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第48話 指名手配になりました

 私たちは詳しく事情を知るために、ハロルドが借りているという宿に案内してもらった。ニザヴァルにある宿はこの1軒だけ。相当古びていて埃っぽいけど、仕方なく私たちも空いている部屋をひとつ取った。


 私は部屋に入るなり掲示板から引っぺがしてきた手配書をテーブルに叩きつけた。


「全然似てないし! 私もっとお目々ぱっちりだし、こんな悪人ズラじゃないもん!」


「気にするとこそこかよ」


 ハロルドは驚き呆れていた。


「お前まったく自覚ないみたいだが、この手配書どおり、タパル村で俺たちに見せたあの憎たらしい顔がこれだぞ。『ウェーハッハッハッハ! どうだ参ったかオーガどもよ。これが私が言った勝利の景色だぁ〜』とか言ってよ」


 ハロルドは私を小馬鹿にしたように、私の口ぶりを真似して言った。事実を突きつけられ、私は返す言葉がなかった。


「ぬぐぐぐぐ……、くやちぃ……」


 私は極度の負けず嫌いで、特に勝負事になると我を忘れてしまうところがあった。勝てば興奮して相手にマウントを取る悪い癖が出てしまうのだ。


 まさかこんな下品な顔をしていたなんて、自分でもびっくりだった。せっかくかわいい王女様になれたのに、これではその美貌も台無しだった。途端にバツが悪くなった私は早々に話題を切り替えた。


「そ、その話は置いとくとして……、どうして私が指名手配になってるのよ」


「ニーナは結界のクリスタルを割った罪で国外追放処分を受けたんだよね。それが影響しているのかもしれないよ」


「ニーナ、お前そんなとんでもないことしてたのかよ」


「そうだよ。それで王国を追い出されたんだ。おまけに王位継承権も剥奪されたんだよ。でも、それで終わりじゃん。何で今さら指名手配なんだよ」


「王位継承権て何だよ。お前貴族だったのか?」


「ニーナはロンテディア王国の王女様だったんです」


「まじで!? こんな色気ないのに!?」


「うるせぇ!」


 私は悪態をついて、ぷっと頬を膨らませた。


「でもハロルドさん、この話は濡れ衣なんです。ニーナは結界のクリスタルを割っていないんですよ。ニーナは王国の権力闘争に巻き込まれたんです」


 アウラの言葉でハロルドは察したようだ。


「まったく人間てのはどこまで欲深いんだよ。平気で身内さえ裏切るんだからな……。だがそれならそれで、ニーナも上手く立ち回らなきゃならねえぜ。人目につく街中でヴォルフ様を呼び出したりしてりゃあ目立つし噂もすぐ広まる。昔から人の口には戸は立てられぬって言うしな」


 宿場町のナハペリでは村人の前でヴォルフに大岩を食べさせた。それから衛星都市のプレーノルドでは占い師のミルディアンスをヴォルフに処刑させて、ルルテリア湖ではフォルトナの落し物をヴォルフの力で見つけた。


 最近の話ならアーチャーのノーマンにドラゴンの鱗をあげたばかりだ。


「何かハロルドに偉そうにされて悔しい……」


「そうだね、オーガにお説教されるなんて人として恥ずかしいもんね……」


「お前ら俺に喧嘩売ってんの?」


 と、ハロルドが気色ばんだ時だった。


 ブルッブルッと私のリュックが振動した。何だろうと中を確認すると、アウラに貰った剔抉(てっけつ)の黒水晶が震えていた。

 どうやらクロちゃんの新着情報が入ったようだ。私はテーブルの真ん中にクロちゃんを置いた。


「何だよそれ」


 ハロルドが物珍しそうに見ていた。


「これは自分の知らない過去をほじくり返して教えてくれる便利な開運グッズだよ。剔抉の黒水晶って言って、私たちはクロちゃんって呼んでるんだ」


「へえ、けったいな魔導具があるもんだな」


「ねえニーナ、クロちゃんが何か知らせてるよ」


 アウラの指摘に私たちはクロちゃんの動きを待った。すると水晶玉の奥から文字が浮かび上がってきた。


『独自! 再燃するロンテディア王国内で不穏な動き。様々な思惑が交錯する人間模様。その闇に迫る! 視聴するには120ゴールド必要』


「はいはい、課金ね」


 私はお財布からゴールドを取り出すと、クロちゃんの頭にあった投入口にそれを入れた。すると真っ黒な水晶玉の奥から、ふわりと映像が流れはじめた。

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