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参謀の誤算と、最強の内線

燃のマンション前からガンメタのBMWを発進させた登夢は、ヘルメットの中で深く息を吐いた。

(……響いた、はずだ)


「失敗だった」「頼るのは弱さじゃない」――伝えたかったことは、全て伝えた。

あいつ(燃)が、昭(母さん)のところで、平や成と一緒に笑ってくれれば……それだけでいい。

(……あとは、母さんからの「最後の一押し」だな)


夜道を走り、草薙家の門をくぐる。

バイクを車庫に停め、母屋の玄関を上がった。

深夜の静けさの中、父の書斎の明かりだけが点いている。

(親父はまだ起きているのか……)

昭のいる居間へ向かう前に、父にひと言「燃の件」を報告しようと、書斎の戸を引いた。

「……父さん、ただいま戻りました」


父(正)は、書斎の大きな机で、受話器を置いたところだった。

(固定電話の、国際電話の後の、あの独特の静けさだ……)

『おお、登夢か。……ちょうどいい』

正は、登夢の顔を見るなり、まるで「全てお見通しだ」というかのように言った。


「(;^_^A)……『ちょうどいい』、とは?」


「今、ロンドンの将(赤紙 将:燃父)と話が終わったところだ。 お前が燃に「下宿」の話をしに行ったそうだな?」


「……はい。あいつは、もう一人じゃないと」


「ああ、その通りだ。いい提案だと思った。 だから、将と、彪(杠葉 彪:杠葉伯父さん)と話して、全部まとめた」


「……え?」

登夢の思考が、一瞬、停止する。

(まとめた? 今? 俺が燃と話している、この数十分で?)


「お前の言う通り、燃を一人にしておくのはマズい。 ――で、ちょうど良かった。

彪も、今度ロンドンに赴任だ。仁と、かれんを残してな」

「だから、「杠葉家」だ。 燃も、仁も、かれんも、あの家でまとめて下宿させる。」


「……待ってください」

登夢の声が、上ずる。


「……父さん、それは……本気ですか」


「本気だ。もう将も納得した。

「ワイロ(仕送り)」も渡すそうだ(;^_^A)」

「何を慌てている。燃には家族が必要だ。燃のマンションの契約、今月で契約終了だが更新はしない。」


(……想定外だ……)

だが、ぐずぐずしている時間は、ない。 明日、燃が「放り出される」のは、事実だ。

(こうなったら、俺がやるしかない!)

登夢は書斎を飛び出し、居間へと向かった。


「母さん! 夜分にすみません!」

居間の戸を開けると、昭さんは、穏やかな顔でエッセイの原稿を書いていた。


「あら、登夢。お帰りなさい。 ……(;^_^A)。

パパと、将さん、彪さんの「悪だくみ」、大変だったみたいね」


「(;^_^A)……!?」


登夢は、息を呑んだ。

昭は、ペンを置き、全てを見透かしたように微笑んだ。


「登夢が、燃ちゃんを「草薙家」に呼ぼうとしてくれてたこと、知ってるわ。ありがとう。

……でも、あの人たちが、登夢の「善意」を乗っ取って(笑)、「杠葉家」にまとめるって暴走したのも、全部**(さっきの電話、内線で)聞いてた**から」


「……じゃあ、」


「ええ。 **“燃ちゃんのマンションが明日で契約切れ”**っていう話が出た瞬間に、 **“お爺(明)さまの名前で、南雲さんに「草薙運輸」の特別班を、明日の朝イチで回す”**よう、 とっくに別の電話で手配済みよ」


「……!」


「あなたは、燃ちゃんを迎えに行ってあげなさい。 ……(;^_^A)親父たちの「画策」と「ワイロ」に巻き込まれて、一番パニックになってるのは、あの子でしょうから」

「私には内緒にしてるつもりみたいだけど。パパってホントかわいいわ。」


昭は”うふふ”とにこやかに笑っていた。


「……(;^_^A)……はい」


昭さん(最強)に深々と頭を下げ、登夢は居間を出た。

(……最強(母さん)の手のひらの上で、踊らされてたのは、俺も(親父たちも)同じだった……)


登夢は、廊下にある(家の)固定電話の受話器を取り、さっき別れたばかりの「渦中の男(=ワイロで転んだ男)」の、マンションの番号をプッシュした。

(「引っ越し」の手配は、済んだ)


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