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第67話 ヨーグルトとビキニアーマー

 爆発音がしたのは広場からだった。その方向を見ると煙が上がっているのが見えた。何かが空から落ちて来たようだ。

 広場から避難してくる人たちが見えて、私はそのうちのひとりに腕を掴んで引き留めた。


「ねえ何があったの? 魔物の襲撃?」


「いやあ、そんなんじゃないよ。魔法使いが喧嘩をおっぱじめたんだ。まったく迷惑な話さ。巻き込まれたら大変だ!」


「喧嘩?」


 再びその方向を見ると、女が空中から魔法を放っているのが見えた。その攻撃力は凄まじく、激しい閃光を発し爆発音が空気を震わせた。

 ここからでは詳しい状況は掴めない。とにかく現場に行って確かめてみるしかなかった。


 私が広場へ駆けつけると、女同士のなじり合いが聞こえてきた。


「私のヨーグルト勝手に食いやがって! もう今度という今度は許さないから!」


「そんな小さいことで怒ってんじゃねえよ! 子どもかよ!」


「どっちが子どもだ!」


 空から魔法を撃っていた女は魔法剣士だった。両手に剣を持つ二刀流。そしてその攻撃を受けていた女はエルフのバーサーカーだった。バカでかいモーニングスターを振り回し攻撃を弾いていた。

 事の発端はエルフのバーサーカーが魔法剣士の食べ物に手をつけたことにあった。


「ヨーグルトなんてどこでもあるだろうが! また買えばいいだろ!」


「あれはそんな簡単に手に入る代物じゃないんだよ。数量限定のプレミアムヨーグルトなんだよ!」


「てか、何でお前が毎日ヨーグルトなんて食ってんだよ! もしかして美容と健康を気にしてるのか? お前はそんなガラじゃねえだろ。無駄無駄、人間なんてすぐ死ぬんだから!」


「うるさい、黙れ! あんたこそ無駄に長生きしてんじゃないよ!」


 罵り合いながら攻撃は続いた。魔法剣士が放つのは雷属性魔法で凄まじい閃光と熱と轟音で、私は目をしたばかせながら状況を見つめた。


 ステータスを見ると彼女たちはどちらも冒険者レベルが7だった。彼女らの攻撃力はこの街を簡単に壊滅させられるくらいあった。こんなくだらない喧嘩で街を破壊されては甚だ迷惑だ。


「ちょっといいかげんにしてよ、喧嘩ばかりして! 街の人たちに迷惑になってるでしょ!」


 そう声をかけたのはプリーストの女だった。彼女の言葉で彼女たちが同じパーティーだとわかった。


「嫌ならパーティーから抜けてもいいんだぞ!」


「ああ、それがいいね。私止めないから」


「もう! ふたりしてそんなこと言って!」


 よくこんな状態でパーティーを組めたものだと呆れていると、ふいに私はあることに気がついた。それはなぜかみんな肌の露出度が高かった。


 エルフのお姉さんはほとんど裸同然のビキニアーマーを身につけていて、腰巻でかろうじて隠れていはいるけど、隙間からちらりとTバックが見えていた。

 そして魔法剣士の方も下から見上げるとスカートの中が丸見えで、同じくTバックを履いていた。


 それに加え喧嘩を止めていた真面目そうなプリーストは、一見露出度が一番低いけど、スカートにはウエストまでスリットが入っていて同じくTバックを履いているのがわかった。


 この統一感はいったいなんだのだろうかと私は首をかしげた。


「ここで決着をつけてやる!」


「ああいいぞ、かかってこいよ!」


 私が変なことに気を取られているうちに、いつの間にか最終決戦の様相を呈していた。これ以上強力な魔法を放たれては本当に街が壊れてしまう。私はふたりを止めるため魔法を発動した。


「アルティメット・スマートムービング!」


「何だ!」


「か、体が動かない!」


 私がかけた生活魔法にふたりはうろたえていた。


「誰だ、魔法使いか?」


 私は魔法剣士をゆっくりと地上に降ろし、そしてエルフと共にプリーストのもとへ運んだ。


「びっくりさせてごめんね。私にはこうするしかなかったんだ」


 私は彼女たちの前に出て事情を説明した。


「あなたが止めてくれたんですね。本当にありがとうございます。何だかお恥ずかしいところを見せてしまって……」


 プリーストが申し訳なさそうに礼を言った。でも他のふたりは狐につままれたかのような表情で、何が起きたのかわからないようだ。


「今のは何なんだったの? 魔法か何か? 私の魔法検知には引っかからなかったんだけど……」


「あれは引っ越し魔法だよ」


「引っ越し魔法って……、生活魔法の?」


「そうだよ」


 魔法剣士が目を丸くしていた。基本的に魔法検知でわかるのは戦闘で使用される魔法に限られていた。それは自分に危害を及ぼすものかどうかが基準になる。平和利用される生活魔法は対象外だった。


「どうりで検知に引っかからないはずだ。正直驚いたよ。人を拘束できるほどレベルを上げているなんて」


「まあ成り行きでこうなっちゃったんだけど。私はまだレベル1だから、生活魔法を覚えるくらいしかできないし」


 私はありのまま答えた。


「そんな方法があるんならバーサーカーの私も覚えてみようかな」


「あんたには無理」


「何でだよ」


「頭が単純だから」


「はあ?」


 バーサーカーのお姉さんは納得できないようだったけど、さっきまでの言い争いが嘘みたいに、なごやかな雰囲気になっていた。私より少し年上のお姉さんたちは、さすがSRキャラだけあってみんな可愛くて美人だった。


 しばし和気あいあいな雰囲気になっていると、私たちの輪の中に男がひとり近づいてきた。


「どうやらまた喧嘩していたみたいだね。僕が目を離すと直ぐにこうなるんだから」



 その口ぶりから彼もこのパーティーの仲間のようだ。私はその声に振り返ると彼の顔を見るなりはっと驚いた。


「クライス!」


 その男の名を呼んだ私を、彼は不思議そうに見つめた。


「どうして僕の名前を知っているんだい?」


「だって……」


 忘れるわけがなかった。彼は私が初回プレイでラスボスであるヴォルフを倒した時のパーティーメンバーのひとりだった。彼の名はクライス・リーツ。冒険者レベル8のSSRキャラだ。


 まさかこんな場所で出会うなんて……。怪訝な表情のクライスを私はまじまじと凝視していた。

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