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第77話 別れ

「いやだぁああああああああ!!!!」


 私は金切り声を上げた。自分でも驚くほど取り乱していた。ヴォルフのことが心配で今すぐに彼のもとへ駆けつけたかった。けど私は騎士に抱えられていてそうもいかなかった。


「いいかげんに離してよ! 離してってば!」


 私は騎士の腕を振りほどこうと必死にもがいた。うんうん唸り声を上げながら身をよじらせて暴れていた。それでも離さないとみると、私は怒りに任せて騎士の腕に噛みついた。


「痛たたたっ!」


 騎士は腕を庇うようにしてようやく私を解放した。私はすぐさまヴォルフのもとへ走り出した。

 嫌な予感がして堪らなかった。最悪の事態が頭を過ぎった。私はそんな不安を振り払うように彼の名前を叫んだ。


「ヴォルフ! ヴォルフ!!」


 瓦礫の山を乗り越えると巨体を横たえたヴォルフの姿が見えた。胸の傷から痛々しく血が流れ出ていた。私はヴォルフに駆け寄ると彼の顔に抱きついた。


「ヴォルフ、大丈夫? しっかりして!」


 ヴォルフはかろうじて息があった。私の呼びかけにわずかに首をもたげて反応した。

 私はすぐさまヴォルフのステータスを確認した。すると65000もあったはずのHPが0になっていた。私は悔しくてぼろぼろと涙をこぼした。


「ごめんねヴォルフ……。全部私が悪いんだ……、私のせいでこんなことに……」


 泣きじゃくる私にヴォルフは穏やかな眼差しを返してくれた。それはずっと私を見守ってくれていたいつものやさしい温かな目だった。言葉を交わさなくてもヴォルフの気持ちが私の中に流れ込んでくる。


「お願い死なないでヴォルフ。またいっしょに旅に出ようよ……。ヴォルフの背中に乗せてよ……、ねえ、ヴォルフ……」


ヴォルフがいない世界なんて私には考えられなかった。私はヴォルフにすがりついて祈った。でもその願いは脆くも打ち砕かれた。


 ヴォルフがゆっくりと瞼を閉じると、彼の体が音もなく朽ちていった。灰のように細かくなって空へと舞い上がっていく。


「ヴォルフが消えちゃう! やだ、やだ、やだぁ!」


 私は何とかしてヴォルフの体を守ろうとしたけど、消失を止める手立てはなかった。私の手のひらに残った欠片さえ風に流されて消えてしまった。


 すると突然私の頭上から大量のゴールドとジェムが降り注いだ。空一面きらきらと輝いていた。


「お金なんていらない。宝石なんていらないの……。私はヴォルフを返して欲しいだけ……。お願いだから返して……。うわぁああああん!!」


 私はその場にうずくまって泣いた。まるで自分の身が引き裂かれるような悲しみに打ちひしがれていた。

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