の奨励政策を通じて冒険商人との連携を強めた。売官制度で官職を得た新興冒険商人富裕層は、ルイーン護法院などの要職に就任し、魔法を忌み嫌う伝統的な帯剣貴族に対して、ウィザード官僚として法衣貴族と呼ばれることになる。
魔法使いにして護国財務省長官となったランベールなど彼ら新興法衣貴族は、魔法文明開化政策と共に冒険事業拡大主義政策を推進し、伝統的聖座騎士諸侯こと帯剣貴族との対立を深めた。
対する帯剣貴族は、あらゆる魔法魔術を異端とするソフィスト正教ニサン法王と手を結び、ルイーン護法院の法衣貴族メンバーを異端容疑で逮捕する。
この逮捕を機に、帯剣貴族と法衣貴族との身分政治闘争は、やがて両者の長たる聖王と法王との争いへと発展することになる。
法王率いる正教徒に対して、ソフィスト秘教徒が多かった法衣貴族は、最大派である武僧超人派兄弟団と結ぶと、教会改革の名の下に、総本山三星山聖雲寺で武装蜂起し、ついに剣と魔法戦争いわゆる〈第二次千日戦争〉が勃発。
西部オレイオン地方で始まった武装蜂起は、武僧──生霊魔法を極めた聖雲寺拳法の達人──こと超人十勇士の活躍により長期化。王権強化で没落した帯剣貴族や騎士が再起を目指して、こぞって参加したため、国中を巻き込んだ内乱へと発展していった。
第二次千日戦争は、第二帝国時代の首都アイバーンでの戴冠を目指す鉄血朝ドラグントの介入を招いた。またアルハン頭部大陸のゼノビア風王国、ローハン=アストリア二重帝国なども介入し、セインは国際戦争の舞台と化した。
〈セイン戦争〉は魔砲に対し、防備を固めた重装竜騎兵禁軍近衛部隊〈ドラゴンフェイスガーズ〉と傭兵歩兵戦闘団そして魔砲兵段列の騎兵、歩兵、魔砲兵の三兵科を揃え、近代戦術の基礎を確立したドラグントが有利に進める。二度に渡るルイーン包囲で鷲獅子朝の王権は名目化していった。
〜中原における暗黒穴界時空震と黒狩り時代〜
大竜帝国で発生した未曾有の魔導災害〈暗黒穴界時空震は瞬く間に泡沫海世界を席巻した。海外進出を求めた大冒険時代の好景気から一転、魔導災害の蔓延防止のため、各国は貿易鎖国主義、愛国主義を唱えた。保護貿易による貿易摩擦が生じ未曾有の不景気が世界を覆う。
セイン神聖王国も例外ではない。不景気に対する不満と魔導災害の恐怖が、愛国主義と結び付き、彼らは法王が聖王を兼ねる転輪聖王の再臨いわゆる神政復古主義を唱えた。より過激になった彼らは〈尊王征魔〉の名の下に、魔物にとどまらず魔法使いや感染者を襲う。
いわゆる黒狩りのはじまりである。
〜中原における神政復古と有翼天使同盟時代〜
鷲獅子王朝が衰退する中、尊王征魔を唱える過激派が、護三家の一つで、魔術を司るカストゥール家当主〈鉄の仮面公〉暗殺する事件が起こった。この暗殺事件から聖カントの大虐殺が起き、神政復古派と鷲獅子王党派の第三次千日戦争が勃発する。
やがて政権を握った神政復古朝は、魔法関連商品の輸入、製造、販売を禁止した悪名高きアルフレッド法こと〈魔禁法〉を制定し、魔法使いの弾圧と共に感染蔓延の原因とされた流星民などの強制隔離政策を断行。
しかし魔禁法は盗賊ギルドなどの密輸を活発化させ、流星民の強制隔離政策は〈赤い大流星雨〉と呼ばれる反乱を引き起こす。盗賊ら無法者とも結んだ彼らは三つの願い(スローガン)として自由・平等・博愛を唱え、〈変火球〉一斉魔砲撃で、従来の重装備騎士軍を主体とする反乱鎮圧軍を破った。
魔砲の威力を見せつけた赤い流星軍の勝利は、大冒険時代航海技術の進歩で主要貿易航路が変わり、衰退したアルゴ聖船座都市同盟や北西部沿海州に飛び火する。魔法産業を起死回生策とする沿海州との独立戦争は、後に市民革命と呼ばれることになる。
〈ソーサリア魔法共和国〉の独立市民革命を通じて帯剣貴族こと各聖座騎士諸侯は、魔砲の威力を再認識した。軍事を含め一切の魔法の使用を認めない神政復古朝を見限ると、平民や平民上がりの下級貴族で騎馬に従う歩兵従士族に魔砲杖を持たせ、金がかかる傭兵に代わる独自の常備軍軍制改革に乗り出す。
その筆頭で王家と血縁関係を持つ大貴族〈護三家〉武術のリオン家、魔術のカストゥール家、芸術のイグラス家にそして新興オルクス家を加えた四家は、〈有翼天使同盟〉を結ぶと、護国卿を頂点に半独立政治連合を築いた。
リオン獅子公国の親衛魔杖歩兵部隊〈獅子の大鎌〉に代表されるように、従士族を支持基盤にし、魔砲士部隊で構成される有翼天使同盟軍は、二度に渡る有翼天使同盟戦争で植民地化を狙う外敵を撃退した。この有翼天使同盟四公国の勝利は、外国からの解放、やがて統一運動となってセインを席巻していくこととなる。