第4話
「君も新入生か?」(ゾア)
ゾアは簡単な質問で様子をうかがった。目の前の男は冷静に答えた。
「それは当然のことじゃないか?」
ゾアは不安を覚え始め、素早く周囲に目を走らせて逃げ道を探す。この男が本当に殺すつもりなら、さっきの怪物との戦いの時に攻撃していたはずだ。それをしなかったということは、圧倒的な強さを持っているわけではないと分かる。
「君、自分があの怪物みたいになるのが怖くないのか?」(ゾア)
ゾアの力を探ろうとする意図を察し、男はもう遠回しに話すのをやめた。
鋭い剣撃が静寂を引き裂いた。ゾアはかろうじて避けたが、外套の一部が裂けた。男は体をひねりながら平然と言う。
「時間はかからない。君を殺して全得点をもらうだけだ。」
言い終わるや否や、男は剣を構えてゾアに襲いかかる。ゾアは身をかわして、反撃の一太刀を繰り出す。ただの一撃で、相手の左の翼が切り落とされ、地面に叩きつけられた。男は固まり、首筋に汗がにじむ。
危機を察知した男はすぐに距離を取り、警戒しながら言った。
「名前は?」
「ゾアだ!」(ゾア)
男が目を閉じた一瞬の隙に、ゾアは接近し、真っ向から斬りかかる。男は翼を使って後方に跳び、攻撃を避けながら翼を引っ込めた。こうして二人は、激しい一騎打ちを繰り広げることになる。
剣術が次々と交わされ、鋼がぶつかる音が響く。戦いは遺跡の外から古びた建物の中へ、そしてまた外へと続いた。ゾアの目には決意が宿り、その目に反射する剣の輝きが、全力の一撃に現れていた。
魂の剣の技が回復し、ゾアは白く光る横一線の斬撃を放つ。木々や建物をもろとも切り裂き、男は間一髪で避けたが、命を落としかけた。地面に落下し、何度も転がった末、ふらふらと立ち上がる。顔には恐怖が浮かんでいたが、彼はなおも構えを崩さなかった。
「腕は悪くないな。ポイント稼ぎでもすればいいのに、なぜわざわざ俺を狙う?」(ゾア)
男は答えず、再び攻撃に移る。ゾアは驚きつつ防御し、すぐに戦闘態勢に戻った。先の戦いで重傷を負っていたゾアにとって、互角の剣術は苦しかった。
戦いが長引くにつれ、ゾアは次第に体力を失っていく。膝をつき、息が荒くなり、傷のせいでスピードが落ちる。男は空中に浮かび様子を見ていたが、ゾアが問いかけた。
「名前は?」(ゾア)
「カラスとでも呼べばいい。どうせ死ぬんだ。名前なんか知っても意味はない。」(カラス)
ゾアは笑った。
「死ぬのはお前の方だっての。」(ゾア)
カラスは再び突撃し、今度はその剣が次々とゾアに傷を与える。ゾアは反撃がうまくいかず、ついには蹴りで吹き飛ばされ、地面を転がる。カラスは止まらず、とどめを刺しにかかるが、ゾアは体をひねって避け、足で彼の首を挟んで地面に叩きつけた。
強烈な衝撃でカラスは気を失いそうになる。ゾアはすかさず剣を突き刺すが、刃は腰に深い傷を負わせるにとどまる。カラスは翼を広げて後退し、再び翼をしまって構えを取る。
「まだやる気か、カラス?!」(ゾア)
血が腰から腕へと滴り落ち、足元はふらつく。彼も限界に近い。ゾアはとどめを刺そうとしたが、剣を収め、背を向けて去っていく。カラスは追いかけようとするが、力尽きて倒れる。ゾアもまた、その場に倒れ込んだ。
しばらくして、ゾアは静かな廃墟の中、満天の星空の下で目を覚ます。すぐに傷の様子を確かめ、周囲に警戒するが、誰の姿も見えない。カラスもまた、いなかった。
「殺されなかったのか…?」(ゾア)
遠くに、カラスが他の受験者と話しているのが見えた。カラスは低い声で言った。
「あいつの能力は異常だ。殺そうと思ったが、近づくのが怖かった。あの怪物と同じ末路を辿る気がしたんだ。」(カラス)
相手の男は小さく笑い、
「じゃあ、俺が行こう。俺の能力なら、あいつを倒すのは難しくない。」(謎の男)
カラスは背を向け、冷たい声で言った。
「この世界は甘くない。お前が強くても、あいつの力がどれほどのものか、俺には分からん。」(カラス)
一方その頃、最後の高ランク怪物がいる区域の奥では――
死体があちこちに散らばり、血の臭いが漂っていた。栗色の髪の青年が震えながら、恐怖に満ちた目で目の前の光景を見つめている。
巨大な黒い怪物が赤い目を光らせ、槍を握った手で受験者の半身を貫いていた。鮮血が一滴一滴、地面に落ちる。
「なぜ学園は、こんな化け物を試験に出したんだよ…」
怪物の背後には小さな扉があり、そこには斬り裂かれた文字が刻まれていた。
「この試験を突破した者は、この扉を越えよ」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
この物語は、私がずっと考えていたテーマを形にしたものです。
書きながら多くの苦労もありましたが、読者の皆さんの反応を想像しながら、毎回楽しんで書いていました。
次回の話も今準備中ですので、楽しみにしていてくださいね!
引き続き応援よろしくお願いします!