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第47話 ならず者の街

 私たちが目指すダンジョンは砂漠地帯にあった。その近くにニザヴァルという街がある。

 そこは別名ならず者の街と呼ばれていて、ロワルデ大陸で危険な場所とされていた。私たちはワケあって、この街に入らなければならなかった。


「ねえニーナ、どうしてニザヴァルに寄ったの?」


「それはダンジョンを管理してるのが、この街のボスだからだよ。その人の許可がないとダンジョンに入れないんだ」


「簡単に許可が下りるのかな?」


「さあ、どうだろうね……。それにはまずボスを探さないことにははじまらないよ。ここの住人に聞き込みする必要があるね」


 聞き込みと聞いてアウラは不安そうに尋ねた。


「この街にはならず者が集まるって聞いたよ……」


「そうなんだよ。だからここの住人に良識があるとは思わないことだね。さっきから私の防犯魔法が発動しっぱなしだから、アウラも気を抜かないようにね」


 私の頭からパトランプが生えていた。警告音が鳴り止まず、ずっと危険を知らせていた。何か危機が迫っているというより、この街全体を危険視するべきなのだろう。


 しばらく街の中を歩き回っていると、案の定、怪しい男たちが私たちに絡んできた。


「これはこれはお嬢ちゃんたち、こんなところに何の用だい?」


 男三人が私たちの行く手を(はば)んだ。いひひっとニヤけて、私たちを舐め回すように見ていた。

 相手をするのもうんざりだったけど、少しでも情報が欲しかった私は仕方なく彼らに話を持ちかけた。


「私たちはこの街のボスを探しているんだ。ダンジョンに入る許可が欲しいの」


 すると私の要求を聞いた男たちは顔を合わせて驚いた。


「お前たち冒険者だったのか。遠足にでも来たのかと思ったぜ」


 がはははっと三人組は大笑いしていた。おちょくられて私もアウラもムッとした。

こんなやつら私の引越し魔法で吹き飛ばしてやってもよかったけど、今はボスの居場所を知るのが先だった。ここはあえて受け流した。


「ねえ、笑ってないでボスの居場所を教えてよ」


「そんなに簡単にボスには合わせられねえな」「俺たちと遊んでくれれば話は別だがよ」「痛い目に会いたくなきゃ大人しくしろ」


 男たちがにじり寄ってきた。その手にはナイフが握られていた。


「騒動を起こしたくなかったけど、そっちがその気なら仕方ないね」


 私もアウラも魔法発動の構えを取った。すると、その直後だった。


「おお、そこにいるのはニーナとアウラじゃねえか!」


 聞き覚えのある声がして私がはっと動きを止めた。手を振って近づいてきたのは、人間に化けたオーガのハロルドだった。


「何であんたがここに? てか、何その格好……」


 変わり果てたハロルドの姿を見て私は唖然とした。しばらく見ないうちに彼は成金風情に仕上がっていた。

 ハロルドはシャツの襟をピンと立てて、ボタンを外した胸元から黒光りした肌を見せつけていた。その首元や手指にはこれでもかというほどの大きなアクセサリーをつけている。


 私が一番敬遠するタイプの男だった。手をポケットに突っ込んで小さなポーチを小脇に挟んでいるところとか、私には生理的に無理だった。


「何だこの娘っこは、あんたの知り合いかい?」


「ああ、そうなんだ。ちょっとした腐れ縁でな」


 ハロルドは男たちと親しそうにしていた。しばらくして話がついたのか、男たちがその場を離れていった。私たちは結果的にハロルドに助けてもらった格好だった。


「久しぶりだなおふたりさん。まさかこんな街で出くわすとはな」


 ハロルドは白い歯を見せにっと笑顔を作った。そんな彼にアウラはつい本音をこぼした。


「私の苦手な人だ……」


 アウラが明らかにドン引きしてるのがわかった。


「実は今パン屋の商売が上手くいっててさ。フトコロ具合がいいんだよ」


「へえ、それは何よりだね」


「今年中に100店舗に拡大する計画があるんだ。すげえだろ!」


「ふーん……、そうなんだ」


「ニーナに教えておいてやるよ。商売成功の秘訣はな、如何にリピーターを獲得するかが鍵なんだ。この街にはそれを実現するのに不可欠なものがあるんだよ。俺はそれを手にいれるためにここに来たんだ」


 ハロルドの景気のいい話を聞いていると、また防犯魔法が発動した。私の頭からパトランプが生えてきた。


「その重要なものってのがさ、とある植物の実なんだが……」


「ああぁあああああああ、それ以上言うな! それ完全にダメなやつじゃん。あんた変なものをパンに混ぜようとしてるでしょ!」


「おお、冴えてるなニーナ。その通りだ。客を病みつきにさせてやろうって算段さ」


「だから、ダメだっつうの!」


「何でダメなのさ」


「ダメなものはダメ! ダメ絶対! もうコンプラ違反どころの話じゃないよ、それ犯罪だから。儲けたいならちゃんと味で勝負しなさいよ!」


「何だよ、いいアイデアだと思ったのに……」


 ハロルドは口を尖らせて不貞腐れていたけど、ふと何かを思い出したのか、くいっと顔を上げて言った。


「そういえば、今度ニーナに会ったら注意しようと思ってたことがあったんだよ!」


「私が何で注意されなくちゃいけないんだよ」


「全然気づいてないんだな。みんなお前を狙ってるぞ」


 怪しがる私にハロルドはあるものを指差した。


「あれだよ、あれ」


 それは道の隅っこに建てられていた掲示板だった。そこに何人かの似顔絵が貼られていて、その中に私の顔らしき絵があった。


「あっ、ニーナが指名手配されてる……」


「ぎゃあああああ!!!! 何で私が入ってるのぉおおおおお!!!!」


 私は悲鳴を上げ掲示板に駆け寄った。悪人面の私の似顔絵はアウラの指摘通り手配書になっていた。私の名前と共に懸賞金100万ゴールドと書かれてあった。


「これでニーナも立派なならず者の仲間入りだな」


 取り乱す私にハロルドが白い歯を光らせてニヤついていた。

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