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第71話 王国存亡の岐路と言われても

 クロちゃんが映し出したのはロンテディア王国にある大広場だった。そこに30人ほどの重装備の騎士が集められ物々しい雰囲気が漂っていた。風にはためくロンテディア王国旗と、荷馬車の数から彼らが遠征部隊だとわかった。


 そびえ立つロンテディア城を背にして、騎士団長リガードが声を上げた。


「ルードヴィクとレイナードによる謀反が明るみになった今、ニーナ様の罪が濡れ衣であったことが証明された。これは我々が今、王国存亡の岐路に立っているということだ」


 話を聞くに、王国の結界を守っていた衛兵ふたりの失踪とドリスへの拷問未遂事件の経緯から、私を貶めた黒幕がルードヴィクとレイナードであるとリガードは断定したようだ。


 私はそのことをすでにクロちゃんから聞いていたけど、真相を暴いたリガードという男はなかなかやり手のようだ。


「我々が持つ情報は限られているが、今わかっていることはニーナ様がドラゴンと共にしているということだ。ニーナ様と思しき少女の目撃情報は宿場街のナハペリから、遠方の衛星都市プレーノルドまで及んでいる。その足取りは早く、これほど短期間に長距離を移動できたのはドラゴンの介在があるという証拠だ」


 宿場街のナハペリでは、ゴブリンたちをヴォルフの攻撃でやっつけた。衛星都市のプレーノルドではインチキ霊媒師のミルディアンスを成敗した。

 それだけ派手に立ち回れば足がつくのは避けられない。今更ながら迂闊な行為だったと私は悔やんだ。


「今回の作戦遂行にあたり不明な点がある。それはニーナ様の本意がどこにあるのかだ。もし我々に敵意を持ちドラゴンと手を組んでいるとしたら、我々にとっても王国にとっても脅威となるだろう……。それを確かめるために慎重に接触を図らなければならない」


 私には何の恨みも持っていないし、ただ楽しく冒険ができればそれでよかったけど、この状況でドラゴンの存在を知った彼らが脅威を感じるのは無理もなかった。


「今回の作戦は我々が経験したことがない大規模かつ、危険を伴うものになるだろう。もしドラゴンとの戦闘になれば多大な犠牲が出る可能性が高い。そのリスクを避け、ニーナ様搜索と王国への帰還を説得する必要がある。我々の作戦如何で王国の未来が決まるのだ」


 ん? と私は眉をひそめた。王国への帰還と聞いて自分の耳を疑った。いったいどういう意味なのかとクロちゃんに顔を近づけリガードの言葉を待っていると、彼が次に口にしたのは飛んでもないことだった。


「ニーナ様こそがロンテディアの王位を継ぐにふさわしいお方なのだ」


 ぎゃあぁああああっと、私は思わず叫んだ。だって女王様なんてなりたくないんだもん。私にはお城暮らしのお堅い生活なんてまったく想像もつかないし考えられなかった。


 いますぐにでも彼らに私が何のためにゲームの世界に来たのか訴えたい気持ちだった。私は縛られる人生から飛び出して自由を満喫するためにこの世界に来たのだ。


「遠距離テレポートを使えるのはレイズ、ルチナ、メリーナの3人だ。彼女たち魔法使いのMP回復を図りながら、リレー方式でテレポートを行いニーナ様の行方を追う」


 当然一度にテレポートできる距離や物量は限られる。それでもこれだけの騎士団を一度に転送できるなら相当レベルの高い魔法使いなのだろう。


 見ると3人の魔法使いはみんな女の子だった。そのうちのレイズという名の魔法使いは巨乳メガネ美少女キャラだった。いろんな意味で気合いが入っていた。


「これより作戦を決行する! 必ずやニーナ様を見つけ出し王国に帰還させるのだ!」


拳を振り上げたリガードの雄叫びに、騎士たちがおおーっと鬨の声を上げた。すると満を持してメガネっ子魔法使いが杖を掲げた。


「テレポート!」


 魔法が発動されリガードたちが光に包まれた。一瞬にして姿を消したのを最後に、画面が暗転して文字が浮かび上がった。


『本日の動画ここまで。ご利用ありがとうございました』


 私とアウラはお互い顔を見合わせた。


「どうするのニーナ。完全に追われる身になってるよ。王国騎士団って言ったら精鋭中の精鋭だから」


「何だか急に話がややこしくなってきたな。今さら帰ってこいって言われても」


「ニーナの冤罪が晴れたんだもん。今や王位を継ぐ者だよ。私もニーナ様って呼んだようがいい?」


「やめてよ。急にかしこまれても困る。私は女王になるつもりはまったくないからね。お城暮らしなんてまっぴら御免だよ」


「でも、相手は手強いよ」


「わかってる。だから今はとにかく逃げるしかない。いったんキャンプ生活に戻って、私たちの足取りを消すことにする」


「何だか犯罪者みたいだね……」


「それでも私は今の生活を手放す気はないからね。絶対に逃げ切ってやるんだから」


私が息巻いていると突然、クロちゃんの様子がおかしくなった。大量の汗をかいてぶるぶると震えだした。


「あれ? ニーナ、クロちゃんの様子がおかしいよ」


「どうした? クロちゃん。体調悪いの? お腹痛いの?」


 私の問いかけにクロちゃんは新たに文字を浮かび上がらせた。


『ニ、ニーナ後ろ、後ろ……』


 その言葉に私たちがゆっくりと後ろを振り返ると、店の中に大勢の武装した騎士たちがいて、皆が私に向かって跪いていた。


 私が面食らっていると、そのうちのひとりが顔を上げた。


「私はロンテディア王国騎士団団長リガード・ブルックナーです。ニーナ様、お迎えに参りました」


 私はあまりの急展開に呆気に取られて言った。


「も、もう来ちゃったの……!?」

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