0章 プロローグ
美しい青い空、空に向かって聳え立つビル、そして——黒いノイズに隔離された裂界。
裂界。
それは、古くから世界各地で発生していた、アルカナという謎のエネルギー粒子によって引き起こされる災害の1つだった。
火災が街を焼き、洪水が街を押し流すように、裂界もまた、街を、人を飲み込み、世界を脅かす災害だった。
だが、10年前の10月9日。
それまでとは比較にならない規模のアルカナ災害が発生した。
女神は、世界は、崩壊した。
土地は飲み込まれ、多くの人々が住む場所を失った。
黒いノイズに包まれたその向こう側は、嘗て人々が暮らしていた街だった。
しかし今では、ビルは倒れ、化け物が徘徊し、あまりに高濃度なアルカナが満ちている。耐性のない者は、数分とまともに行動することができない。
裂界は外界と隔絶された異空間だ。
内部との通信はできず、そこへ取り残された人々の言葉を聞くことも、残された者たちの亡骸を見つけることもできない。
亡骸はアルカナに侵食され、化け物へと変わったのだから。
昨日まで当たり前だった日常は、一夜にして遠い過去へと変わった。
家を失った者。
家族を失った者。
故郷を失った者。
そして、世界そのものを失った者。
それでも、人々は歩みを止めなかった。
僅か1か月後。
残された土地で、人々は手を取り合った。
失われたものを集め、砕けたものを繋ぎ合わせ、崩れ落ちた街をもう一度立ち上がらせる。
そして、バラバラになった女神を繋ぎ合わせた。
新たな女神。
新たな都市。
——新アルテミア。
それは、崩壊した世界に残された最後の希望だった。
それから10年。
人々はいまだ夢見ることをやめない。
いつの日か、あの女神を。
自分たちが暮らしていた旧都を。
失われた日常を。
もう一度、この手に取り戻すために。
これは、そんな世界で生きる人々の物語。
崩壊から10年。
化け物と戦い、旧都を取り戻すため、防衛軍を目指す者がいた。
新都を守るため、治安官への道を志す者がいた。
アルカナへの研究を深め、嘗ての過ちを繰り返さないように、A.R.C.を志す者もいた。
そして——それとは異なる道を、自ら選び、歩む者達がいた。
黒いノイズの外側から失ったものをとり戻すために。
人々は今日も——夢を見る。




