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第21話

明日、新しいエピソードを投稿予定です。

カラスの一味との戦いから、すでに三日が経過していた。現在、ゾアのチームは何の動きも見せていない。というのも、三人のメンバー全員が重傷を負っていたからだ。


「もう言っただろ、もうお前には何もしねぇ。だから、もう逃げるなよ。」


そう声を上げたのは、ブラウンという若者だった。彼はこれまで他人を虐げ、暴力を振るい、いじめてきた過去を持ち、それがフェリックスに恐怖を与えていた。


「彼のこと、信じてみてよ。性格は悪いかもしれないけど、味方にいると意外と頼れるんだ。」


電撃を操る少年ルーカスが、フェリックスにそう慰めの言葉をかけた。かつて共に戦った仲間でもある。


今、ゾアのチームには新たに三人の仲間が加わっていた。フェリックス、ブラウン、そしてルーカス。カラスの一味に襲撃された後、彼らは行き場を失い、ゾアとアコウを頼るほかなかった。


「ところでさ、なんで君の能力ってSランクなんだい、ルーカス?」


問いかけたのはアコウだった。その疑問はもっともだ。Sランクに到達するには、群を抜いた力が求められる。たとえば、ゾアの能力は武器を無制限に呼び出せるというもの。ザイファの能力は攻撃に特化していて、近距離も遠距離も強く、広範囲への攻撃も可能だ。キングは攻撃力に制限がないが、特殊性が乏しいためAランク止まりだ。


「そのザイファってやつ、そんなに強く見えなかったけどな。なんでSランクなんだ?」


ルーカスは疑問を口にした。


アコウは答える。ザイファの能力は今のところ突出して見えない。たしかに攻撃力は高いが、正面からキングの拳を受けたら劣るだろう。それでもSランクとされるのはなぜか。


ひとつ目の理由は、高位エネルギーの要素にある。たとえば、キングが高位エネルギーと爆発力を組み合わせたとき、その一撃は恐るべき破壊力を持つ。しかし、それはあくまで「一撃」に限られる。


一方で、ザイファは小さな砂粒のような爆発ですら大きなダメージを与えることができる。もし全力で一撃に爆発力を込めたなら、町ひとつを吹き飛ばすことも可能だろう。評価者の視点からすれば、近距離限定のスキルより、広範囲にわたる破壊力を持つ能力の方が魅力的だ。もちろん、将来的にキングが広範囲攻撃を開発するかもしれないが、それはあくまで仮定の話だ。今現在、実現可能なのはザイファなのだ。


ルーカスは自分の能力についても語った。見た目では自分の電撃は自己強化にしか見えないが、実際には攻撃力も範囲もザイファと同等だと自信を持っている。前回の戦いで全力を出さなかったのは、ブラウンがその攻撃に巻き込まれる可能性があったからだ。もしそうでなければ、あの場に巨大な雷を呼び、全域を焼き払っていただろう。


ここでルーカスの能力がより明確になる。彼が最も頻繁に使うスキルは「転移」。単なる高速移動ではなく、本当の意味での瞬間移動だ。視線で地点を指定し、そこに瞬時に移動できる。このスキルは消費エネルギーが非常に少なく、戦闘・移動ともに多用される。


次に、電気による身体強化。腕と脚には眩しい白光が纏われ、髪もそれに反応して変化する。この状態では、電撃を放てるほか、拘束効果の軽減が可能だ。毒や睡眠薬などの影響も大きく鈍化する。


そして、ルーカスのSランクたる所以——最強のスキル。それは、敵の位置に雷竜を召喚し、落雷させること。地面に深い穴を穿ち、すべてを焼き尽くす威力を持つ。この雷が人に直撃すれば、キングがゾアに全力で放った一撃に匹敵する破壊力だ。また、ルーカスは直線上の全てを破壊する電撃を放つことも、空から降り注ぐ光の柱を召喚することもできる。この光柱の影響範囲は、全力を込めれば町ひとつに及ぶ。


それを聞いたアコウはこう結論づけた。


「ルーカスは、今この瞬間、キングやクライスと肩を並べる唯一の存在かもしれないな。」


ゾアは口を開いた。


「クレイスの力って、本当にそんなに強いのか?市川に捕まったときは、普通のやつに見えたけど。」


アコウが説明した。クレイスがあっさりと捕まったのは、市川がクレイスの召喚された魂を捕えることができたからだ。本来なら、エネルギー数値の差がそれほど大きくなければ不可能なことだった。そのときの市川は、まるで神のような存在だった。


クレイスの力について――簡単に言えば、キングを苦戦させるほどだ。もし二人が戦った場合、勝率は五分五分。


ここでアコウは興味深い情報を明かした。この世界では、属性に関する能力が、他の能力よりも優れている傾向がある。ただし、アックの時間操作やザイファの爆発のような特殊能力は除く。


その理由としては、おそらく属性がガイアの一部であるためだとされる。そして、この世界には同じ属性を持つ者が一人だけではない。たとえば、ルーカスは近接戦を得意とする電気属性の持ち主だが、他にも電気を操る者がいて、環境操作や遠距離攻撃に特化したスタイルを持っている者もいる。


属性は複数の人間が持てるとはいえ、それを持つ者はガイアの一部、選ばれし存在である。だからこそ、彼らは特別なのだ。市川と比べて劣等感を持つ必要はない。なぜなら、市川は極めて稀な存在であり、ガイアに直接選ばれた者、すなわち自然そのものの化身だからだ。彼はすべての属性を使うことができる。


また、ブラウンの能力も、エネルギー数値が高ければ極めて強力な力となる。だが、数値が低いと、相手が反撃を突破できる場合もある。この世界において、エネルギー数値こそが力の源なのだ。どんなに特殊な能力でも、差がありすぎれば、能力を持たない者ですらアックや市川のような存在を打ち倒すことができる。なぜなら、能力の効果が差を越えて作用しないからだ。


だからこそ、アコウはここにいる全員に言った。絶え間なく戦い、鍛錬し、エネルギー数値を高め続けろ。それだけが、強くなる唯一の方法だ。


「俺の能力って、単純すぎねぇ?覚醒とか、そういうのもないし……」


周りの人間が皆特別に見え、ブラウンは浮かない声でそう呟いた。アコウはただ冷静に答えた。


「私なんて、能力すらないんですけどね。」


そのとき、少し離れた場所からフェリクスが歩み寄ってきた。かつてのような怯えは、もうなかった。


「その通りだよ……能力がないって、本当に苦しいよな。自分がずっと弱いって、思い知らされるから……」


アコウは、静かに微笑んだ。


「能力がなくても、自分が弱いなんて、一度も思ったことはないですよ。」


フェリクスの脳裏に、一つの記憶が蘇った。ナサニエル・クロウリーが襲ってきたあの日、彼は逃げようとした。だが、そのとき前に出て、立ち向かい、彼を押し返したのは――アコウだった。手にしていたのは、ただの手術用メス。それだけで、鋭い斬撃をいくつも防ぎ、反撃した。フェリクスはその後、気を失った。目が覚めたときには、ボロボロの廃墟の中で、アコウに肩を貸されていた。それはつまり、アコウがナサニエル・クロウリーと直接戦って、生き残ったということを意味していた。


……


廃棄された工場跡。夕日が黄金色に差し込む中、カラス団の全メンバーが円を描くように立ち、ある衝撃的な光景を見つめていた。


目の前に吊るされていたのは、金髪の青年。何十本もの剣がその体を貫いていた。口からは血が垂れ、顔は腫れ上がり、真っ赤に染まっていた。彼の体は空中に浮かされていた。


「よくやったな。友情を捨ててでも、組織の利益を優先できた――それは素晴らしいことだ。これで君は正式にカラスの一員だ。」


そう告げたのは、ナサニエル・クロウリー。彼の正面に立つのは、血に塗れた体のシド。彼は血のついた剣を手にし、もう片方の手でKのカードをナサニエルに差し出した。周囲では歓声と拍手が響き渡る。


その拍手の中で、シドは自分が特別な存在になったような気がした。親友を無残に殺しておきながら、彼はそこで高らかに笑った。


そう――空中に吊るされたその青年は、ケン。かつての親友グループの一員だった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


この物語は、私がずっと考えていたテーマを形にしたものです。


書きながら多くの苦労もありましたが、読者の皆さんの反応を想像しながら、毎回楽しんで書いていました。


次回の話も今準備中ですので、楽しみにしていてくださいね!


引き続き応援よろしくお願いします!

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