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第73話 憤怒

 私の作戦が功を奏し何とかリガードたちを巻くことができたけど、まだ油断はできなかった。

 レイズという名の魔法使いが探知魔法をかけていた。その魔力は強力で私たちは周囲2キロの捜索網から一刻も早く抜け出さなければならなかった。


 私とアウラはその範囲外を目指しひた走った。息が上がり、心臓が破れそうになりながらも、モルドレニアの街を駆け抜けた。私はアウラと手をつなぎ遠くを目指した。


「やばい。あのメガネっ娘やばいよ。とにかくあの魔法使いからできるだけ離れないと……」


「あのリガードって人も相当やり手だよ。ステータス見たらレベル9だったよ。あの人の眼中に、私はまったく入ってなかったけど……」


「アウラはそれでいいんだよ。あんなのに関わったら面倒だから……」


「これからどうするの? 逃げるんならヴォルフを呼び出して空を飛んだほうが早いんじゃない?」


「それは今は出来ない。私たちの動きは向こうに知られているんだ。ヴォルフを呼んだら、騎士を集められて戦闘になっちゃうよ。そうなったらあの人たちは全員死ぬ」


 ヴォルフと人類の戦力には圧倒的な差があった。それはNPCが絶対に越えられない宿命だった。もし戦闘になれば、騎士団の無駄死に終わるのは目に見えている。


「それは絶対にだめだ……」


「そう、だから今はとにかく逃げる。そのために距離を取るしかないんだ。街の中心地から離れて、あのメガネ魔法使いの範囲外まで逃げよう。ヴォルフを呼ぶのはそれからだよ」


 私たちは人目を避け路地の中を走った。細く入り組んだ地形は身を隠すのにも好都合だった。

 私たちはモルドレニアを観光し尽くしていたおかげで、道はだいたいわかっていた。街の中心地から西側へ、細い路地を抜けると目の前に高い防壁が見えてきた。


「ニーナ城壁が見えたよ!」


「やった! これで何とかなりそう!」


 壁際でヴォルフを呼べば人の目も避けられる。脱出は成功したかに思えた。私はほっとして思わず笑みをこぼした、その時だ。


 突然私たちは目が眩むほどの強い光に包まれた。気がつくと目の前に大広場の噴水が現れた。そこには大領主ラインベルガーの怪しい像がそびえ立っていた。


「これは、どういうこと?」


 私は肩で息をしながら、呆然とその光景を見つめていた。


「ニーナ、私たちは転送されたんだよ……」


 周囲を見ると私たちがいる大広場を囲うように騎士たちが陣取っていた。リガードやレイズ、他の魔法使いたちもその場にいた。物々しい雰囲気に街の住人たちも集まっていた。


「ニーナ様、逃げても無駄だと話したではないですか。我々は現在ニーナ様を探索魔法により完全捕捉しているのですから」


 半ば呆れ顔でリガード言った。


「何だよ……。必死に走ったのに無駄骨じゃん……。てか範囲ぎりぎりで転送するの性格悪くない?」


 私は全身に疲労感を憶えて顔を歪めた。


「これもレイズっていう魔法使いの仕業なんだね」


「そうですニーナ様。私が転送しました」


 レイズが申し訳なさそうに名乗り出た。手に鉱石が埋め込まれた上等な杖を持っていた。


「このやろう。魔法でやりたい放題やりやがって。今すぐここでその巨乳を揉みしだいてやろうか!」


「ええっ!?」


 不敵な笑みを浮かべ、いやらしい手つきで指を動かす私にレイズはどん引きしていた。もうそろそろ私が女王に向かないことに気づけよと思った。


「そう言えば、さっきからニーナ様にべったりついている君は何者なんだ」


 リガードがついでにといった感じでアウラに尋ねた。


「ああ、やっと取り合ってくれた。うれしい。私はアウラと申します。ニーナと一緒に旅をしている仲間です」


 何故かアウラは感動の面持ちで答えるとぺこりと頭を下げた。


「そう言うことならば君にも事情を聞かなければならない。いっしょにロンテディアに来てもらう」


「ちょっと勝手に決めないでよ。私は帰還するなんて一言も言ってないんだからね!」


「申し訳ありませんが、ニーナ様には決定権はございません。無駄足掻きは止めて、大人しく我々と供にロンテディアに帰還してください。これ以上抵抗されても徒労に終わるだけですから」


「く、くそうっ……」


 リガードの作戦勝ちといったところだった。何よりレイズの強力な魔法の前にして私たちに打つ手はなかった。


「残っている荷物はあとで部下に引き取らせに向かいます。今はニーナ様の帰還が最重要事項です」


 リガードがレイズに目配せすると彼女は魔法の杖を掲げた。息つく間もなくロンテディアに向けテレポートするようだ。リガードが騎士団に向け号令をかけた。


「これより、我々作戦部隊はロンテディアへ向け帰還する!」


「ああ……、私もこれまでか……」


 私はレイズがかけた転移魔法の光に包まれながら、この旅が終わってしまうのかと嘆いた。そしてこれからの私の人生がどうなってしまうのかと不安で天を仰いだ。


 すると私の視界に、上空から黒い塊が近づいてくるのが見えた。まさにテレポートで飛ばされる直前だった。


大地を揺るがすほどの衝撃が走ると、爆音とともに土煙が激しく舞い上がった。


「何が起きた! 状況を報告しろ!」


 テレポートは中断されリガードたちが血相を変えた。


 間もなく、大広間の噴水に建っていた大領主ラインベルガー像を踏み潰し、土煙の中から姿を現したのは、憤怒の形相をしたヴォルフだった。


「やっば、ヴォルフめっちゃ怒ってる!」

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