第15話
明日、新しいエピソードを投稿予定です。
ついに、アックが「本当の目的」を語ります。
その言葉が、物語にどんな波紋を広げるのか——
どうぞ、明日の更新をお楽しみに。
場面が開けると、セシリアが気を失って倒れており、そのすぐ近くにアックが立っていた。焦りを隠せないイチカワは、すぐにアコウに連絡を取り、セシリアの救出方法を相談する。冷静を装うも、顔はこわばり、目には不安が色濃く浮かんでいた。
それを察したアックが口を開いた。
「彼女には手を出していない。安全な場所に連れて行ってくれ」
(アック)
その言葉に、イチカワはわずかに安心する。視線をキングに向けると、彼は冷たく答えた。
「俺には関係ない。俺は力を誇示するためにここにいるだけだ」
(キング)
必死の思いで、イチカワは懇願する。
「お願いだ、キング」
(イチカワ)
その言葉に、キングは肩をすくめ、仕方なくセシリアを抱きかかえて走り出す。
その途中、キングのポケットの携帯が激しく震えた。肩にセシリアを担ぎながら、彼は画面を見る。そこにはクレイスの位置情報が表示されていた――送信者は、すでに我々が知っている「あの人物」だった。
戦闘の場に戻ると、イチカワがアックに話しかける。
「彼女を助けてくれて、本当に感謝している」
(イチカワ)
アックは落ち着いた声で応じた。
「俺は犯罪者かもしれない。でも、犯罪者だからって本質まで悪だとは限らない」
(アック)
イチカワは理解しつつも、心の中ではどうしても拭いきれなかった――「犯罪者は犯罪者だ」と。
沈黙が広がる。二人はしばらく無言のまま見つめ合った。
そして次の瞬間、イチカワが突進し、渾身のパンチを放つ。アックはそれをかわし、腕を掴んで地面に叩きつけた。土煙が舞い、草花のあった地面は裸地と化した。
煙の中、二人は激しく交戦する。イチカワは炎の力で打撃を強化していたが、アックは経験で勝り、効果的なカウンターを放つ。
イチカワは宙を舞いながら回転し蹴りを放つ。それを迎え撃つアックの拳には、まばゆい炎が包み込む。二つの技がぶつかり、赤黒い雷のような衝撃が弾け飛んだ――爆破の力が使用された証である。
しばらく戦った後、イチカワはアコウに問う。「なぜ最強の能力を使わせてくれないのか」。イチカワには、特別な「色の目」によって得た究極能力があるのだ。
だがアコウは許可しなかった。使用後には長い回復時間が必要であり、まずは現在の力で突破するようにと言う。そして、究極能力については適切なタイミングで説明するとだけ告げた。
戦略室では、ゼイクとヒトミがアックの究極能力の使用を見守っていた。それは通常、過酷な修練を経て習得する力――だが、17歳のアックはすでに使いこなしていた。
これにより、一つの仮説が浮かぶ:アックは「旧時代」から力を100%保持しているのではないか、と。
ゼイクは否定する。もしそうなら、入試で毒付きの刃を使う必要はなかったはずだ。つまり、今の力は完全に彼自身の才能から来ている。
前の人生を持つアックは、高エネルギーと究極能力に慣れていた。かつての感覚を思い出せば、他者より早く覚醒できるのだ。
ゼイクが最も恐れるのは、「四騎士」や「魔女」のような力を持つ存在。もしアックが色の目を持っていたなら、それは災厄になる。だが彼は断言していた――自分は選ばれし者ではないと。
では誰が? ゼイクの答えは一つ――その力を持つ者が、今、彼のすぐ隣にいる。
その人物こそ、ヒトミ。
この情報を提供したのもアック自身だった。
戦場ではアックがイチカワを圧倒していた。アコウはイチカワに問いかける:「氷の床を永続させられるか?」
イチカワは答える:「できるが、滑りやすくなり自分に不利になる」
そこからアコウは作戦を立てた。
氷でエリア全体を覆い、足裏の炎で自分だけ滑らないようにし、有利に立ち回る――アックは未来視が使えない今がチャンス。
理解したイチカワは、氷の床を作り出す。アックの足が凍り、彼は力で氷を砕いて後退。イチカワは炎の剣を手に突進し、床を焼き裂く――が、その熱で氷が消え、優位性も消失。アックの服を裂く一撃を入れたものの、逆にバースト付きの一撃を食らい、吹き飛ばされる。
このやりとりで、イチカワの火属性が氷より上であることがわかった。アコウは問う:「一番得意な属性は何だ?」
イチカワは答える:「仙気――補助系の属性。主な力は身体強化と接近戦だ」
だがいくら強化しても、アックの力には及ばない。これが、エネルギー値の差というものだ。
この世界では「エネルギー値」が強さを示す指標となる。
「上限」と「エネルギー値」は異なり、イチカワの上限は無限だが、現時点ではアックのエネルギー値が明らかに上回っている。
時間が経つにつれ、イチカワはますます劣勢に陥る。それを見たヒトミは、アックを捕獲するべきか検討し始めた。
そのとき、アックは衝撃の真実を口にする。
「見てるんだろ、ヒトミ。罠だと分かってて、なぜ俺がここに来たか分かるか?」
(アック)
ヒトミは画面を食い入るように見つめていた。
「時間系能力には、“死を無効化するパッシブ”がある。
時間の魔女が死に直面すると、能力が自動で発動して、その原因よりも前の時間へ戻るんだ。
時間はランダムに選ばれ、コントロールできない」
(アック)
その言葉に、ヒトミは愕然とする。イチカワも戦慄――目の前の相手は、“死なない殺人者”だった。絶望が彼を包む。
「たとえ今、能力が使えなくても――このパッシブだけは発動する」
(アック)
アックの過去が明らかになっていく。
ヒトミによって何度も殺されては蘇らされ、戦略の検証材料として使い捨てられた日々。
苦痛と絶望にまみれた“地獄”――それが、アックの人生だった。
現在、アックは力を回復。残る発動回数は1回だが、それでイチカワを倒すには十分だった。
イチカワは、もはや戦う意思を失っていた。
そのとき、アコウの声がイヤホンから響く。
「諦めるな、イチカワ。お前は死なない。究極能力を使え」
(アコウ)
その言葉に、イチカワはハッと目を覚ます。汗が滴り落ちる中、手を合わせて、究極能力を発動した。
アックの闇の世界は、イチカワの力によって一掃された。
その空間は、まるで楽園のようだった――上空には果てしない青空、足元には空を映す透明な水面。
アコウは満足そうに言う。
「やはりな。君の色の目は、“弱き者を圧倒する”能力の持ち主だ」
(アコウ)
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