地理編ー泡沫海世界ー
世界最大の信徒を誇るソフィスト教の宗教観では、世界は夢から生まれたとされる。そこから神夢ゴッドリームと呼ばれる世界が、この物語の舞台である。現在、神夢ゴッドリームには、首部、頭部、背中、腰部、足部、腕部、腹部の七大陸が集まり、一つとなった胎児が背中を丸めるような形の巨大大陸<パングリア大陸>がある。
下位古代語魔法時代に栄えた星の民〈古エル=フ〉の影響から、この星は黄金の胎児の子宮で、大陸を肉体、山脈を骨、海を羊水とする世界観が広まっている。特に東羊水海、掌中亜大陸、鼻骨山脈、口内海、赤頬高原など体に関する地名が多いのが特徴的である。
中でも北半球を占め、最大の大きさを誇るアルハン頭部大陸は、泡沫海と呼ばれる地中海や竜の道と呼ばれる東西交易路で腕部大陸及び掌中亜大陸などと交流があった。古エル=フに代わり、世界を支配した現世人類<五色人種>は、この文明世界を泡沫海世界と呼ぶ。
泡沫海世界は、主に四界と呼ばれる四つの地域に分けられる。その一つが、握り拳の形から掌中亜大陸と呼ばれ、東方に位置するいわゆる中原である。
西は泡沫海の付属海<イリーア歌謡海>やヴァルナ真珠海東は東羊水海、北は竜門海峡や沈黙海峡と周りを海で囲まれている。唯一つながる南さえ腕環山脈エクス・アヴェにより、周囲から隔離され、独自の文明を育んだ。
多くは一年を通じて温暖な温暖湿潤気候に属する。手相から名付けられた四つの大河である頭脳線河(聖河)、感情線河、健康線河(健江)、運命線河が流れ、流域地方には、古くから独自の中原文化が発達した。海の竜の道、竜の道と呼ばれる東西交易路の終着点となった。
続いてはクトゥール闇帝国が支配したり、また古い魔法文明を持つカーメン仮面王国の発祥の地<カナン>。泡沫海の南部に属し、地中海性気候や砂漠気候が多くを占める。厳しい環境の中、風の民と呼ばれる遊牧騎馬民族が暮らし、オアシス都市が広がる。肩高原の肩掛け河流域のエルラーン地方や食道河流域のカーメン地方などは豊かな地方である。暗黒神や獣面神などの古き神々の魔法文化の影響が、今尚残る。
続いてはアルハン頭部大陸の鼻骨山脈を水源とするヴァーナ河流域のニルヴァーナ。中原こと掌中亜大陸とは、沈黙海峡や歌洋海の海域四十四国と呼ばれる小群島帯を挟んで、東西に向かい合う。
気候は、沿岸の地中海性気候を除いて、温暖湿潤気候や温暖冬季少雨気候が多くを占める。
最後は肥沃な神の舌と呼ばれる西方域。南は泡沫海の付属海であるアドナ口内海、北東には、耳穴湖、北西はドリム夢中海に囲まれ、二つある大河流域平野は、古くから農業が栄えた。海の竜の道、竜の道と呼ばれる東西交易路を通り、多くの民族が興亡した地域である。