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祝福で呪われて七度目の転生!今度こそ風の聖女を護りたいのに、あほの子に育って俺を邪魔してくる  作者: 笹色 ゑ


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6-1 候補


 アリアと出会ったのは十歳の時だ。


 私の腹違いの兄二人のどちらかの婚約するためにやってきた。


 アリアは、その二人を暴力で屈服させ、婚約は破断した。


 アリアは幼いころから、その行動力と美貌で周囲を圧倒してきた。私の生家以外にも目を付けている者も少なくなかったろう。もし私以外がアリアと婚約していたらと考えるだけで吐き気がする。


 だというのに、アリアは私との婚約という護りに重要なカードを破ろうとした。


「ターリス、いつものを頼む」


 社長秘書であるターリスに声をかける。


「お疲れですね」


 彼が差し出した黒茶の香りが鼻をくすぐる。ターリスがいなければ、スオウ社は今ほど繁栄していなかったかもしれない。そんなターリスをアリアのために学校の臨時講師に出向してもらっている。


 今はここに学校が長期休暇で本来の秘書に戻っていた。


「アリア様の様子は如何ですか?」


「思いのほか楽しくやっている。学内の方はどうだ?」


「アリア様が婚約破棄をしたという誤情報が広がっています。故意に誤りを広げているようですが、そうでなくとも、人は噂を面白おかしくしたがりますから」


 ターリスは臨時講師として学園に入ってもらっている。


 本来は有能な秘書のため、手元に置いておきたいのだが、アリアの安全の方が優先だ。


 王立の学校のため、審査が厳しく、職員としては他に二人ほどしか潜入をさせられなかった。


「アリア様の隠れ親衛隊の中からも離反者が出て、ご実家へ婚約の申し出をしている者がいるようです」


「アリアの両親へは伝えている。婚約は継続しているし、良好な関係だと断りを入れてもらっているが……はぁ」


 馬鹿なアリアの行動の所為でこれだ。


 婚約破棄を言い出しただけで、長期休暇に実家へ帰さず囲い込む。過剰な反応だと思われるだろうが、アリアに婚約者がいないと勘違いした者が既成事実を作りかねないのだ。


「アリア様は、これまでご自身の扱いを特に気にしておられなかったので、今回の婚約破棄を申し出たのは予想外でした」


「ああ……、裏で妙な親衛隊ができていたり、それを妬むものからの嫌がらせ、身の程を知らない男どものアプローチ。全て興味を示していなかったと言うのに」


 アリアは、残念なほどに見た目がいい。口さえ開かなければ、人ではない何かにすら見える。


 そう感じるのは私だけではない。


 アリアは、友達がいないと寂しそうにすることはあったが、それだけだ。今回、嫌がらせの首謀者が私だと勘違いしたとしても、興味を示さないほうが理解ができる。


 そんなアリアが、私に婚約破棄を突きつけたのは本当に意外だった。


「やはり……ヴァーナード様に他に想い人がいると嫉妬されたのでしょうか」


 アリアの茶と違い、すっきりとした苦みに鼻に抜けるスパイスのような香りを感じながら、それを準備したターリスに微妙な顔を返してしまう。


「あれが私に嫉妬するはずがないだろう」


 これまで、アリアに勉強を教える以外は極力接点を持たないようにした。


 どちらかと言えば嫌われている。そうでなければ相談もなく公衆の面前で婚約破棄など言い出しはしないだろう。


 少し考えれば、わかるリスクだが、アリアは……馬鹿だから何も考えていなかったのかもしれないと、げんなりする。


「それよりも、学内には碌な男はいないか?」


「アリア様の伴侶に足りうる方でしたね」


 アリアの安全保障に関する情報収集以外にも、ターリスには学内で男子生徒や独身教師の調査をさせている。


「金、権力、外見、性格、そして実家の家族。それらを考慮すると、何かしら問題がある状況です。ヴァーナード様以上となると、流石に難しいですね。アリア様の伴侶は無理でも職員としては欲しい人材はいましたので、スオウ社へ斡旋はさせていただきました。


 人事の一部も担っているターリスは、学内でヘッドハンティングまがいのことをしている。


 奨学生の平民や、後を継がない貴族の子息から優秀な者を見つけては入社試験に誘導しているのだ。


 そんな事よりも、アリアに相応しい伴侶を見つけてもらいたい。



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