間幕:管理者達の夢
短いです。
・・・チチチ・・・ザッザッザ・・・
一人の女性が、森を歩いている。
緑色の髪を膝まで伸ばし、真っ黒な着物で体を包んでいる。
十代の顔つきだが、その雰囲気は妙齢な女性のそれだ。
女性は『神域』と言われる所を歩き、その足は真っ直ぐ泉に向かっていた。
・・・ザッザッザ・・ザザ・・
女性は泉のほとりまで来ると、誰もいない泉に向かい深々と頭を下げ・・・
「お久しぶりです。女神様」そう言った・・・
・・・サワサワサワ・・・・
一陣の風が吹く・・・すると・・
「やっほー。久しぶりだね!『神樹』さん」
声と共にどこからか女の子が姿を現した。
なぜか女の子は、セーラー服に金色の髪という出で立ちで泉の上に浮かんでいた。
「昨日お話ししたとおり、今日は『正式に』ご挨拶に伺いました」
そう言う神樹に対し、女神は・・
「そんなのいいのに」
そう言いながら軽く手を振る。
「そうは参りません。約束・・しましたから・・」・・言いながら頭を上げる。
「相変わらず律儀ですね~」のんびり答える女神。
「で?今日は挨拶だけって訳じゃ無いんでしょ?」
「・・・ええ。今日は『管理者』の一人としてご忠告に参りました」目を細める神樹。
「忠告?ありがと~。何かな?何かな?」
少し躊躇うしぐさをする神樹・・・やがて・・
「このまま・・・続けるおつもりですか?」
瞬間、女神の顔が ピシッ と固まる・・・
「あのような者までお連れになって・・・世界は最早、許容できなくなっている・・・そう思いますが・・」
「そんなことない!!!まだ・・まだ大丈夫だよ!!!ケンが!ダーリンが何とかしてくれるもん!!」
言い放つ女神を、覚めた目で見る神樹・・・
「本当に・・・本当にそうお思いなのですか・・・?」
「ええ・・・本当よ。大丈夫・・バグさえ取り除ければ・・・」
いつもの緩い表情も消し去り、言い聞かせるような声で女神は答える・・・
「・・・お父上がいなくなった理由・・・ですか・・・」
唐突なもの言いに、女神は・・・
「父さんは関係ない!!!!なんだって言うのよ!!!」
叫ぶ女神に・・・神樹は・・
「私は・・・私は世界創生と共にこの地におります。彼方より長いときを、この地にて過ごしているのですよ。その私が・・・このせ・・」
「うるさい!!!大丈夫なの!!!世界は私が守っているの!!余計な口出ししないで!!おばあちゃん!」
神樹は、少し残念そうな顔をして・・・
「そうですか・・・私は、何時でも彼方の味方です。どうかそれだけは・・覚えておいてください・・」
「・・・」
女神は・・何も返さず・・・神樹は元来た道を歩き始める・・・
「もし・・・」女神が後姿に・・問う・・・
「もし・・・世界が・・・ほ」
「それ以上は・・・言ってはなりません・・・たとえそうなったとしても・・・貴方様は生きることができるのですから・・・」
神樹はそれだけ言うと・・・今度こそ、外に向かって歩みを止めることはなかった・・・
ヒュー・・・
神樹が去り、女神が虚空を見つめる・・・そして・・・
バキッ!
何もないところを握りつぶした・・・
「なっちゃん・・・覗きは良くないよ・・」
女神の手には・・砂のようなものが握られている。
それを虚空に投げ、再び泉に消えていった。
「ヒュー・・怖い怖い」
「女王、あまりそういうことは・・・」
「なによ!大丈夫だって!」
そう言う二人。
女王とネムルは今、南の大陸で人間相手に挨拶回りをしているのだった。
「面白い物が見れたわね~」
「そうですか?私にはサッパリですな」
肩をすくめる仕草をするネムル。
女王は、ニヤッと笑い・・
「はいはい。よく言うわ」
対するネムルも薄く笑いながら・・・
「・・何のことですかな?」
「いいのよ、今更。あんたがなんで私に付いているのか知らないし、強い味方がいるのは良い事だから深くは問わない。けれど・・・覚えておいて・・」
「・・・何ですか?」
女王は凄惨な笑みを浮かべつつ・・・
「次は容赦しないわよ・・・」そう言った・・・しかし・・
「何のことかサッパリですな」ネムルは飄々(ひょうひょう)とした顔で答えた。
「ふふふ・・それでこそ・・ね」
女王は急に立ち上がり・・
「次やることが決まったわね!世界の『バグ』・・『歪み』についてもう少し調べてみましょう。過去の事もね」
「承知いたしました。女王様」
恭しく頭を垂れるネムルを見て・・・ネコかぶりね・・・そう思った女王だった・・・
あとがきです。
少し補正が必要と思い、書きました。本編はいま少しお待ちください。
いつも読んで頂き、本当にありがとうございます。当初、全36話の予定でしたが、大幅に加筆しております。修正の手助けしてくださる方々、いつもありがとうございます。それでは次回、またお会いしましょう。