第24話
本章では、激しい戦いの中で繰り広げられる主人公たちの壮絶なバトルシーンを中心に描いています。技術と精神力のぶつかり合いが緊迫感を生み出し、キャラクターたちの成長や関係性にも注目していただける内容となっております。読者の皆様には、迫力ある描写と繊細な心理描写の融合をお楽しみいただければ幸いです。
**「この組織を再生させるためには、残酷さは避けられないことだ。」**
冷たく低い声が静寂の空間に響き渡る。その声は、まるで心の深淵から落ちてくる宣告のようだった。声の主は、冷徹な眼差しを持つ青年であり、血に染まったナイフを手にしていた。彼の目の前には数多くの死体が横たわっている──不運な学徒たち、運命の瞬間に彼と出会ってしまった者たちだった。
**「お前は……一体何者だ……？」**
被害者の呻き声が、痛みとともにかすかに響く。彼は血まみれの体を引きずり、四肢は切り落とされ、深く刻まれた無数の斬り傷が身体を引き裂いていた。その血に染まった光景は、まるで廃墟と化した病院の恐怖を彷彿とさせる。そこには死体だけが残り、空気は濃密な血の匂いで満ちていた。
**「俺はネイサニエル・クロウリーだ。人類を本来の位置へと戻す者だ。」**
そう告げると、ネイサニエルは歩みを進める。彼の靴音が空虚な大広間にゆっくりと響き渡り、冷え切った病院の空間に幽玄な残響を作り出した。
門の外では、クア（カラス）ギャングのメンバーたちが立っていた。先の戦いでまだ完全には癒えていない身体にもかかわらず、彼らの眼差しは鋭く、まるで地獄を踏み越えた者のような気迫を漂わせていた。
ここではじめて、人々は理解した。ネイサニエルが一人で敵対する強力なギャングを壊滅させなければ、クアは潰されていたのだと。その相手はクアと同等の勢力を誇る存在であった。
ネイサニエルの登場と共に、クアのリーダーが重々しい声で口を開いた。
**「我々はお前に恥をかかせてしまった。リーダーのくせに、何の価値もない。」**
ネイサニエルは冷静な眼差しで応じた。
**「戦うことは本来お前の役割ではない。責められるべきは私だ。間違った相手を選んだのは私だからな。私であれ、我々全員の中で最も賢い者であれ、あの天才の頭脳には勝てない。」**
そう言い放ち、彼は倒れたザイファ（Zyfa）の元へ歩み寄った。ザイファは動かぬ身体で横たわり、腕は粉々に砕け、皮膚の下に骨が露出していた。
**「その腕はもう治せない。学園に戻り、高位の医療担当の学徒の回復能力に頼るしかない。」**
ネイサニエルは言い終えると、ザイファのコートのポケットに2級のIDカードを投げ入れた。
**「お前が必要だ……この組織を、そしてクアを再生させるために。」**
クアは驚きを隠せない表情でネイサニエルからAランクのカードを受け取った。
**「傷を負わなかった生存者たちは、自分たちがすべきことを理解しているはずだ。俺に従え──道を阻む者は皆殺しにしろ！」**
場面は切り替わり、ゾア（Zoah）とアコウ（Akou）はスクリーンを通して事態を観察していた。拡大された映像の中で、アコウはネイサニエルが周囲のギャングを一掃する瞬間を素早く捉えた。
ゾアは驚きを隠せず、声を上げた。
「こいつはAランクなのに、こんなに強いのか？」
ゾアの驚きは当然のことだった。彼は目の前の人物がAランクの肩書きを持つだけで、クライス（Kleith）と互角に戦えるほどの実力があるとは知らなかった。
「ランクは多少のアドバンテージを与えるが……学徒の真の力を示すものではない。」
アコウは冷静に答えた。
言い終えると、アコウは画面を教会エリアへ切り替えた──ここでこれからの出来事が本格的に幕を開ける。キング（King）がすでに現れているのを見て、アコウも驚きを隠せなかった。
キングとクライスがアコウのクア本拠地への攻撃を共に支援した後、彼らの同盟は正式に解消された。それは彼らに追跡装置が付けられていないことを意味し、もし再び出会えば敵同士になるということだ。
同盟がなくなったため、キングは自らの糧食を探さなければならなかった。そして彼が狙いを定めたのは、巨大な教会を守る男だった。
キングの体から燃え上がる赤い悪意が放たれ、彼は対峙する青年──坊主頭の男──に猛然と突進した。その一撃は天地を揺るがし、朽ちた木製の椅子が粉々に砕け散り、舞い上がる砂埃が視界を覆った。
スクリーンの向こう側では、貴族たちが饗宴に興じながら笑い声をあげていた。宴の司会者は興奮した様子で叫んだ。
「そうだ、殴り合え！俺たちが望むのは血の流れと真の強さだ。つまらない数の寄り集まりなんかじゃねぇ！」
戦場に戻る。
砂煙の中、赤い悪意の輝きはなおも燃え盛っている。キングの屈強な体格に対し、竹の棒を持つ青年が軽やかに攻撃を受け流した。
キングは驚きの声を上げた。
「この竹の棒……最初からこんなに長かったのか？」
心の整理がつかぬまま、青年は弧を描くように棒を振り、キングを吹き飛ばした。
その時、青年の正体が明らかになった──沈岳。彼の能力はDランクだ。しかし能力評価の時から論争があった。最初はあまり目立たない能力からEランクにしようとされたが、彼の技術を見るや否やDランクに引き上げられた。
沈岳の能力とは、**物体の拡大・縮小**である。
「さっきの一撃……本当に強かった。今まで会った中で一番だ。」
沈岳は冷静に賞賛を口にした。
彼は戦いにそれほど興味はなかったが、今回はキングとの完全な勝負を楽しみたいようだった。その目つきや仕草がそれを物語っている。
キングは大笑いし、血潮の奥底から湧き上がる熱意を感じた。破れたシャツを脱ぎ捨て、叫んだ。
「面白い勝負をしようぜ！」
沈岳はすぐさま前に出て、竹の棒を恐るべき速度で伸ばし、キングの腹部に突き刺した。赤い悪意が燃え上がり、キングは痛みに顔を歪めた。沈岳は棒を縮め、素早い斬撃を連続して繰り出し、キングに触れさせることすら許さなかった。それが舞槍術──誰もが習得できるものではない。
戦いの合間に、アコウの落ち着いた声が割り込む。
「彼の能力はただ拡大縮小だけじゃないか？今は棒の長さまで伸ばしてる。評価表の情報は正確じゃないな。」
戦いは続く。沈岳はキングを圧倒し、キングは後退を強いられた。攻撃は強くはないが連続で繰り出され、キングはリズムについていけず後方へ跳んだ。しかし沈岳は勢いを緩めず、再び攻撃をしかける。
怒りに燃え、キングは全力の一撃を沈岳に叩き込んだ。轟音と共に地面が裂け、砂埃が立ちこめる。だが──沈岳はダメージをほとんど受けずに受け止めた。衝撃に手がわずかに震えている。
「すげぇ……」
沈岳は呟いた。
キングも唖然とし、目を見開いた。どうしてDランクの奴があの一撃を受け止められるのか？
ここで分かるのは、防御は単なる受け身ではなく、**力の制御技術**──舞槍術、剣術、拳法のような戦闘舞踏を通して力の方向を変えることだ。沈岳はそれを巧みに使いこなしている。
**風回**──螺旋状の槍舞術で、力をねじり相手の攻撃を逸らす技。
**冷槍**──槍先でなく柔らかい棒身を使い、防御する「滑り交わし」。敵の力を一点に集中させず流す技術。
**影歩**──影のように身をかわす歩法。体を傾け、肩を回し、隙を突く。
**柔制剛**──太極拳のように、円運動で攻撃を吸収・逸らし、敵のバランスを崩す。
沈岳はこれらの技術を駆使し、キングをまるで玩具のように翻弄していた。
ゾアは呟く。
「このままじゃキング終わったな？」
アコウは首を振った。
「まだわからない。今の沈岳は避けるだけだ。でも問題はどれだけ持つかだ。キングはMMAファイターだ。そう簡単には負けない。」
MMAファイター──万能の戦士であるキングは、**角度を切り詰める**、**リーチを超える**、さらには**膝をブロックする**こともでき、一瞬で槍舞術の間合いを崩せる。
待たせずに、キングはそれを証明した。観客の歓声が沸き起こった。
「くそ！お前だけが俺を真剣にさせる奴だ！」
怒りを込めて叫び、キングは腕に全ての悪意を込めた。腕からは赤い獅子の姿が現れ、前方の空間を裂き、すべてを吹き飛ばした。地面には塵と灰だけが残った。沈岳は傷だらけで血を吐き、手足が震えているが、なお立って微かな笑みを浮かべた。
「面白かった……名前は？」
キングは肩を回し、深く息を吸う。笑みを浮かべて答えた。
「キング──世界で最強の男だ。」
そして──真の戦いは、まだ始まったばかりだった。
次章では、さらに圧倒的な強さを持つ新たなキャラクターが登場します。どうぞご期待ください。次の戦いは間もなく始まります。
