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第68話

冒頭は、それまでの出来事とはまったく対照的な光景から始まる。


空間は漆黒の闇に包まれ、時間が止まったかのような静寂が広がっていた。アコウは光一つ差し込まぬ密室に一人座っている。存在するのは暗い色のソファと、その前に設置された巨大なスクリーンだけ。スクリーンには戦場の全景が精緻に再現され、あらゆる動き、攻撃の一つ一つ、荒々しいエネルギーの奔流が生々しく映し出されている。


スクリーンの光がアコウの顔を照らし、冷たくも平然とした瞳に反射する。


「なるほど……観客として参加している者たちは、ここに閉じ込められるのか。」


彼はそっと背もたれに寄りかかり、周囲を一瞥してから淡々と結論を述べる——まるで予測済みの当然の事実であるかのように。



戦場に場面は戻る。


イチカワが相手を空中に打ち上げる。


手に握る剣が空を切り裂き、鋭利な一閃で大気を真っ二つに裂いた。その衝撃で地面は激しく揺れ、砂や岩の破片が爆風の如く舞い上がる。


白竜はすぐさま手を掲げる。透明な白の空間が彼の前に現れ、凄まじい一撃を受け止めた。しかし衝撃は依然として強大で、頭上の雲は二つに裂け、混沌とした空間が露わになる。


イチカワが着地する前に、白竜は手を振る。


空間が歪む。


巨大な吸引力が生じ、イチカワを前方へと強く引き寄せる。身体が突然引きずられ、反射する間もなく瞳が一瞬大きく開いた。


次の瞬間——直接的な一撃。


ドゴォ——ッ!!


雷鳴のような爆発音が響き渡り、イチカワの身体は粉々に砕け、戦場中に無数の氷の破片が飛散し、眩い光を放つ。


しかし、それはダミーに過ぎなかった。


イチカワは瞬時に位置を入れ替えていた。


その瞬間、彼の力が単に強力なだけでなく、恐ろしいほど柔軟かつ創造的に運用されていることを示していた。


空が突如暗くなる。


巨大な稲妻が雲を切り裂き、白竜の位置に直撃する。


「——?!」


彼は目を見開き、歯を食いしばりながら後退する。稲妻が地に落ちた瞬間、イチカワはその衝撃点に現れ、赤く光る瞳を輝かせる。彼は手を伸ばし、稲妻を掴むとまるでエネルギーの槍のように前方へ投げ飛ばした。


白竜は慌てて巨大な空間球を展開する。


ドゴォ——!!!


激しい爆発で双方が吹き飛ばされ、衝撃が広がって地面は割れ、砂塵が巻き上がり砂嵐のようになる。


遠くから、ゾアは目を離せずにその光景を見つめる。


「イチカワが強いのは知っていた…でも、古代から存在する竜誓級の存在と互角に戦えるのか?」


隣のツバサも驚きを隠せない。


「覚醒からまだ一年も経っていない者の力なのか…史上最速と呼ばれた者ですら、この速度で進化したことはない。」


煙が徐々に晴れる。


連続する鋭利な斬撃が爆発し、金属の衝突音が空間に響き渡る。光の軌跡が真っ直ぐ空へと伸びた。


白竜は変貌を遂げていた。


半身は竜、半身は人。


白銀の翼を広げ、長く伸びた尾が空をなぎ払い、四肢は硬質な竜の鱗で覆われ光を反射する。破壊の光線を放つ。


イチカワはその下に立ち、重ねた元素防壁を築く。しかしそれらは次々に貫かれる。彼は歯を食いしばり、痛みに目を細める。


瞬時に白竜は着地し、爆発的な蹴りを放つ。


イチカワは吹き飛ばされ、遠方の厚い壁に激突。衝撃で構造は粉々に崩れた。


白竜は追撃する。


しかし、赤い瞳が光を放つ。


無形の波動が発生——黒と赤の雷を伴い轟く。


白竜の身体は硬直する。


「支配者の力…?」


観客席全体が震えた。


漆黒の部屋からざわめきが上がる。支配者の力——世界に認められた一握りの存在のみが持つ、長く生き、戦い、頂点に達した者の力。


だが今、覚醒して間もない者がそれを使っている。


白竜は身体を保てず、精神は最低限にまで追い込まれる。


イチカワはその隙を逃さない。


隕石の如き重撃を放ち、白竜を吹き飛ばす。口から血が飛び、身体はバラバラになり、痛みが全身に広がる。


イチカワは突進し、止めの一撃を放とうとする。


しかし——


虚空からの斬撃。


ワイン色の髪の少女が現れ、海賊の剣を下から上へ振り抜く。二つの攻撃が衝突し、衝撃波が天を揺るがせ、双方を吹き飛ばす。


イチカワは目を上げ、初めて自分を止めた相手を真正面から見る。


煙の中、彼女は自信に満ちた声で言った。


「どうやら向こうの最強は…私たちの中の一人に過ぎないようね。」


イチカワは眉をひそめる。


「“一人に過ぎない”だと?」


少女は大きく笑う。


「私たちの狩人は二人だけだと思ったの?」


彼女は炎の紫に燃える剣を構え、一歩前に踏み出す。


「お前たちの護衛にも注目すべき者は二人しかいない。そしてあの賢い男は…」


「すでに観客席に連れて行かれた。」


イチカワは言葉を失う。


「アコウ…観客席に?」


事実が徐々に明らかになる。目の前の者が、どうにかして最大の脅威を排除したのだ。


今、戦場に残るのはイチカワだけ。



戦闘はさらに激化する。


二つの勢力がぶつかり合う。


白銀の装甲に身を包み、赤く燃える瞳のイチカワ。


究極形態で全身を竜の鎧で覆い、灰色の巨大な翼で空間を裂く白竜。


戦場は完全に壊滅し、残るは砂漠のような空き地——破壊の圧力の痕跡だけ。


戦いは…いま、真に始まろうとしている。

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